めがさめたら、田舎にいた。

ミックスサンド

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日常と柿の木

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私がここにきた時季は、夏だった。


早いもので、それから数週間がたった。
徐々に稲穂は色の抜けた黄色に変わり、蝉でなく、田んぼの上を赤とんぼがびゅんびゅん飛び回っている秋になっていた。

なんでトンボってあんなに勢い良く飛んでも人にぶつからないんだろうね…。怖いよね…。


まぁ!それは今はいいとして!!
季節が巡っても私の生活は変わらず!

朝起きて食堂ですごし!
昼になったらお社にお供え物をし!
稲荷様と川の神と世間話したりする!!
……という代物になっていた。



でも最近はずっと考え事をしているので上の空だ。
そのせいで今日も朝ごはんの時
お味噌汁に醤油をかけて怒られたり、
りんごジュースとお酢を間違って飲んでしまう…という所業を連発していた。


私が考えてる事…それは
『私はこのまま何も考えず、ここで穏やかに生活してよいのだろうか?』という事についてだ。


夢だ夢だと思っていたけれど、この夢はいっこうに覚める気配がない。

この穏やかな日常がいつか覚めてしまうのは怖い…。

でも、私がずっと目覚めなかったら父は大丈夫だろうか…




私はそんな事をぼーっと考えながら
いつも通り、社の屋根の下3人(狐と蛙だから『人』はおかしい?)で並んで座って、日向ごっこをしていた。




「そろそろ秋ですね~。」

「ああ、社の木も 紅葉し始めたしな。」

「ですね……」


蛙さんと稲荷様が隣で話しているが、私は完全な上の空状態だ。

(う~~ん…もしやこれは夢じゃない………?

でも夢じゃなきゃ説明つかないしなぁ…。)





「あっ!見てください
あんなところに柿がなってますよぉ~」



「おお、丁度3つなってるが、高枝だな…
よし結子、お前が登って取ってこい」


(でも夢って起きたら忘れちゃうっていうし…今までもこんな、長い夢見てた事あったのかもなぁ…いや、でも…)








 サラッ…


「!」



突如、
冷たい指先が私の額の髪を持ち上げる感覚があった。



ハッと気がつくと、透き通った銀の瞳が私を覗き込んでいた。

稲荷様が、頬を膨らませこちらを伺ってる。


「聞いてるのか結子…」

「ちゃ、ちゃんと聞いてますよ!」


(ほんとは聞いてなかったけど…)



「そうかそうか、







 なら今すぐこの木に登れ」



稲荷様は頷いた後、ぺしっと柿の木を叩いてそういった。


「なんで!?!嫌ですよ!!!!!」


動揺した私を一瞥して、「やはり聞いてなかったな」と言われたけど、聞いていたとしても絶対断ってたと思う、普通に。




……考えてどうにかなる話じゃないな、
中ば開き直り、私は2人の会話に混ざりだした。


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