R18BLゲームの序盤で処刑されるモブキャラなのに何故か攻略対象に狙われています。

白井ゆき

文字の大きさ
64 / 96
巡るデジャヴと浮かぶ顛末

熊出没注意報

「そういえば、昨日は大丈夫でしたか?」
「昨日?」

 見上げたまま、そう尋ねるミリたそに首を傾げた。

「エリオットさんが怒ってるんじゃないか心配されていたので」
「あ、あぁ! エリオットね、エリオット。怒られるとかはなかったけど……」

 むしろ、それ以上に恐ろしい事態になっています。

 脳みその端の方へ追いやられていた悩みの種を思い出し、遠い目で廊下を見た。そんな俺を不安げに見つめ、「けど?」と先を促すミリたそにつられて口を開く。

「退学するかもしれない……」
「退学!? どうしてですか!?」

 すでに密着している体を更に一歩寄せられ、ひゅっと息を呑む。それ以上近づかれると比喩なんかではなく心臓が口から飛び出してしまいそうで、距離をとるように足早に進んだ時だ。

「ま、まだ決まったわけじゃないんだけど、怒ってた気がしたって俺の勝手な思い込みって言うか――うわっ!」

 廊下の突き当り。焦って曲がったと同時に現れた人物にぶつかって、そのまま後ろに吹き飛ばされる――かと思った体は倒れる寸前、左腕に掴まっていたはずのミリたそに引き寄せられ、すんでのところで支えられる。焦りを滲ませたミリたそに「大丈夫ですか?!」と尋ねられ、コクコクと頷く。

「う、うん、大丈夫」

 前々から思っていたけれど、ミリたそは案外力が強い。肩と腰を支える手の安定感に驚きつつ、思っていた10倍は足が速かった事実も合わせて思い出した。
 頭の中というか、前世でプレイしたゲームの中とはずいぶんスペックが違う気がするミリたそに目を白黒させていれば、俺を支えるミリたそごと大きな影に覆われて視線をあげた。

「自分の不注意で申し訳ありません」

 おそらく190近くあるような長身と、その体を覆う制服の上からでも分かるほどの鎧のような筋肉。焦げ茶色の髪の毛も相まって、俺がぶつかってしまったであろうその男にツキノワグマが重なる。
 ――と同時に、脳裏を過るのは某まとめサイトで読んだ熊による傷害事件の顛末だ。凄惨な事件を和らげる可愛らしいイラストでもその瞳が吊り上がっていた熊のように鋭い眼光と目が合って体が跳ねた。

「お怪我はないでしょうか」
「、ひぃっ……!」

 喉を引き攣らせた声を飲み込むことができなかったのは非常に申し訳ないと思う。けれど、突然現れた体格のいい人間に怯えてしまうのは小心者の運命のようなものなので許してほしい。
 俺の反応を見て若干悲し気に顔を歪めたその男に、湧き出た罪悪感を見なかったことにして真っすぐと立ちあがる。

「な、ないです! 何も! そちらこそお怪我はないでしょうか!」
「問題ありません。体が丈夫な事だけが取り柄なので」
「それは良かったです! では失礼します!」

 傍から見れば90度の綺麗なお辞儀をして、ミリたその手を取り熊を追い越す。現実の熊は背中を見せることは禁忌だと専ら言われているが相手は人間だから問題ないはずだ。お互い怪我もないようなら尚のこと。振り向きざまに追いかけてこないことを確認して、階段を一気に駆け下りた。
感想 23

あなたにおすすめの小説

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

死に戻りを回避したいだけなのに、改変したストーリーは僕を追いかけてくる

犬白グミ
BL
「俺のことを好きだったんじゃないのか?」 僕が転生したのは、死に戻りBL漫画だった。 原作では不憫受けとして死に戻るはずの主人公リカルドだけど、美形で自信満々な逞しい騎士に成長して、なぜか僕を追いかけてくる。 本来の攻めも、なんだか様子がおかしいし。 リカルドが通う魔法学院に入学する資格すらない魔力なしの究極のモブ、それが僕だ。 そんな僕が改変させた物語は、大きく捻れて歪みはじめた。 そして、僕はリカルドに別れを告げて――。 自惚れリカルド × 鈍感なモブ転生者アーロン 果たして死に戻りは回避できるのか? じれったくも切ないふたりの恋は加速する。 お気に入り、ハート、感想ありがとうございます! タイトル変更しました。死に戻り小説→死に戻り漫画に変更しました。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL要素までとても遠いです。前半日常会多め。

伝説の勇者が俺の寝室に不法侵入してきました〜王様の前で『報奨より幼馴染をください』って正気ですか!?〜

たら昆布
BL
勇者になった青年とその幼馴染だった薬師の話

(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? 騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。

【完結】我が兄は生徒会長である!

tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。 名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。 そんな彼には「推し」がいる。 それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。 実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。 終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。 本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。 (番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。   ※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました! えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。   ※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです! ※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。