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憂鬱な日
しおりを挟む「お金は替わりに私が払います。」
空腹のあまりパンを盗んだ孤児の2人・レアとメア。
そこに一人の女性が現れてそう言った。
「その代わり、ひとつ条件があるんです。
私は『この路地裏に図書館をつくれ』という市長からの任務を叶えに来ました。
そこで君達、私に雇われてくれませんか?」
親の居ない者、裏の仕事をする者、居場所の無いもの…そんな人々が息を殺し生きる、薄暗い路地裏に…果たして図書館なんてつくれるのだろうか?
…………
その文章の後には、大量の原作者や、制作スタッフが綴られていた。
裏返し、パッケージを見ると栗色の髪の毛をした可愛らしい『この話の主人公』が、本を抱えて微笑んでいるイラストが載っていた。
私の名前は平田 栞。現在就活中の21歳。
圧迫面接で強張った心を癒やそうと、今は近くのゲーム屋に立ち寄って、中古品で安売りされてるゲームを漁っていた。
「……主人公の女の子可愛いし、これでいいかな。」
そのまま手にとったゲームをレジに持っていった。
破棄のなさそうな目に、金髪で耳にピアス穴が沢山あいてる店員は、気怠そうに「いらあっしゃいませ~」というと、ゲームを手にとってバーコードに機械を押し当てた。
財布を開いて会計を待っていると、店員が口を開いて「あれ?」っと言った。
「こんなの置いてたっけ…。」
店員さんは気になる独り言を呟いて、そのままレジを売った。
家に帰るとさっそくゲームをプレイした。
主人公の名前は自身の名前の『栞』と設定。
舞台はヨーロッパだが、ゲームには本名を使う主義だった。
始まりは、市長の屋敷の廊下で、栞と同じく市長の秘書を務める、「カークランド」に話しかけられる所から始まる。
ーーーーー
・カークランド
『栞!市長から大変な任務を任せられたというのは本当か!』
・栞
『ええ。図書館をつくれですって。』
・カークランド
『図書館…?何処に?』
・栞
『路地裏。』
・カークランド
『路地裏って…あんな危ない所に!?大丈夫なのか?』
・栞
『市長が私にそう命令したのよ。
大丈夫かどうかなんて聞かないで。やって見せるわ。』
うろたえるカークランドに、栞は冷静にそう言い放った。
・カークランド
『……まったく、君はいつでもクールだね。』
ー栞は微笑をたたえると、その場をさった。
行く先は、『路地裏』だ。ー
ーーーーー
「栞、かっこいいな~!」
画面越しにその会話を見守る私は、思わず盛大に独り言をする。
思わず部屋の時計が目に入った。
時計の針は12時を指していた。
「…明日になるし、早く寝よう。明日も面接あるんだから…。」
ゲームを、一旦セーブして、私は急いでベットに入り、瞼を閉じた。
・
・・
・・・
瞼ごしに、視界に光が入ってくるのが分かった。
(あれ…もう朝?)
そう自覚し、気分が憂鬱になった。このままずっと眠っていたい。
(……ていうか私、寝そべってるはずだけど、足に地がついてる感触が、する…。)
私はゆっくりと目を開いた。
……。
………………!?
簡潔に言うと、目を開けたそこはベットの上では無かった。
見た感じ、洋風の建物の廊下。
私はその廊下の隅で、壁に背もたれて突っ立っていた。
(え…?私寝てたはずじゃ…ていうか此処どこだ!?なにこれ夢?)
「栞!」
「わあっ!!?」
困惑してると、目の前に、突然スーツ姿の若い男性が現れた。
すっと伸びた手足に、彫りの深い顔。青い髪に透き通るような青い瞳をしている。
(まるでゲームの登場人物みたい…)
ゲームの……。
………。
「カカカ、カークランド!!!?」
思わず大声で青髪に指さす。青髪はかなり驚いた様子で返事をしてくれた。
「あ、ああ…そうだよ。どうしたんだ急に…?」
(な…っ!
ほんとにカークランドなわけ…だってあれはゲームの…!)
「ちょ、ちょっと手鏡とか持ってない!?カークランド!なんでもいいから姿を確認できるやつ頂戴!」
青髪の肩をつかみ、揺らしながら私はそう叫ぶ。
抵抗することなく私に揺られる青髪は、私の後ろを指差した。
「か、鏡なら君の後ろにあるだろう…?」
後ろを向くと、壁に全身が見渡せるには充分な、大きな鏡があった。
その鏡を、くいるように見つめる。
「………。」
ごくりと生唾を飲み込んだ。
反転ごしに見た自分の姿は…
栗色で内巻きのショートカットの髪型…
ブラウンのワンピースに肩からニットのカーディガンという服装…
そして、ぱっちりと大きな瞳に小さい鼻…
これは、さっきしていたゲームの…
「『栞』じゃん!!!!!!!!」
「他に誰だっていうんだ…。」
鏡に向かって声を張り上げる私を、青髪が困惑した目で見ていた。
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