俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香

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63話  こんな使い道が!

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 ----------(カオ視点)----------

 海に出た俺はスワンボートを漕ぎながら、時々流れて来る船をアイテムボックスに収納していた。
 大丈夫だ。ちゃんと左手側に陸地があるのはチェックしている。まあ、大海原に出たとしてもテレポートで戻れるから心配はしていない。

 ただ、陸地と違い、収納出来る物が少ないんだよなぁ。そろそろ戻るかと思った時、遠くにフェリーを見つけた。


「よしっ、あれを回収したら陸に戻ろう」


 俺はフェリーに向かってスワンを思いっきり漕いだ。

 近づくとかなり大きいフェリーだった。津波でこんなとこまで流されてきたのか。
 アイテムボックスに収納するには触れないとならない。持っていた杖で突ける距離まで近づいた。

 スワンから上半身を出して杖を持った腕を伸ばした。
 コツンと杖で叩いて「収納」と唱えたが、入らない。


「あれ? 杖、届いて無かったか? 音がした気もしたが……」


コツン、コツン、

「んん? どうした? 収納出来ん。まさか、ここでアイテムボックスの限界が来たのか! てか、アイテムボックスって限界あったのか。あまりに入るから、底なしと思いかけてたぞ?」


 ぶつぶつ言いながら収納を諦めて戻ろうとした時、視界の隅に何か動く物が映った気がした。

 フェリーの壁に沿って視線を上へと上げていくと、こちらを覗いていた少年と目があった。


 えっ、人が乗ってたんだ?
 もしかしてこのフェリーは豪華客船で海外から日本に戻る途中だったのか!そこであれに巻き込まれたんだな。

 とりあえずは挨拶だな。うん。


「こんにちはぁ」


 少年は突然、何か叫びながら逃げてしまった。どーゆーこった。不審者と思われたかな。
 せっかく、もし暇ならスワンに乗せてこの辺を回ってあげようとおもったのに。

 帰ろうかと思っていた時、大勢の大人がやってきてこちらをのぞいた。


「おい、あんた、大丈夫かっ」
「遭難者かぁっ」
「君はどこから来たんだ」
「兎に角上にあげよう」
「けどもう食料はないぞっ、それよりアレで陸まで行けないか?」


 同時に話しかけられても……、うん。こんな時はやはり挨拶だ。


「こんにちは。皆さんはご無事ですか? どちらから?」

「頼むっ、それを貸してほしい!」
「陸まで誰が行く?」
「待った、あそこらは離岸流が激しい。救命ボートもひっくり返ったじゃないか!こんな小さいのだとひとたまりもない!」
「だったら、離岸流を避けた場所に行けばいい」
「ピストン輸送で行けるんじゃないかっ!」


 上で揉めていた。困った。帰りたい。
 ため息を吐きながら大人達から目を逸らすと、さっきの少年がこっちに手を振っていたので、振り返した。
 少年の真下へとスワンを漕ぐ。


「おじさん、どっから来たの? おじさんも遭難したの?」

「こんちは、おじさんは遭難じゃないぞ? ちょっとした迷子だ」

「迷子?海で? それを遭難って言うんだよ?」

「あれ?そうか。じゃあ、俺は遭難だ。坊主は何でここに居るんだ?坊主も遭難か?」

「そう。名古屋から親戚のおじさんちに行く途中だったんだけど、隕石で津波来て、船の燃料が無くなって遭難中なんだ」


 津波が来るのと燃料が無くなるのの繋がりがわからんが、遭難中なのは分かった。
 隕石落下の日から遭難しているってことは、食料とか厳しいんじゃないか?


「食いもんや水はあるんか?」

「無いのー。昨日から無い。お腹減ったぁ。だからごめんね、おじさんにあげられるの無いんだ」


 うわっ、めちゃくちゃ良い子だな。自分が腹減ってるのにこっちの心配か。こう言う子にはあげたくなる。
 俺は上から見えないようにコンビニのパンや水を出して適当な袋に詰めた。


「俺は大丈夫だ。食べ物はあるから坊主に渡したいが、どうやって渡すかぁ……何処かに上がれそうな場所……」


 うわっ、ビックリした。さっきまで騒いでいた大人達が無言でこっちを覗き込んでいた。
 そうだな、子供が空腹になるくらいだ、大人も食べてないよな。


 俺は大人…船員だろうか?なんかカッコいい(けどちょっとヨレタ)制服を着た人の誘導で船の横腹あたりから船に上がる事が出来た。(勿論食べ物と一緒にだ)

 周りを大人に囲まれたが、俺はそこから強引に抜け出して少年の元に寄っていき、袋を渡した。
 大喜びした少年は、すぐに食べると思いきや、袋を大人に渡していた。あのカッコいい制服を着たおっさんだ。

 近くで見ると制服はかなり汚れていた。俺より若干若い……あ、49の俺よりって事だが、その人は船長だそうだ。
 少年からパンが入った袋を渡された船長は、近くにいた者に子供や高齢者を集めるように指示していた。

 俺は断ってスワンへと一度戻って、段ボールを出してパンを詰めて持って上がった。勿論荷物を上げるのは手伝ってもらった。
 かなりの人数が残っていたが何とか行き渡った。


 船長達に陸の状況を聞かれたので、正直に話した。日本中、いや世界中が結構な被害を受けている事。
 島国である日本の沿岸は特に酷い状態である事。警察、消防、自衛隊の救助は厳しいそうな事も伝えた。


「どうしたら……いいんだ」
「船長……」
「しかしこのままでは……、陸がどんな状態でもここに居るよりはマシなはずです、ここには食料も無い、水ももう尽きる」
「そうだな、上陸一択だな。鹿野さん、お願いします。スワンボートをお貸し願えないでしょうか」

「あ、ええ、それはいいんですが、ここから近い浜は変な流れがあって陸に戻れんのですよ。俺もスワンで戻ろうとしたけど、浜が近づくと沖に飛ばされるんです。まるで、バーミューダトライアングル……」

「いえ、それは離岸流です」


 バッサリ。
 ……ああ、あれが、離岸流。聞いた事あるような?茨城県民の夏の海水浴場の悪魔、とか言われてたような?俺は海水浴行かないから知らんが。だってアラフィフが夏の砂浜でボッチは悲しすぎる。

 離岸流がどの辺りまで広がってるのか、どこで発生しているのかがわからない。
 あの辺り一帯を避けてここからスワンで進むのは結構かかるな。ひとりふたりを運ぶだけなら別に苦でないが、乗組員と乗客を合わせると百人くらい残っているそうだ。


「一回に4人としてもかなりかかるな」
「でもこのままここに居ても死ぬだけですよ」


 船をもっと陸に近づける事が出来れば、せめて船を離岸流がない穏やかそうな場所にまで移動出来れば……。

 スワンボートでこのデッカいフェリーを押すのは無理だよなぁ。一応聞いてみる。


「スワンボートで押せないですかね?大型客船を港から出すときに小さいタグボートで引いたりしますよね」


「ちょっとやってみますか?」


 え?出来るの?


 俺と船員ふたりがスワンボートへ乗り込んだ。船員ふたりは運転席と助手席で思いっきりペダルを漕いだが、フェリーはびくともしなかった。
 碇はあげてあるそうだが、足漕ぎのスワンとタグボートでは出力が段違いだそうだ。


 どうしよう、悩む。俺が魔法を使えば済むことだ。この人数ならエリアテレポートで3往復もすれば良い。
 実は茨城の拠点では近所に住む人達に力を見せたりしている。とは言えある程度の制限付きだ。

 カンさんちのご近所さんでも高齢の人と子供は受け入れが早い。不思議なモノ、神憑ってる、妖怪などを、疑わずに受け入れるのは老人と子供だった、

 逆に20代から50代は自分の経験、目で見て触れるモノしか信じない。こちらが力を示すと奇異の目で見られた。
 なのでタウさんらと話し合い、『見せる相手』を選んでいた。

 今、この船にいるのは『見せない』年代が多い。
 どうする、タウさんに相談するか?いや、少しは自分で考えないとな。


 魔法……、皆に見えない場所で放つ事は可能だが、イマイチ役に立つような物がない。

 サモンはどうだ?サモンに船を押してもらえば……。
 だが海系の生き物のサモンなど持っていない。ライカンスロープ、泳げるか?狼男は森系だよな?仮に泳げたとしてもこのデカイフェリーを引いて泳ぐのは無理だ。


 ううむ、ううむ………、あ。

 俺、風エルフだった。エレメント持ってた、風の大精霊。

 ゲームで『エレメント』はエルフ専用のサモンモンスターのようなものだった。属性によって異なるが俺は『風属性』だ。風のエレメントを持っている。

 現実でエレメントを召喚するのは初めてだ。カオのままでも大丈夫だと思うが念のため、ステータス画面で名前のチェンジをした。エルフキャラのカオリーンだ。

 そして召喚を唱える。

 宙に浮く透き通るような白い精霊。
ゲームではレベル15で初級、30で中級、45で上級のエレメントレベルアップする。俺のエルフのレベルは50を超えていたはずなので、上級のエレメントが召喚された。


 フェリーに乗ってる人達は、中で会議中だった。今この船尾には俺しかない。
 やるなら今のうちだ。


「風の大精霊よ、この船を動かせるか?」

『簡単な事』


 大精霊の口は開いていないのに、返事がどこかから聞こえた。


「では、風を起こし、この船を運んでくれ。陸沿いに


『是』


 船が動き出した。初めはゆっくり、そして徐々にスピードを増す。波を掻き分けるように、大きなフェリーが高速で進む。


「凄い凄い凄い!」


 直ぐ近くで子供の声がして振り返ると、あの少年が居た。しまった、誰も居ないと油断した。
 

「凄いねぇ、風の大精霊? おじさん、精霊使いなの? 白鳥に乗ってたし只者じゃないと思ってたんだ!」


 少年は嬉しそうに楽しそうに精霊と俺を交互に見つめていた。

 あぁ…………まぁ、いっか。
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