俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?

くまの香

文字の大きさ
90 / 112

90話 帰ってきた兄貴達

しおりを挟む
 -----(清見視点)-----

 向こうに1週間の予定だった兄貴達が戻ってきた。何故か予定より早い。
 急患でも背負ってきたのかと思ったが違った。

 彼方の自衛官が避難民達に話をどう持っていったのかわからないが、今のところごねたり反対の声をあげる者は出ていないそうだ。

 と言うのも、遺跡にごろ寝、怪しい材料の食事、しかも量は少ない、だが追い出されたら生きていけない。ひとり、もしくは少数で生き抜く力も残っていない、向こうの避難民はそんな状態だ。体力どころか心も折れたままだ。
 同じ状況の避難民が増えても対して問題にはならんそうだ。

 そこに兄貴達が持っていった握り飯だ。謎の世界にいきなり来てから初めての、久しぶりの日本食だ。
 狂喜乱舞で増える避難民どころの話ではない。

 ちなみに頑張って握っていたのでちゃんと全員に行き渡ったそうだ。おかずはやはり足らなかったので、子供と老人のみ。

 兄貴と大島氏はさっさとこっちの『空間』建物を置ける場所の確認、3佐らの護衛の元で遺跡周りの幹の太さチェックと虫の大きさチェックだ。

 そして久しぶりの日本食(握り飯)で気持ちが蘇った避難民達を自衛隊が取りまとめていた。
 スキルの話、それから今後の避難生活を前向きに立て直しを計る話だ。

 スキルを取れずとも、あの瞬間におかしな画面が目の前に浮かんだ記憶があるので頭ごなしに否定する者はいなかった。
 スキルを取っても使い方がわからず黙っていた者も居たが、今回自衛隊できっちり名簿を作った。
 スキルの申告は本人の意思に任せるが、いくつかのルールを明示したそうだ。

 スキルを申告した者には、スキルについて知り得る限りの情報を明示する。つまり、スキルの経験値稼ぎの仕方などを教えるなどだ。
 もちろんスキル申告により何かが義務になるわけではない。無理に戦いに連れ出しはしない。

 逆にスキルの申告をしない者へは、情報も使用も個人単位で行う事は許された。しかしスキルでの犯罪が明らかになった場合は厳しい厳罰、追放もある。
 好きにしていいけど何かあったら追い出すからな、ってとこだ。


 300人弱でスキル保持者は32人だった。多いと見るべきか少ないと見るべきか。(未申告者は不明)
 中には何となく取った(取れた)者も居たが、スキル取得者は男性が殆どで小説やアニメでの知識も多かれ少なかれあったようだ。

 現実に戦うのは怖いが無理しない程度では経験値を稼ぎたいと言質も取れている。
 スキルの種類は32人中、30人が物理攻撃(微)であった。

 あのスキルガチャは宝くじ並みに当たりが少ないのだろうか?残り2名は、ひとりが体力(微)、気力(微)だ。

 気力って何だよぉぉ。

『気力(微)』初めてのスキルだ。どんな効果かイマイチわからん。物理攻撃は殴る蹴るなどの物理的な攻撃だよな。わかりやすい。
 体力は、うん、その名のとおり体力。疲れにくいとかかな?
 俺の回復は、治りが早い(ツバより遅いかも)。

 では、気力って何だ?気力……気力……、何かをしようとする気持ち?体力がなくても気力で補えって小学生の時、体育の先生が言ってたな。もしかすると体力より上か?

 そういえば、気を練ってどうこうってアニメ多いよな?かめーはめーとか、らせんがーとか、あと指先からあたたたたとか。
 それらって『気』が核にないか? これはもしかして当たりスキルが出たのでは?

 どんな人だろう。遺跡に行ったら『気力』持ちの人には逆らわないようにしよう。



 ってわけで、向こうの避難民はこっちの受け入れに前向き通り越して前のめりらしい。
 一応握り飯が毎日食べれるほど米がない事はちゃんと伝えてあるそうだ。

 俺たちも兄貴と大島氏が留守だった3日間の事を伝えた。
 新体制も整っている。いつでも引越しオッケーだ。それにしてもこの異世界転移をしてから引越し続きだな。今度のとこには長く居たいもんだ。


 今度の移動はちょっと難しいそうだ。
 前に仏間から産院へと移動した時、あの時は最短直進で、途中の危険地帯は1箇所、かつ5分程度の距離だった、

 しかし、今回の遺跡までは、直進するとなるとかなりの数の危険地帯を通る事になる。
 新しく作られた地図を皆が覗き込む。

 太い幹が多く魔物も多い地帯が、地図上で蛇行した感じにある。日光いろは坂、それの巨大版に近い。


「これ、直進は無理だな」

「そうですねぇ……」

「通り抜ける距離も長い。囲まれたら身動きが取れなくなってアウトだな」

「となると、ぐるりとこっちから回るか……」


 かなり遠回りだが、いろは坂を完全に迂回する。それでも2箇所は危険地帯がある。


「あれ? 俺が通った道は? 危険地帯は無かったよ?」

「ああ。清見君が通った場所はかなり狭い範囲の移動なんですよ。人が2列程度なら危険地帯に沿った安全な場所を蛇行して進めるらしいです。ほら、このいろは坂で言うここ側ですね」


 なるほどぉ。そんなギリギリを大島氏無しで移動していたのか。恐ろしいな。
 今回は大きな物体を運ぶので、いろは坂にかからない道を行くそうだ。時間はかかるが安全第一。

 新生児や園児は自衛官が背負う、高齢者も足の悪い男性も自衛官が背負ってくれる。途中で疲れたママさん達も背負ってくれる予定なので、かなりの人数の自衛官が向こうから引越し業者としてこちらへ来てくれるそうだ。

 空間スキル持ちは例のごとく、建物を掴んで移動する。ここ(病院)に集まる時もやってもらったので、大丈夫だと思う。
 産院の保持者である看護師長は未経験なので、出発前に練習をしてもらう。
しおりを挟む
感想 66

あなたにおすすめの小説

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

処理中です...