俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?

くまの香

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104話 ある意味NEWスキル

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 -----(清見視点)-----

 石を積み、はやひと月。いや積んでたわけではなくて石を割ってはくっつけていた。

 スキル回復が『弱』の8まできた。よし、がんばれ!目指せ回復『中』。

 最近は俺の横で子供らが石を積んで積み木のようにして遊んでいる。保育園の隣の仏間の庭で毎日やってたからな、子供らも気になってたみたいだ。
 って、裕理くん?それ何のレベル上げ?


 子供は気にいると何時間でも集中出来るからすごいよな。積みながら居眠りしてる子もいるぞ?園内でお昼寝しろよ。
 俺はちょっとタイム。休憩。
 毎日地べたに座り込んでいるので、服の汚れや傷みも半端ないな。


 そう言えば、この世界に来た時に着ていた服、引きニートの俺の一張羅はスウェット上下だった。

 押入れから出てきた曾祖父さんの着物と交代で着ているが、室内だけでなく屋外でもそれで活動しているので布の傷みは速い。
 今もスウェットの両膝には穴があき、それが日に日に大きくなっている。


 俺は右膝の穴の縁を指で擦りながら唱えてみた。

「かいふく、かいふく…………」

 んー、ダメか?
 生地繊維が伸びてくるイメージを浮かべながらぶつぶつと唱える。

 コシコシ、ぶつぶつ、コシコシ、ぶつぶつ

 気配に目を開けると俺の指の横に小さい指が。見ると近くで遊んでいた裕理がいつの間にか俺の元に寄ってきて、見よう見まねで俺の膝をコシコシしている。

 うおっ、左足にも幼児が寄って来ていた。
 俺は幼児に囲まれて両膝を小さな手でなでなでされていた。


「きぃたん、たいたい?」

「ん?痛くないぞ?」


 あ、俺が膝を擦っているから痛がってると勘違いしたのか。


「だいじょうぶ。もう、痛いのは治った。ありがとね」


 痛くないけど立ち上がって元気に飛んでみせた。幼児らはやってやったぞ感満載の満足気な顔をした。
 ふと、膝を見ると、スウェットの穴が小さくなった気がする。回復スキルを引き続き行いたいがここでは無理だ。誤解されるからな。


 俺は手を振って子供らと別れて仏間に向かい声をかけて上がり込む。


「すみません、押入れ借りまーす」


 朝イチで押入れの中身は出したので今は空いているはず。1番隅っこの押入れに入り、膝を抱える。あー落ち着く。
 暗闇の中手探りで膝の穴を見つけてさする。


「回復、回復、回復、回復…………」


さすさす、ぶつぶつ、さすさす、ぶつぶつ

 お、おおぉお?見えない方がスキルの効きが良くないか?触った感じで穴が小さくなってるのがわかる。

 そのまま続けると、膝(スウェット)がスルンとなった。
 押入れの襖を開いて膝を確認するとスウェットの穴が塞がってた!


 おおおぅ、成功だ。回復スキル、役にたつ。

 左膝の穴も塞ぐ。擦れて穴が開きそうな尻の部分もやった。地面で擦れて破れていた裾も、袖も綺麗になった。

 パンツ一丁で押入れから半身を出してスウェットの状態を確認する。

 破れや擦り切れが綺麗に治った。と言うか治した部分の生地が綺麗で他の薄汚れた部分が目立つ。洗ってはいるのだが汚れは完璧には落ちていない。

 畳んで重ねてその上に手を乗せて唱える。イメージはばい菌や汚れバイバイだ。
 5分くらいその体勢で唱えているとなんか布の手触りが変わった気がして目を開けた。

 いやだ、これ、新品やん。俺(のスキル)、最強?

 スキルはまだ弱だ。しかし経験値が9.7765まで上がった。
石ころを回復合体させるより、経験値良くない?他に、他に回復する服ないかな。
 と、自分が履いているパンツに目がいった。

 この世界で唯一の俺パン(俺のパンツ)。自分の部屋が転移してこなかったので着替えはない。当然下着もその時に履いていたこれだけだ。
 貴重なパンツで、こまめに洗濯はして洗濯中はノーパンだった。
 流石に押入れから出て来た曾祖父さんだかだれだかのふんどしは履きらくなかった。


 急いで襖を閉めてパンツを脱ぎ、スウェットを着る(ノーパンで)。

 そして押入れから出て猛ダッシュで遺跡内の中を流れる川の洗濯場まで走った。
 そしてジャブジャブとパンツを洗い、絞ったそれを持って仏間までダッシュ、押入れに戻った。


 たった1枚を履き続け、洗い続け、かなりよれて弱ってきている俺パン。
 俺はそいつに優しく回復をかけた。かけ続けた。


 出来たぁ!!!!
 俺の新品パンツ。ふははははは。


 押入れの襖が突然バンっ!と開けられた!

 兄貴だ。誰かが兄貴を呼んできた。


「どうした! 清見、大丈夫か? しっかりしろ! お前、今日はここで休ませてもらえ。作業もしなくていい。うん、疲れたんだ。大丈夫だぞ? 俺も今日はこのまま清見についてていいと言われたから。裕理も今連れにいってもらってる」

「橘さん、布団敷きました」

「あ、キッチンでお粥作ってもらいますね」

「病院に連絡したら、歩けるようなら連れてきてほしいって。清見さん、歩けそうですか?」


 えっ、えっ?なんかおおごとになってる?何で?

 兄貴に布団へ引き摺られていた時に鮎川さんが裕理を連れてきた。
 鮎川さんは俺に裕理を手渡し(いや、裕理は兄貴の子だぞ?)、不審そうな表情で俺を見た。俺を、いや、俺の身体を上に下にと視線を動かす。


「清見くん? それ、どうしたの?」


 あ、気がつきました?俺のNEWスウェットに。(どやぁ)


「それ、いつものスウェットよね? 何で真新しくなってるの?」


 その言葉に室内に居た他のママさんらも寄ってくる。俺に渡した裕理を引き剥がして兄貴へと渡し、俺のスウェットを引っ張ったりめくったりしている。
 きゃぁ、助けて。えっちぃ。



 スキルの話を俺からひととおり聞いた鮎川さんと他のママさんに両腕を掴まれて無理矢理布団から立たされた。


「ちょっと清見くんをお借りしますね」


 ママさんのひとりが兄貴にそう言うと、ポカンとした兄貴をそこに置いて俺はキッチンへと拉致された。
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