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巡るデジャヴと浮かぶ顛末
熊出没注意報
「そういえば、昨日は大丈夫でしたか?」
「昨日?」
見上げたまま、そう尋ねるミリたそに首を傾げた。
「エリオットさんが怒ってるんじゃないか心配されていたので」
「あ、あぁ! エリオットね、エリオット。怒られるとかはなかったけど……」
むしろ、それ以上に恐ろしい事態になっています。
脳みその端の方へ追いやられていた悩みの種を思い出し、遠い目で廊下を見た。そんな俺を不安げに見つめ、「けど?」と先を促すミリたそにつられて口を開く。
「退学するかもしれない……」
「退学!? どうしてですか!?」
すでに密着している体を更に一歩寄せられ、ひゅっと息を呑む。それ以上近づかれると比喩なんかではなく心臓が口から飛び出してしまいそうで、距離をとるように足早に進んだ時だ。
「ま、まだ決まったわけじゃないんだけど、怒ってた気がしたって俺の勝手な思い込みって言うか――うわっ!」
廊下の突き当り。焦って曲がったと同時に現れた人物にぶつかって、そのまま後ろに吹き飛ばされる――かと思った体は倒れる寸前、左腕に掴まっていたはずのミリたそに引き寄せられ、すんでのところで支えられる。焦りを滲ませたミリたそに「大丈夫ですか?!」と尋ねられ、コクコクと頷く。
「う、うん、大丈夫」
前々から思っていたけれど、ミリたそは案外力が強い。肩と腰を支える手の安定感に驚きつつ、思っていた10倍は足が速かった事実も合わせて思い出した。
頭の中というか、前世でプレイしたゲームの中とはずいぶんスペックが違う気がするミリたそに目を白黒させていれば、俺を支えるミリたそごと大きな影に覆われて視線をあげた。
「自分の不注意で申し訳ありません」
おそらく190近くあるような長身と、その体を覆う制服の上からでも分かるほどの鎧のような筋肉。焦げ茶色の髪の毛も相まって、俺がぶつかってしまったであろうその男にツキノワグマが重なる。
――と同時に、脳裏を過るのは某まとめサイトで読んだ熊による傷害事件の顛末だ。凄惨な事件を和らげる可愛らしいイラストでもその瞳が吊り上がっていた熊のように鋭い眼光と目が合って体が跳ねた。
「お怪我はないでしょうか」
「、ひぃっ……!」
喉を引き攣らせた声を飲み込むことができなかったのは非常に申し訳ないと思う。けれど、突然現れた体格のいい人間に怯えてしまうのは小心者の運命のようなものなので許してほしい。
俺の反応を見て若干悲し気に顔を歪めたその男に、湧き出た罪悪感を見なかったことにして真っすぐと立ちあがる。
「な、ないです! 何も! そちらこそお怪我はないでしょうか!」
「問題ありません。体が丈夫な事だけが取り柄なので」
「それは良かったです! では失礼します!」
傍から見れば90度の綺麗なお辞儀をして、ミリたその手を取り熊を追い越す。現実の熊は背中を見せることは禁忌だと専ら言われているが相手は人間だから問題ないはずだ。お互い怪我もないようなら尚のこと。振り向きざまに追いかけてこないことを確認して、階段を一気に駆け下りた。
「昨日?」
見上げたまま、そう尋ねるミリたそに首を傾げた。
「エリオットさんが怒ってるんじゃないか心配されていたので」
「あ、あぁ! エリオットね、エリオット。怒られるとかはなかったけど……」
むしろ、それ以上に恐ろしい事態になっています。
脳みその端の方へ追いやられていた悩みの種を思い出し、遠い目で廊下を見た。そんな俺を不安げに見つめ、「けど?」と先を促すミリたそにつられて口を開く。
「退学するかもしれない……」
「退学!? どうしてですか!?」
すでに密着している体を更に一歩寄せられ、ひゅっと息を呑む。それ以上近づかれると比喩なんかではなく心臓が口から飛び出してしまいそうで、距離をとるように足早に進んだ時だ。
「ま、まだ決まったわけじゃないんだけど、怒ってた気がしたって俺の勝手な思い込みって言うか――うわっ!」
廊下の突き当り。焦って曲がったと同時に現れた人物にぶつかって、そのまま後ろに吹き飛ばされる――かと思った体は倒れる寸前、左腕に掴まっていたはずのミリたそに引き寄せられ、すんでのところで支えられる。焦りを滲ませたミリたそに「大丈夫ですか?!」と尋ねられ、コクコクと頷く。
「う、うん、大丈夫」
前々から思っていたけれど、ミリたそは案外力が強い。肩と腰を支える手の安定感に驚きつつ、思っていた10倍は足が速かった事実も合わせて思い出した。
頭の中というか、前世でプレイしたゲームの中とはずいぶんスペックが違う気がするミリたそに目を白黒させていれば、俺を支えるミリたそごと大きな影に覆われて視線をあげた。
「自分の不注意で申し訳ありません」
おそらく190近くあるような長身と、その体を覆う制服の上からでも分かるほどの鎧のような筋肉。焦げ茶色の髪の毛も相まって、俺がぶつかってしまったであろうその男にツキノワグマが重なる。
――と同時に、脳裏を過るのは某まとめサイトで読んだ熊による傷害事件の顛末だ。凄惨な事件を和らげる可愛らしいイラストでもその瞳が吊り上がっていた熊のように鋭い眼光と目が合って体が跳ねた。
「お怪我はないでしょうか」
「、ひぃっ……!」
喉を引き攣らせた声を飲み込むことができなかったのは非常に申し訳ないと思う。けれど、突然現れた体格のいい人間に怯えてしまうのは小心者の運命のようなものなので許してほしい。
俺の反応を見て若干悲し気に顔を歪めたその男に、湧き出た罪悪感を見なかったことにして真っすぐと立ちあがる。
「な、ないです! 何も! そちらこそお怪我はないでしょうか!」
「問題ありません。体が丈夫な事だけが取り柄なので」
「それは良かったです! では失礼します!」
傍から見れば90度の綺麗なお辞儀をして、ミリたその手を取り熊を追い越す。現実の熊は背中を見せることは禁忌だと専ら言われているが相手は人間だから問題ないはずだ。お互い怪我もないようなら尚のこと。振り向きざまに追いかけてこないことを確認して、階段を一気に駆け下りた。
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