俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?

くまの香

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93話 新居②

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 -----(清見視点)-----

 遺跡の中は恐ろしく広い空間で、あちらこちらに石の建物が残されていた。と言っても崩れかけていたり、壁だけだったりも多い。
 1万年前に栄えていた都市です、と聞いても驚かない。驚くけどね。

 残された石壁がまるで迷路を作っているようだ。
 そのあちらこちらに避難民が居るのが見えた。小さいグループが出来ていたり、ひとりでいる人も見れる。

 天井部分はかなり高いが、幾つかの場所は穴があいているのか、薄い光が落ちてきている。


「壁に付いている苔が光を出しているので、夜でも真っ暗にはならないんですよ」


 先頭から離れているが、横にも自衛官が一緒に歩いている。その自衛官が説明をしてくれる。


「あの穴の真上に大きな星が通る時は、美しいです。夜に時間が取れたら是非見てみてください」

「穴が開いているの? 雨が降ったらその下は大変じゃない?」


 キチママさんが尋ねてくれたそれは俺も気になった。


「それがですねぇ。こちらへ来てから3……4ヶ月以上経ちますが、未だ雨に降られた事はないんですよ。この世界に雨天は無いんでしょうかね」

「そうなの。私達日本人は雨が多い国だからつい気になっちゃうけど。そっか、雨の少ない国とか今は乾季とかもあるかもしれないわねぇ」


 その話を聞いて俺はちょっとゾッとした。もしも今が乾季で、やがて雨季がきたら。
 すり鉢状のその下、洞窟の中…………。

 うわぁぁ、今のなし!なしなしなし!フラグ立つなよな!!!


 遺跡避難民が集まっている、狭い通路を通っていく。


「いつもはここまで集まる事はないんですけど、今日は皆さんが気になるのでしょう」


 そして石造りで一応天井もある建物の中に入った。中はガランとしていて結構広い。
 自衛隊が本部としている場所らしい。


 話が始まった。俺は最後列に座り静かに聞いている。

 このすり鉢状遺跡周りだが、周囲は割と細い木で魔物も殆ど見ない。しかし、ちょっと奥に行くと途端に木は太くなり魔物もサイズアップする。

 ただ、遺跡の北側には細い木が続く一帯がある。狭い範囲ではあるが、それは蛇行して外へ外へと続いている。
 自衛隊や避難民がこの遺跡へと辿り着けたのもその道へと出れたおかげだ。

 魔物を避けて進んでいくとこの遺跡へと出たそうだ。そして遺跡へは外から魔物が来る事はなかった。なのでそこを避難所として自衛隊は救助を続けた。
 しかし少しでもその範囲をはみ出るとあっという間に魔物が集まり、隊員は数を減らしていった。


「初日を乗り切れた隊員は沢山居た。申し訳ないですが民間人よりも多く生き残れたと思います。あの化け物達は民間の方がたには難しいでしょう。当たり前ですよね。我々はそう訓練されてきましたから。生き残れ、生き残れと」


 辛そうな顔だ。守られる方より守る方のが辛い事は多いんだろうな。


「生き残り、周りを探る。民間人を救助する。隊員と出会う。それを繰り返しつつ移動していきました。救助のたびに我々は仲間を失う。武器もない上に、見た目以上に強い奴らでした。民間人を守り、逃しつつ、仲間がどんどんと減る。移動の途中で新たな仲間と出会う。死んでもらうために出会うようでやるせなかったです

「隊長!」


 こんな世界でもまだ『自衛隊』って職業を背負わないといけないのか。俺…………ニートで、本当に申し訳ない。


「すみません。今のは私の愚痴です。部下を犠牲にする情けない上官ですよ……」


 それでも何とかこの遺跡を拠点に、出来る限りの救助を続けたそうだ。

 因みに遺跡からすると俺らが居た場所は南なのだが、北周りでないと危険すぎてこれないそうだ。
 大島氏は南側の危険地帯を突っ切れる。完全防御、羨ましい。あ、嘘。羨ましくない。あのスキル持ってるとこき使われるからな。

 遺跡避難所で水は手に入り、食べ物も遺跡周りの浅い森で入手出来るようになった。と言っても魔物を狩るまでに隊員の被害は大きかったそうだ。

 避難所で寝場所、水、食料確保をしつつ、救助範囲を広げていたところ、うちの拠点に行き当たったそうだ。
 そして今に至る。

 ここの自衛隊の人達の悲惨な話を聞き終えた。ママさん達も目を擦っている。

 こちら側からは看護師長さんが話をする。俺たちが決めたルールの話だ。

 遺跡隊長……向こうの隊長とうちの隊長が紛らわしいので、俺はあっちを遺跡隊長と呼ぶ事にした。
 うちの隊長は、「彼方の方が断然上です!めちゃくちゃ上ですから!」と隊長の名称を変換しようとしたが、子供達も覚えちゃってるし、いいじゃん。

 うちは今までどおり『たいちょう』で、向こうは『遺跡隊長』な。

 そう、看護師長さんが色々と共通ルール説明すると、遺跡隊長は驚いていた。

「こうちらの避難民を同様に扱っていただけるとは思いませんでした」

 との事。いや、扱うでしょ。同じ日本人なんだから。まぁ、持ち主としての宣言はさせてもらうけどね。

 合同避難所としてのルールは徹底してもらえるとの事だった。
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