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ついで姫の決断
「セレリア。君は自分が何をしたか、わかっているのか?」
「え?」
突然の、婚約者のデヴィッド様の言葉は意味がわからなかった。
この国に来て三ヶ月が過ぎていた。
応接室に来るようにと言われて、ようやく私と話をしてくださる気になられたのだと思ったのだけれど、違ったのだろうか。
応接室にはデヴィッド様だけでなくご両親と妹のネルダさんもいて、四人とも私を睨むように見ていた。
私は何かしてしまったのだろうか。
でもいくら考えても、何を責められているのか理由がわからなかった。
「……あの。何のことでしょうか……」
思わず聞き返してしまった。
でもそれが皆さんを怒らせてしまったようだ。
「とぼける気よ」とネルダさんが言い、ご両親は頷いた。
デヴィッド様は苛々した様子で私に言った。
「王宮で男性と抱き合っていたというのは本当か?」
「男性……?ああ。あの、それは――」
「――やはり本当なんだな」
ネルダさんが嬉々としてデヴィッド様の腕に抱きついた。
「だから言ったでしょう?私は見たのよ!この目ではっきりとね!」
「ネルダさんが?」
「ええ、そうよ!観念するのね!」
「観念?」
何を言われているのかわからなかった。
首を傾げているとデヴィッド様に呆れたような視線を向けられた。
「俺たちの婚約は、我が国と君の国、国同士の繋がりのためだ。
それを不貞とは。君は自分の立場をわかっているのか?」
私は息を呑んだ。
「不貞?!何を言われるのですか!私は不貞などしておりません!」
「男と抱き合っていたくせに、言い逃れができると思っているのか?
相手はレシスティシア王女の護衛騎士でケンドリックとかいう男だそうだな。
そこまでわかっているんだぞ?」
「そうですが!彼は――」
「――言い訳をするな!」
「―――――」
「君もいい歳だ。今まで恋をしたことはあっただろう。
それについてどうこう言う気はない。
だが今や、君には俺という婚約者がいるんだぞ?
なのに他の男と。しかも王宮で抱き合うなど。
俺は黙っていることはできない。
この国の国王陛下と俺の親友である王太子殿下に正直に訴えさせてもらう。
その結果、俺たちの婚約がどうなるかわからないが、いいな?」
目の前が真っ暗になった。
―――ああ、そうなの。
痛いほどわかった。
私の声は少しも貴方に届かないのね。
目を伏せた。
もうそうするしかなかったから。
「……構いません」と言うとデヴィッド様はただ「そうか」と返された。
「構いませんが。私は決して不貞をしてなどいません。
それだけは覚えておいてください」
デヴィッド様には届かない私の声だけれど、妹のネルダさんには届いたようだ。
ネルダさんは笑った。
「ああ、わかったわ。貴女の国では王宮で抱き合うことを《不貞》って言わないのね。
奔放なお国ですこと。さぞ不貞にご理解のある国王陛下なんでしょうね。
残念だけどこの国ではその理屈は通じませんことよ?お姫様?」
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