3 / 3
臆病な俺はそれでも君の笑顔が見たい
しおりを挟む※※※ 彼女視点 ※※※
「久しぶり、お兄ちゃん」
にっこり笑って言う。
ドアから入ってきた兄は目を見開いた。
「おまっ!探したんだぞ!何ヶ月もどこに行ってたんだ!」
「ずっと気になってた《綺麗な花》を見に?」
「ふざけてるのか?
出かける時は行き先と帰る時間を言えっていつも言ってるだろう!
何してた!」
「んー。《とある国》の王様のお手伝い?」
「、、、もっとマシな嘘はつけないのか?」
「本当だもん。褒めて貰ったし、《ご褒美》も貰ったもん」
「ハイハイ。本当のことを言う気はないんだな。
、、、とにかく。こっちは心配してたんだ。
たとえ護衛を連れて、にしても《出かけてくる》って伝言だけでいなくなるなよ」
「いつものことなのに」
「毎回心配してるんだ!
……俺だけじゃないぞ!きっとーー」
「ーー何?《あの人》が心配するとでも言う?
《あの人》が13女の心配するわけないでしょ。
同じママから生まれた《兄妹》でも《あの人》の唯一の息子のお兄ちゃんと私は違うんだよ」
「、、、、お前」
「あ、いいの、いいの。何とも思ってない。むしろありがたいよ。
なに不自由なくのびのびやらせてもらってるもん。
ーーそれより。隣国の王女様、この国に来たんでしょ?
どうなの?お兄ちゃん。婚姻の申し込み受けてもらえそう?」
「なっ、、何言ってんだ!そんな話はいいんだよ!
……愛する人との結婚がなくなって王女様は今、ものすごく傷ついていらっしゃるんだ。
そっとしておいてさしあげないと、、、」
「ふーん」
「だいたい、王女様の結婚がなくなったのも俺のせいなんだよ。
《隣国の王太子からの婚姻の申し込み》なんて。
、、、たとえ既に結婚が決まっていても断るべきではないと隣国の王は判断されたんだろう。
だがまさかあの、家族愛に溢れた隣国の王が政略を優先されるなんて。
、、、結婚を取りやめるなんて。
早々に王女様をこの国に送って来るなんて。
ああ、、俺はどうしたらいいんだ。王女様に顔向けできない!」
兄はこの世の終わりみたいな顔になっている。
「そうかなあ、、」
「どうしてこんなことになった。
俺は王女様が幸せならそれで良かったのに。
それが!
俺の気持ちを知ったら相手の《状況》も考えず婚姻を申し込んだ父上を恨んでーー。
、、いや。
、、俺のせいなんだよな。
忘れられなくて。父上が持ってくる《話》は全部断って、、、。
うじうじといつまでも王女様の絵姿が捨てられなかったから、、、」
「うんうん。それ見つかっちゃったんだよね。
そりゃそうでしょ。枕の下、引き出しの中。あとは額縁の裏だっけ。
誰でも見つけるよ。一番大事な物を隠しちゃいけない所だよね?」
「、、、なんで知ってるんだ」
「当たり前でしょう。何年、兄妹やってると思ってるの?」
兄は口をぱくぱくしている。
気付かれてないと思っていたのか。
私だけじゃない。
言ってやりたい。この部屋は勝手に綺麗になるんじゃない。
お掃除する《人》がいるんだよ。何故気付かないんだろう。
私はため息を吐いた。
「なあんだ。この宮に王女様がいるって聞いたから、お兄ちゃんもやるなあって思っていたのに」
「、、、王女様を王宮には置いておけないだろう。
王女様が何を言われるか、、」
「あ、なんだ。ここは避難所?」
「そうだよ。せめて静かに過ごしていただきたいんだ」
「うーん。想像はしてたけど。先は長そうだね。
王女様に、ろくに顔を見せてもいないんでしょ?」
「どの面下げて会えるんだ。俺は王女様の幸せを壊した男だぞ」
「毎日、花を届けているだけだとか。今日のは今、持ってるやつ?」
兄が持っている純白の花を見る。
茎のほっそりした、儚げな花は王女様を思い出させる。
兄はその花を慈しむようにそっと撫でた。
「せめてもの慰めになるかと、、。受け取ってはくださるし」
「……侍女を厳選してるとか」
「隣国から一緒に来られた侍女殿だけではご不便だろう。
だが王女様とも侍女殿とも気の合う者でないと」
「……隣国の王宮料理人を呼んだとか」
「食べ慣れた物の方が喉を通るだろう」
「……庭師も呼んだとか」
「窓から見えるのはお好みの庭の方が良いだろう」
「はー、、、噂知ってる?
王太子様は隣国の王女様を溺愛し囲っているって。
女性に入れ上げて将来大丈夫なのかって」
「、、、知ってる。良いんだよ、俺は何て言われても。
それよりその噂、王女様の耳に入れるなよ。
ーーたとえお前でも王女様を傷付けたら許さないぞ?」
「あー。やっぱりそれ言う。ハイハイ。わかりました」
私はドアに向かって歩き出した。
後ろから兄の声がする。
「……どこ行くんだ?」
「自分の宮に帰るんだよ。
どうなったか知りたかったけど、年単位で待たなきゃダメそうだしね」
「何言ってるんだ。この宮に部屋があるだろう。そこを使え」
「えー。やめとく。
ばったり会っちゃったらお兄ちゃんに憎まれそうだし」
「は?」
「それにここじゃあ抜け出すの苦労するからね」
「ーーおまっ!またそんなことを!」
「あはは、じゃあねー」
「護衛は連れて行け!
行き先と帰る時間だけは言え!」
※※※ お兄ちゃん視点 ※※※
妹はひらひら手を振って出ていった。
全く心配をかけるやつだ。
すっかり町娘のようになっている。
……護衛と剣の訓練もしてると聞いたぞ。
何してるんだ、あいつは。
、、、いいか。あいつはあいつらしくすると良い。
《あれ》なら父上も政略に使おうとはなさるまい。
もう少し。
私が王になるまで放っておこう、、。
王家に生まれたのだ。
政略も役目であると言える。
だが父上は相手を選ばない。
次代の王になる王太子とは扱いが違う。
王女は敵国の老王にだろうが、名も知らぬ未開の国の幼王にだろうが送り込む方だ。
……隣国の王は父上のような方ではない。
母を亡くした俺と妹を労ってくださった方だ。
隣国の王の、愛妾の一人でしかなかった母の死を悼んでくださった。
そんな方が何故、ご自分の王女様を、、、。
俺は頭を抱えた。
隣国の王の労りに思わず涙をこぼした俺にハンカチを差し出した王女様。
ただ一度のふれあいが忘れられなかった。
その俺が、あの方の幸せを壊したーーー
どれほど謝罪しようが許されるものではない。
しかもその謝罪すら俺はまともに出来ていない。
あの方がどんな顔をされているのか見るのが怖くて
優しいあの方に俺を罵らせてしまうことが怖くて
会えもしないのだから。
今日は庭師が教えてくれたあの方の好きな花にした。
届けて欲しいと侍女に頼む。
臆病な俺にできることはこのくらいしかない。
それでも
何年かかってもいい。
俺に向けてじゃなくていい。
ただ、笑って欲しいんだーーーーー
111
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
それでも好きだった。
下菊みこと
恋愛
諦めたはずなのに、少し情が残ってたお話。
主人公は婚約者と上手くいっていない。いつも彼の幼馴染が邪魔をしてくる。主人公は、婚約解消を決意する。しかしその後元婚約者となった彼から手紙が来て、さらにメイドから彼のその後を聞いてしまった。その時に感じた思いとは。
小説家になろう様でも投稿しています。
メリンダは見ている [完]
風龍佳乃
恋愛
侯爵令嬢のメリンダは
冷静沈着という言葉が似合う女性だ。
メリンダが見つめているのは
元婚約者であるアレンだ。
婚約関係にありながらも
愛された記憶はなかった
メリンダ自身もアレンを愛していたか?
と問われれば答えはNoだろう。
けれど元婚約者として
アレンの幸せを
願っている。
そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。
しげむろ ゆうき
恋愛
男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない
そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった
全五話
※ホラー無し
真実の愛がどうなろうと関係ありません。
希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令息サディアスはメイドのリディと恋に落ちた。
婚約者であった伯爵令嬢フェルネは無残にも婚約を解消されてしまう。
「僕はリディと真実の愛を貫く。誰にも邪魔はさせない!」
サディアスの両親エヴァンズ伯爵夫妻は激怒し、息子を勘当、追放する。
それもそのはずで、フェルネは王家の血を引く名門貴族パートランド伯爵家の一人娘だった。
サディアスからの一方的な婚約解消は決して許されない裏切りだったのだ。
一ヶ月後、愛を信じないフェルネに新たな求婚者が現れる。
若きバラクロフ侯爵レジナルド。
「あら、あなたも真実の愛を実らせようって仰いますの?」
フェルネの曾祖母シャーリンとレジナルドの祖父アルフォンス卿には悲恋の歴史がある。
「子孫の我々が結婚しようと関係ない。聡明な妻が欲しいだけだ」
互いに塩対応だったはずが、気づくとクーデレ夫婦になっていたフェルネとレジナルド。
その頃、真実の愛を貫いたはずのサディアスは……
(予定より長くなってしまった為、完結に伴い短編→長編に変更しました)
【書籍化】番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました
降魔 鬼灯
恋愛
コミカライズ化決定しました。
ユリアンナは王太子ルードヴィッヒの婚約者。
幼い頃は仲良しの2人だったのに、最近では全く会話がない。
月一度の砂時計で時間を計られた義務の様なお茶会もルードヴィッヒはこちらを睨みつけるだけで、なんの会話もない。
お茶会が終わったあとに義務的に届く手紙や花束。義務的に届くドレスやアクセサリー。
しまいには「ずっと番と一緒にいたい」なんて言葉も聞いてしまって。
よし分かった、もう無理、婚約破棄しよう!
誤解から婚約破棄を申し出て自制していた番を怒らせ、執着溺愛のブーメランを食らうユリアンナの運命は?
全十話。一日2回更新 完結済
コミカライズ化に伴いタイトルを『憂鬱なお茶会〜殿下、お茶会を止めて番探しをされては?え?義務?彼女は自分が殿下の番であることを知らない。溺愛まであと半年〜』から『番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました』に変更しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
朽木白哉 様
お読みいただき、感想まで。ありがとうございます。
相手が自分にベタ惚れだと、どこまでもぞんざいな扱いをする。
ちょうどそんな人の話を耳にして書いてみた作品です。
相手の方が地位が高くても(いや、相手の地位が高いからこそ?)
自分がとてつもなく偉くなったと思うんじゃないかなと。
で、屑男ができました。
「顔合わせ」やり返されたとは気づいていないでしょうね。
路頭に迷っていただきたいと思います。