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ついで姫の婚約者デヴィッドside2
「……デヴィッド。お前は自分が何をしたか、わかっているのか?」
「え?」
この国の王太子でもあり、親友でもあるハワードの言葉は意味がわからなかった。
話があるから部屋に来いと言うから来た。
ちょうどいい。あいつの不貞をぶちまけてやろう。
そう思っていたら、先に言われたのがそれだ。
「いきなりなんだよ。何のことだ?」
聞き返すのは当たり前のことだろう。
だがハワードは怒りを滲ませ俺に言った。
「セレリア嬢を追い出したと言うのは本当か?」
「追い出した。なんだ。そのことか」
「――本当なんだな。どういうつもりだ!」
今度は怒鳴られた。
――ああ。ハワードはあいつのしたことをまだ知らないんだから当然か。
俺はハワードに説明することにした。
「まず俺が追い出したわけじゃない。あいつが《出て行く》と言って出て行ったんだ。
そしてそれには正当な理由がある。安心しろ」
ハワードは訝しげな目で俺を見た。
「……理由?」
「不貞してたんだよ、あいつ」
「不貞?!セレリア嬢が?嘘だろ?」
「嘘じゃない。妹が見たんだよ。
この王宮の中であいつが男と熱く抱き合っていたのをな。
全く。この国も馬鹿にされたものだよ。あんな女を政略で寄越されるとは」
「お前の妹?王宮に何をしに来ていたんだ?」
「知らないよ。あいつの不貞と関係ないだろう」
「妹が。おい。……妹だけか?
妹の他に見たという者は?ちゃんと真実かどうかは確かめたんだろうな」
何を言うのかと思ったら。
疑うのか?親友の俺を。面白くないな。
俺はふん、と息を吐いた。
「他の者に確かめる必要はない。
あいつが男と抱き合っていたことを認めたんだ」
「認めた?」
「ああ。なのに不貞は否定してた。どんな理屈なんだか」
「……じゃあ抱き合っていたという相手に確認をしよう。
相手は?妹は見たんだろう?」
「勿論だ。ケンドリック。お前の婚約者の護衛騎士サマだ。ふざけてるよな。
国にいる時からの恋人だったんじゃないのか?」
ハワードは顔色を変えた。
「……おい。冗談だろ……」
「冗談なものか。二人が抱き合っているのを俺の妹が――」
「――ふざけるな!ケンドリック殿はセレリア嬢の実の兄だぞ?!」
「は?―――兄?」
「そうだよ!何が不貞だ!
お前は。男と抱き合っていたという妹の話だけでセレリア嬢を追い出したのか!
不貞を否定したセレリア嬢の話を聞きもせずに!
国同士で結ばれた婚約の相手を!」
「いや!しかし《抱き合っていた》と認めたんだぞ?!だから――」
「――言い訳をするな!」
「―――――」
「だいたい、何故お前がケンドリック殿がセレリア嬢の兄だと知らない。
いずれ夫婦となる人のことだ。セレリア嬢の釣書は渡してあっただろう」
「…………」
見ていなかった。
婚約を屈辱だと感じていたから、あいつの釣書など見る気もなかった。
同じ思いだった母が破り捨てたとは言えなかった。
「そうでなくともセレリア嬢の話を聞いていたら、すぐに誤解だと知れただろう。
なのにお前は……何故、ちゃんとセレリア嬢の話を聞かなかった」
「…………」
聞きたくなかった。
これで婚約はあいつの有責で解消されると喜んだからだとは言えなかった。
「お前幾つだ、デヴィッド。赤子か?
なんてことをしてくれたんだ。
国同士の繋がりのために結ばれた婚約者を何だと思っている!
セレリア嬢は今、私の婚約者――レシスティシア王女のところにいる。
当然お前がセレリア嬢にした仕打ちは王女の耳に入ったな。
レシスティシア王女は自国の父君――国王陛下に訴えるだろう。
その結果、どうなるか。
国力は圧倒的にあちらが上だ。
お前や私だけではない!
この国の存続すら危うくなるかもしれないんだぞ?!」
目の前が真っ暗になった。
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