怪異の忘れ物

雨音に憑りつかれた男

雨の日に幼い子供と妻を亡くし、雨音に死んだはずの妻子の声を聴いたと思い込んだ彼は、雨が降るたびに、収音マイクを片手に妻子の死んだ事故現場に足を運び、そこで雨音を録音した。その雨音に混じって妻子の声が聞こえると彼は信じ、ネットにその音源をアップして、それを再生し本当に雨音と一緒に人の声が聞こえるとネットで噂になった。
だが最初は、ただの雨音しか聞こえないと悪質ないたずらとして否定するネットユーザーの方が多かった。そんな懐疑的な意見が多く、だが、次第に、騒ぎが大きくなり、音のスペシャリストの教授がそれを解析すると言い出した。調べて確かに雨音に重なるように人の声らしき波形があるとして、最新の解析ソフトで雨音のノイズとその声を分析し、その人の声の波形をクリアにして、調査結果としてネットに公開した。それは女性の声で、「やめて、お願い、せめて子供だけは助けて・・・」と聞こえる音だった。
それが公開されてすぐに、その雨音を録音した夫が警察に逮捕されたとネットでニュースになった。