めがさめたら、田舎にいた。

稲荷様のご注文②

稲荷様が私のおにぎりをご所望なので作る事にした。
そしたらお昼休憩をとっていた人達も、「稲荷様が食べるなら食べたい」というので
私はお台所でシャケやら、卵焼きやらをひたすら焼いている。


なんかあれだな…
アイドルがつけてる服とかアクセサリーをファンが買いたがる…みたいな…。

この村では稲荷様がアイドル的存在なのだと実感した。




ジュージューという鮭の切り身の焼ける音と
香ばしい匂いにうっとりしてると、
稲荷様に村人達が
「血圧が…」とか「膝が痛い…」とか相談する声が聞こえてきて一気に現実に戻された。


世知辛いのじゃ……。







炊飯器とラップ、卵焼き・鮭の切り身・佃煮・唐揚げ・鶏肉・高菜…
などのおかずをのせたお皿を机にのせた。

自分で好きな具をおにぎりにして貰った方が早いからだ


「稲荷様、油揚げだしましょうか？」

といったのだが

「それは飽きた。」と即答された。

狐のアイディンティティは、どこにいったのだろうか…。



って………


「……………あれっ！？

　村の人達は！！？」


お台所で鮭焼いてるときまでいたのに！

人っ子一人いない！



稲荷様はけろっとした顔で
「畑仕事に帰ったぞ。」といった。


（さっき食べるっていったのに！
だから私おかずつくったのに！！！）


「……。」

地団駄を踏みたい気分だが、そこはもう18。
冷静に無表情をつくった。


稲荷様の向かい側の席にどしんと座り、しゃもじでラップの上にお米をしいた。

余談だか私はラップを切るのが好きだ。
あの「ピリッ！」っていうのが楽しい。




「おい結子、
そこの肉と、そのうまそうなやつといい匂いのやついれてくれ。」



「逆にそれで伝わるって思ってます？？？」