俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?

くまの香

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46話 救助された人

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 自衛官が風呂から出てさっぱりとして戻ってきた。家の周りを走り込んでいた山根さんも戻り、ひと風呂浴びにいった。

 押入れの整理をしたいが、仏間にはまだ寝ている人が沢山いる。とりあえず兄貴と自衛官、それから5分で風呂から出た山根さんと一緒に食事をした。

 自衛官は仏間にも驚いたが、風呂、トイレ、キッチンにも驚いていた。けど、どこか目の奥が悲しそう見えた。もしかすると妻帯者だったのかな。

 全員揃ったら話を、と言っていたが結局時間があったのでお互いの話をしていた。

 昼頃には、他の人達も起きてきた。順繰りに風呂場で綺麗になってもらう。
 昨夜、やってきたのは子供ふたりを連れた女性、老夫婦、警官がひとり、消防(救急?)が3人、それに自衛官の合計10名だった。

 こちらはうちが兄貴と裕理と俺、トイレママ親子、風呂ママ親子、キチママ親子のとこは子供がふたり、そして鮎川さんと山根さんで12名。

 いっきに22名の大所帯になってしまった。
 しかし、自衛隊や警察、消防が増えたのはありがたい。

 遅い朝食と言うか昼食をとってもらいながら、お互いの紹介と状況の説明をした。


 聞いた話は壮絶だった。
 山根さんに話を聞いた時も思ったが、やはり普段から国民を守るために働いてくれている人は、あの事件の発生時に民間人を守って飛ばされてきた人達だった。

 話を聞いていくと自分がどれだけ恵まれていたかことか。それぐらい他の人達は飛ばされた先で壮絶な戦いが繰り広げられていた。

 『空間』がなく飛ばされた人は多かった。それは寝るところや食べる物が無い以前に、飛ばされた先もこの付近のように落ち着いた場所ではなかったからだ。

 逃げ惑う人々、それを庇い倒れる仲間達。怪我をした仲間に手を貸す間もないくらい守らなければならない民間人の多さ。

 人々の混乱が尚更救助を難しくしていた。結局森の中で散り散りになった。逃げる人に追いつく前に化け物に襲われる人々。武器もなくどうしようも出来ない。

 ひとり彷徨う森の中で、同じように彷徨う者に会った。3人居た救急隊員もそれぞれ別の隊、別の地域でさえあった。
 水も食料も無く彷徨い、2日目に何かの残骸の様な物を発見。中に老夫婦と子連れの親子が居たそうだ。


「その鉄の残骸が、どうも船の一部だったようでして、中に自販機があり助かりました。飲み物や食べ物を入手出来ました」

「まさか森の中に船が落ちているとは思いませんからね」

「私たちはその船に乗ってたんです。いつも乗ってる船なのに気がついたら陸地に居て……。しかも何故か客室部分だけでしたし」

「私たちもそれに乗ってたんですよ」


 お婆さん夫婦も乗って居たらしい。


「それでその日はそこで過ごしまして、翌朝、おふたりがそれぞれいらして」


 お婆さんが自衛官の方を見た。
 ふむ。船に居た老夫婦と3人親子のところに救急隊が3人来て、翌朝に、お巡りさんと自衛官が来たのか。


「しかしその船の客室は窓ガラスがありませんでしたし、外からは化け物どもがいくらでも入って来られると思い、水と食べ物を持てるだけ持ち、そこを離れました」

「私達だけだと移動はとても無理でしたので助かりました」


 確かに。子供をふたり連れての森歩きは無理だ。しかも3歳と1歳。絶望だな。救急隊や自衛官達が現れなかったらその場所を離れられなかっただろう。

 自販機で買った物を持って出たが、途中で出会ったモノから逃げる中、持っていた物を手放す事になった。
 投げつけた物で気を引く事が出来たので、自分達が食べるより逃げるために使ってしまったそうだ。


「それで化け物が居ない方へと逃げていくうちに山根さん達と出会った次第です」


 あれ?もしかすると船ママさんは空間スキル持ちじゃないかなぁ。母親か、もしくは老夫婦のどちらか?
 話にまだスキルは出て来なかったが、自衛官や救急の人もスキルを取っている人はいそうな気がするのでこちらから話題を振ってみた。


「あの、話は変わりますが、スキルを取得しましたか?」


 俺の言葉に男性3人が反応した。自衛官と救急のふたりだ。


「スキル! やはりあれは夢じゃなかったのか」

「けど、あの瞬間だけでその後は見えないぞ?」

「ああ、やはりスキルはあったのですね。何度唱えても何も起こらないので幻かと思っていました。と言う事はそちらのどなたかはスキル取得に成功されたのですか?」


 そこで兄貴がスキルの確認方法を説明した。老夫婦以外は全員試しているようだった。


「なるほど、出ました。自分は物理攻撃ですね。物理攻撃(微1.0009)です。化け物を一体も倒していないのに経験値を貰えているのか」


 気がついていないだけで何かを倒したんじゃないか?小さい魔物を踏んづけたとか……。


「俺は体力(微1.00002)ですね。かなり走り回ったのにたったこれっぽちの経験値です」

「僕も物理攻撃(微)ですが、1.0001かぁ。殆ど逃げていたからなぁ」


 残り、警官と救急のひとりはスキルは取得していなかった。


「意味がわからず無視してしまいました。残念です」

「俺もですよ。あの時は黒いのから逃げ回っていてそんな余裕もなかったし……」

「あの……、私、空間(フェリー1.000001)って出てきます。何ですか、空間フェリーって」


 あ、やっぱりだ。お母さんの方が空間スキル持ちだった。それにしても空間フェリーって、フェリーで転移してきたってことか。
 兄貴も不思議に思ったのかママさんの方へ問いかけている。


「あの、話にあった客室ってフェリーだったんですか?」

「あ、あの、うちは島住まいなんですけど本土への交通は船しかないんです。フェリーって言っても車が数台乗れる程度の小型の……一応フェリーなのかな? 中に椅子が並んだ客室もあって。本土の実家へはいつもそれで移動してました」


 あ、なるほど。フェリーなんて聞くと大きいのを想像していたけど普段使いサイズもあるんだな。


「あの……それでこの空間フェリースキルは、持っていると何か良いことあるんですか?」

「と言うか皆さんもしかしたらそのスキルをお持ちなんですね?」


 自衛官に聞かれて俺たちもそれぞれ持っているスキルを説明した。説明を聞くほどに取らなかったふたりは悔しがっていた。


「救急車の中に居たのに空間スキルは取れなかったのかぁ」

「空間スキルはおそらくですが子供と関係していると思われますよ。救急車に親子とか子供が乗っていれば取れたかもしれませんが」

「くぅ。あの時は倒れて気を失った高齢者だったか」

「あ、それでですね、空間スキルのメリットですけど、飲み物食べ物が復活します。フェリーの客室の?自販機を使っていたっていってましたけど、たぶん買っても買っても翌朝には戻っていたと思います」

「あら。気がつきませんでした。確かに売りきれにはならなかったけど中の在庫が満杯に入っていたんだと思ってました」

「そのフェリーの残骸がある場所はここから遠いですか?出来れば持ってきた方がいいんですが」

「ううむ。逃げ回りながら森の中を歩き回っていたので、正直場所はわからないのが現実です。申し訳ない」

「まぁ、今ある物資で充分足りるかと思うので急いで探しに行かなくてもいいのかな」


 キチママさんの意見に山根や兄貴、鮎川さんも同意していた。

 現在の問題は食料よりも寝る場所だ。

 兄貴、俺、裕理、トイレママと郁未、風呂ママとりこ、キチママとまなとりり、鮎川さんと山根。
 自衛官1、救急3 、警察1 、老夫婦2 、フェリーママと子供2。

 合計22名、うち子供が7名として残りは女性6名と男性9名。
 いくら仏間が16畳とは言え、全員が畳の上に寝るのは無理だ。雑魚寝でもキツイよな?

 これは全員で会議だな。
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