私の幸せは貴方が側にいないこと【第二章まで完結済】

ちくわぶ(まるどらむぎ)

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第二章

23 暴走 ※お婆さん(占い師)side

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「もちろん《番を殺した犯人》などいないように工夫しましたよ。
恨む相手がいれば、私のように生きる理由ができてしまう。
私の《竜気》を覚えられ、《番》の死に不審を抱かれても困るのでね。
慎重にやりましたよ。
死因のわからない突然死。
病死。単独の事故死」

「―――――なん……だって……?」

鳥肌がたった。
アグストゥはにやりと笑った。

「なに、人は脆い。案外簡単でしたよ。
それに竜には《竜の嘆き》がある。
あの《番》が亡くなっても、あの男なら――竜なら《竜の嘆き》のせいだと思うでしょう。
あの《番》自身ですらね。
誰も裏に私がいるとは思わない。
あの男は嘆くだけだ。
自分が大切にしなかったから《番》は嘆き、不幸を呼び死んだのだ、とね。
最高でしょう?
《番》に出会った幸福を、すぐに絶望へと一変させる。
―――最高の復讐を遂げてきた!」

「お前は……なんてことを……っ」

「何度生まれ変わろうと!
人になろうと、あの男を許してなどやれるものか!
しつこく人間に生まれ変わってくれて嬉しかったよ。
最初は《番》との絆が薄いようなのでどうかと思ったが。
それでも《番》を失ったあの男はいつも《竜の嘆き》で不幸を呼び自滅した。
はは、最高だ。
何度でも絶望させてやれた!
なのに今回は貴女という邪魔が入った!」

アグストゥは私を睨みつけ、そして声の限り叫んだ。

「どうして私の邪魔をするのです!
サヤとか言うあの女――今世のあの男の《番》にはもうほとんど《竜気》はない!
今世、殺せば来世のあの女は――あの男の《番》は完全に人になる!
魂は《番》でも竜でなくなるから《竜気》もなくなる!
そんな《番》を探し出せるはずがない!
あの男は永遠に見つかるはずのない《番》を探し彷徨うのだ。
今回が最後の復讐だった!
やり遂げられるはずだったのに!
―――私たちの復讐はそれで終わるはずだったのに―――!がっ!」

アグストゥをクルスが蹴った。
地面に寝ていたアグストゥは口から血を流し、そのまま転がり悶えている。

「クルス!よせ!―――ぐっ!」

ロウが慌ててクルスを後ろから羽交締めにしたが、クルスはなんなくロウを打ち倒した。

「痛って」

倒されたロウは打たれた腹を押さえ丸くなっている。
私はアグストゥにかけた縄と同じ縄を飛ばしてクルスを捕縛した。

「クルス!お止め!」

「……お前がサヤを……」

だがクルスは構うことなく、転がっているアグストゥのところへ向かった。
……見れば……泣いている。

「サヤが何をした!35人の……サヤがっ」

「―――35人?」

クルスの叫びを聞いたロウが目を見開いた。

「クルス!」

「許さないっ!許さない!許さない―――――っ!」

クルスは力で縄を解こうとしている。
私が編んだ捕縛用の縄だ。解ける竜はいない。

だが――クルスの腕に縄が食い込んだのを見て、私は叫んだ。

「お止めクルスっ!
そのまま竜形になったら身体が粉々に吹っ飛んでしまう!
―――クルス!」

だがクルスは止まろうとしない。
私は仕方なく、風を思い切りクルスにぶつけた。


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