101 / 112
101話 宝の山
しおりを挟む
-----(自衛官視点)-----
最近、遺跡地下2階の探索が始まった。
今のところ、地上の森のように魔物が出る事はない。以前に行方不明になった自衛官は、あのボス部屋の魔物にやられたのだろうか。
それでも、もしもと言う思いで探索は続く。死んだとしても何か遺品が落ちているのではないか、と。
もちろん、探索だけが目的ではない。地下の地図を作成している。
地下1階、あの大穴の周りは、小部屋や通路があるのだがどれも直ぐに行き止まりになっていて進めない。崩れて進めないのだ。
それに比べて地下2階は、狭い通路の先の大広場、そこに石版、そして周りの壁には沢山の通路が伸びていた。
まだひとつひとつゆっくりと進んでいる状態なのだが、かなり広い空間のようだ。
避難民が暮らしている遺跡1階(実際には地面の下だが)もかなり広いので、地下2階もそれと同じくらいかもしくはそれ以上に広くも思える。しかし地下1階は塞がっている場所が多い。
実は中央の大穴はもっと下まで続いているのだが、そこに降りられる道具も明かりもないので放置している状態だそうだ。
まずは地下2階部分。魔物が居ないという情報も今後の役に立つだろう。
そんな感じで地図を作りながら移動をしていると、行き止まりに見えた通路の先が右へと曲がりちょっとした広場になっていた。
通路はそこで行き止まりなのだが、その部屋の奥で木箱が発見された。
この洞窟で何かを発見するのは初めてだ。
この遺跡自体でも石壁や瓦礫以外では初めての発見だ。
木箱。
一応、ミミックと言う宝箱に擬態する魔物かもしれないので、迂闊に近寄ったりはしない。
一名が戻り、隊長へと知らせに走った。
直ぐに隊長がやってきた。大島氏と清見君を同行していた。
大島氏のスキル内に入った隊長が、木の箱を棒で突いたり横倒しにするが、箱は動くことはなく箱のままだ。
隊長は次に清見君に何かを伝えて、清見君が頷いた。
「箱だけ食べてくれる?」
どうやら清見君のスライムの手を借りるようだ。
キュキュ。もっもっも。
スライムが箱を食べている途中で中から石のような物がザザっと流れ出てきた。
多少のサイズの違いはあるがひと口饅頭サイズのガラス玉のようだ。ぱっと見であるが、殆どがグレーで、深緑が幾つかあるように見えた。
そのガラス玉は特に魔物ではないようだ。
隊長がひとつ手に取ってみた。表面はツルツルの濁ったガラスっぽい。形は楕円型の…………あれ?この形。
どこかで見覚えがある。しかも最近だ。
「あ、石版」
「ん?」
「石版に凹みがありました。ちょうどその石のサイズくらいだったかと……」
木箱はぽよんさんが食べたので、地面に落ちたそれらを仲間の隊員がささっと集めて袋に入れた。
そして俺ら一同は急遽石版へと戻った。
石版には凹みが5箇所。似た形だがサイズがバラバラで、ひと口饅頭サイズから大きなあんまんサイズまでだ。
隊長がその石を手に、石版の一番小さい凹んだ部分へ置いた。
隊長は一瞬目を見開いたが、直ぐにため息を吐き出して振り返った。
「岩本、お前確かNOスキルだったよな」
「はい。自分はスキル入手が出来ませんでした!」
「うん。よし、お前、これをここに差し込んでみろ」
隊長はガラス玉を岩本隊員へ渡した。岩本が石版の凹みに玉を差し込むと淡い光が岩本を包み込んだ。
「スキルを取得致しましたぁぁぁ!」
岩本が嬉々として叫び声をあげた。
どう言う事だ?
隊長が説明をした。
「あの箱に入っていたのは石でもガラス玉でもない。石版にセットするとスキルを入手出来る仕組みのようだ。ただし、既に入手済みの者には何も起こらない」
なるほど、隊長はスキル取得済みだったな。
「あ、俺やってみたい」
大島氏が手を挙げた。
「俺、防御オンリーじゃん? 攻撃スキル欲しいです。あ、でも自衛隊の人が優先かぁ。石、結構な数あったけど、スキル持ってない隊員全員にはいきわたらないか」
大島氏が直ぐに諦めて後ろへと下がった。
「臼井、石の数は?」
「はい、……しのごの……20……40、43あります」
「加藤、隊の中でスキル未取得は何名居る?」
「はい。52名であります」
「ふむ……」
仲間の半数はスキル未取得か。
「俺はまたでいいです。またどこかで発見したらで」
大島氏が引いた。そうだな、完全防御なんて後衛に見せかけた前衛スキルのようなもので、しかも超レアスキル。
現在、この団体で1番強いのは大島氏だよな。今更、物理攻撃、しかも微量を取得してもな。
「あ、あの、隊長! 自分は完全に後衛の物流部隊ですので、物流部隊10名を後に回していただければ、大島氏の分が出来るかと。大島氏は民間にもかかわらずいつも最前線で頑張っておられます」
「…………そうだな。大島さん。どうぞこれを」
隊長が差し出した石を受け取った大島氏は隊員達へと深く頭を下げた。
隊長が清見君を見た。清見君は慌てて頭を横に振った。これ以上前線に連れていかれてなるものか!という気概が伝わってくるな。
大島氏は石版の前に立ち、淡く光った。おめでとう。
その後、慌ただしく隊員達のスキル取得が始まったようだ。
最近、遺跡地下2階の探索が始まった。
今のところ、地上の森のように魔物が出る事はない。以前に行方不明になった自衛官は、あのボス部屋の魔物にやられたのだろうか。
それでも、もしもと言う思いで探索は続く。死んだとしても何か遺品が落ちているのではないか、と。
もちろん、探索だけが目的ではない。地下の地図を作成している。
地下1階、あの大穴の周りは、小部屋や通路があるのだがどれも直ぐに行き止まりになっていて進めない。崩れて進めないのだ。
それに比べて地下2階は、狭い通路の先の大広場、そこに石版、そして周りの壁には沢山の通路が伸びていた。
まだひとつひとつゆっくりと進んでいる状態なのだが、かなり広い空間のようだ。
避難民が暮らしている遺跡1階(実際には地面の下だが)もかなり広いので、地下2階もそれと同じくらいかもしくはそれ以上に広くも思える。しかし地下1階は塞がっている場所が多い。
実は中央の大穴はもっと下まで続いているのだが、そこに降りられる道具も明かりもないので放置している状態だそうだ。
まずは地下2階部分。魔物が居ないという情報も今後の役に立つだろう。
そんな感じで地図を作りながら移動をしていると、行き止まりに見えた通路の先が右へと曲がりちょっとした広場になっていた。
通路はそこで行き止まりなのだが、その部屋の奥で木箱が発見された。
この洞窟で何かを発見するのは初めてだ。
この遺跡自体でも石壁や瓦礫以外では初めての発見だ。
木箱。
一応、ミミックと言う宝箱に擬態する魔物かもしれないので、迂闊に近寄ったりはしない。
一名が戻り、隊長へと知らせに走った。
直ぐに隊長がやってきた。大島氏と清見君を同行していた。
大島氏のスキル内に入った隊長が、木の箱を棒で突いたり横倒しにするが、箱は動くことはなく箱のままだ。
隊長は次に清見君に何かを伝えて、清見君が頷いた。
「箱だけ食べてくれる?」
どうやら清見君のスライムの手を借りるようだ。
キュキュ。もっもっも。
スライムが箱を食べている途中で中から石のような物がザザっと流れ出てきた。
多少のサイズの違いはあるがひと口饅頭サイズのガラス玉のようだ。ぱっと見であるが、殆どがグレーで、深緑が幾つかあるように見えた。
そのガラス玉は特に魔物ではないようだ。
隊長がひとつ手に取ってみた。表面はツルツルの濁ったガラスっぽい。形は楕円型の…………あれ?この形。
どこかで見覚えがある。しかも最近だ。
「あ、石版」
「ん?」
「石版に凹みがありました。ちょうどその石のサイズくらいだったかと……」
木箱はぽよんさんが食べたので、地面に落ちたそれらを仲間の隊員がささっと集めて袋に入れた。
そして俺ら一同は急遽石版へと戻った。
石版には凹みが5箇所。似た形だがサイズがバラバラで、ひと口饅頭サイズから大きなあんまんサイズまでだ。
隊長がその石を手に、石版の一番小さい凹んだ部分へ置いた。
隊長は一瞬目を見開いたが、直ぐにため息を吐き出して振り返った。
「岩本、お前確かNOスキルだったよな」
「はい。自分はスキル入手が出来ませんでした!」
「うん。よし、お前、これをここに差し込んでみろ」
隊長はガラス玉を岩本隊員へ渡した。岩本が石版の凹みに玉を差し込むと淡い光が岩本を包み込んだ。
「スキルを取得致しましたぁぁぁ!」
岩本が嬉々として叫び声をあげた。
どう言う事だ?
隊長が説明をした。
「あの箱に入っていたのは石でもガラス玉でもない。石版にセットするとスキルを入手出来る仕組みのようだ。ただし、既に入手済みの者には何も起こらない」
なるほど、隊長はスキル取得済みだったな。
「あ、俺やってみたい」
大島氏が手を挙げた。
「俺、防御オンリーじゃん? 攻撃スキル欲しいです。あ、でも自衛隊の人が優先かぁ。石、結構な数あったけど、スキル持ってない隊員全員にはいきわたらないか」
大島氏が直ぐに諦めて後ろへと下がった。
「臼井、石の数は?」
「はい、……しのごの……20……40、43あります」
「加藤、隊の中でスキル未取得は何名居る?」
「はい。52名であります」
「ふむ……」
仲間の半数はスキル未取得か。
「俺はまたでいいです。またどこかで発見したらで」
大島氏が引いた。そうだな、完全防御なんて後衛に見せかけた前衛スキルのようなもので、しかも超レアスキル。
現在、この団体で1番強いのは大島氏だよな。今更、物理攻撃、しかも微量を取得してもな。
「あ、あの、隊長! 自分は完全に後衛の物流部隊ですので、物流部隊10名を後に回していただければ、大島氏の分が出来るかと。大島氏は民間にもかかわらずいつも最前線で頑張っておられます」
「…………そうだな。大島さん。どうぞこれを」
隊長が差し出した石を受け取った大島氏は隊員達へと深く頭を下げた。
隊長が清見君を見た。清見君は慌てて頭を横に振った。これ以上前線に連れていかれてなるものか!という気概が伝わってくるな。
大島氏は石版の前に立ち、淡く光った。おめでとう。
その後、慌ただしく隊員達のスキル取得が始まったようだ。
111
あなたにおすすめの小説
俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!
くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作)
異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる