香る八重桜

柴山みくり

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香る八重桜

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 時刻は0時を過ぎた頃。夜道を歩く、男が一人。齢は20歳を過ぎたほど。肩まで伸びた黒髪を横に結った、深緑の着物を纏う優男。何かを探すかのように、人気のない路地道をキョロキョロ見回し歩いている。
 そんな男に近づく影がひとつ。赤い着物が闇夜に映える、若い女。
 「ちょいとそこのお方。」
    「なんでしょうか?」
 シンとした夜道に響く二つの声。
 「こんな時分に何をしてるんだい?」
 「村の方からとある噂を聞きまして……。夜になると出るという、人を喰らう化け物をこの目で見たいと思ったのです」
 「三人が犠牲になったやつかい。そんな化け物を見に来るなんて、酔狂な人もいたもんだ」
 ケタケタと、女が笑う。
 「お嬢さんはなぜここに?」
 「……用事があるんだよ」
 そういって、女は男に歩み寄る。
 「用事とは?」
 「お前を喰うことだ!」
 突如女は豹変し、化け物となり男へ襲いかかる。
 しかし、男は驚くそぶりも見せず、ただ一言、小さく「ヤエ」と呟いた。
 『はいよ!』
 どこからか聞こえた声と共に、男の後ろから緑髪の男が現れた。額から角を一本生やした、人に非ざるその男は、手に持つ刀で化け物に斬りかかる。
 「ギャァァァァ!」
 切り伏せられた化け物は悲鳴と共に消え去った。 
 再び静寂が戻った路地道で、黒髪の男はぽつりと言った。
 「これで仕事は終わりですね」
 
 
 「馨さま、ありがとうございました。これで安心して夜を過ごせます」
 「いえいえ。また何かありましたらこちらの紙に書いてある住所に文を送ってください。」
 翌朝、仕事を完了したと依頼主の村長に伝え、黒髪の男――馨は村を後にした。
 村を出れば次の村までは木々ばかり。遠くの川のせせらぎまで聞こえてきそうな道中に、ふと声が降りてくる。
 『退治屋馨、今回も大成功やな』
 声の主は緑髪の男――弥栄(ヤエ)である。ふわふわと空中に浮きながら、馨のあとをついてくる。
 「茶化さないでください。退治屋なんて名乗った覚えはありませんよ」
 『やってることは退治屋やろ?馨が化け物引き付けて、俺が斬る。退治屋って言わずになんていうんや?』
 「私はただ自分の務めを果たしているだけです。それに名前なんてありませんよ」
 弥栄が話しかけるのは決まって周囲に人がいないとき。何故ならば――。
 「お兄さん、一人?ね、山菜運ぶの手伝ってくれない?私、この先で茶屋をやっててさ、お団子おまけするから」
 弥栄は馨以外には見えないからである。
 「わかりました。手伝いましょう」
 人がいるときは声をかけない。それは、二人の暗黙のルールとなっていた。
 
 「はー、運んでくれて助かったよ。これ、お礼のお団子ね」
 場所は移り、先程の娘――桜子の勤める茶屋。出された団子を食べながら、馨は桜子に話しかける。
 「最近、何か変わったことはありませんか?」
 「え?変わったこと?」
 異変があれば、それは化け物が関係している可能性がある。人が行き交う茶屋や宿屋ではその手の情報を入手しやすい。
 「そうだねぇ……。お兄さんが来た方向に村があって、そこでは人を喰らう化け物が出たとか」
 「その噂は私も聞きました。……他には何かありませんか?」
 「あぁ、そうだ。最近夜になるとこの近くで変な音がするんだよね。ズシンズシンって、重たいものが歩き回ってるような。まさか向こうの村の化け物がこっちに来た……なんて話じゃないといいけどねぇ」
 「そうですか。……桜子さん、ここは宿屋も兼ねていますよね。今日の部屋は空いていますか?」
 「突然どうしたのさ?部屋は空いてるけど……。こんな話を聞いて泊まろうなんてお兄さんこそ変わった人じゃないか」
 「少し気になることがありますので」
 「ふぅん……。ってまさか、お兄さん最近噂の退治屋さんかい?そうならそうと言ってよ!いくらでも泊まっていっていいからさ、この不可思議な現象をどうにかしておくれよ」
 桜子は言うが早いと馨を部屋へと連れていった。
 『やーっぱり、退治屋やん』
 弥栄の呟きがシンと残った。
 
 化け物が出るのは日が暮れてからのため、それまでは案内された部屋で時間を潰す。
 『なぁ馨……桜子の話って本当に化け物かなぁ。熊ってこともあらへん?熊やったら俺、斬れへんぞ』
 不安そうに馨に声をかける弥栄。
 「大丈夫でしょう。窓から茶屋の様子を見ていますが、盛況ですし……。熊は臆病なのでこう活気があれば近づきませんよ」
 『そうなんかなぁ』
 「万が一熊だったら全力で逃げないといけませんね」
 クスクス笑いながら馨は答える。
 それでも不安そうに瞳を揺らす弥栄の頭を撫でてやりたいが、それはできない。弥栄には触れないからである。
 弥栄はこの世の者ではない。そのため、この世の者である馨は触ることができない。また、弥栄も馨に接触することはできないのである。一方で、弥栄は同じくこの世の者に非ざる化け物には触ることができ、斬りつけることも可能となる。
 『馨に何かあったらまた俺ひとりぼっちになるやろ。笑い事ちゃうわ』
 笑う馨にツンとそっぽを向いてしまった弥栄。どうしたら機嫌を直してくれるか、馨が考えていると――。
 「お兄さん、夕食の準備ができたよ」
 桜子が夕食の膳を持って部屋に入ってきた。
 『なんや、えらい変わった天ぷらやなぁ。渦巻いたのとか、花や木みたいなのとか……お、ご飯も色々入ってるんやな。オモロいなぁ』
 先程までの不機嫌はどこへやら。運ばれてきた料理に興味を示し、目を輝かせている。
 「この天ぷらは先程運んだ山菜ですか?それにご飯も――」
 「そうだよ。天ぷらは青こごみにふきのとう、こしあぶら。ご飯は山菜の炊き込みご飯なんだよ。それにおひたしに煮物、お汁によもぎもち。どれも旬の山菜を使ってるからおいしいよ」
 「ありがとうございます。いただきます」
 「はいはい。ごゆっくり。夜はよろしくお願いしますね」
 桜子はそういうとそそくさと部屋を出ていった。
 『なぁなぁ、その天ぷらって″オイシイ″のか?』
 二人になった途端、弥栄が話しかけてくる。
 「そうですね……味に癖があるので好みはわかれるかもしれません。私は好きですよ」
 『へぇ。それも″オイシイ″のか。どんなんなんやろうなぁ、″オイシイ″って』
 じぃっと天ぷらを見つめながら弥栄が呟く。
 「弥栄は食事をとりませんものね」
 『せやなぁ。必要やなかったからな。人間は寝るだけやと力が回復しないって聞いたときは面倒やと思ったけど、食うってオモロそうやなぁ』
 「私だけ食べてしまってなんだか申し訳ないですね」
 『あっ気にせんで!俺はいろんな食べもん見れるだけでも新鮮でオモロいからな。冷めたら″マズイ″んやろ?さっさと食っちゃった方がええやろ』
 「ですね。」
 相も変わらずじっと料理を見つめる弥栄には笑みをこぼしながら、料理に箸をつける。
 
 食事も終わりに差し掛かった頃、弥栄からふぁ……と大きなあくびが出た。
 『んー……夜に備えて少し寝てこようかな』
 弥栄の場合、体力の回復は眠りに一存しているため、人間よりも睡眠が必要である。昨晩も、化け物を退治してから睡眠をとったが、まだ寝足りないのだろう。眠そうに目を擦っている。
 「何か異変があったら声をかけますから、寝てていいですよ」
 『じゃあそうするわ。おやすみー』
 もう一度、小さくあくびをして弥栄は姿を消した。眠るときなど、弥栄はたまにいなくなる。本来いるべき世界――″あの世″とでもいうのだろうか――に行っているのかもしれない。
 「弥栄がいなくなると、なんだか部屋が広く感じますね」
 馨の呟きは今までより大きく聞こえた気がした。
 
 異変が生じたのは夜9時を過ぎた頃。
 桜子の言っていた通り、ズシンズシンという音が聞こえる。
 「弥栄、起きてください。現れたかもしれません」
 空中に向かって声をかける。
 『んぁー?もうそないな時間か?』
 ふわりと弥栄が現れる。まだ寝ぼけ眼だ。
 「ほら、目を覚まして。行きますよ」
 『はいよー』
 二人は足早に宿を出て、音の方へと走っていった。
 
 徐々に大きくなる音。
 「あの繁みの向こうにいそうですね」
 『馨、気を付けるんやで』
 刀を用意しつつ、弥栄が言う。
 「弥栄もね」
 ――ガサッ
 繁みを抜けた先では黒い、大きな塊が蠢いていた。
 「――当たりですね」
 『いままで見てきた中で一番でかいんとちゃうか?』
 化け物は馨たちに気がついたのか、2間1尺ほどある巨体を揺らして迫ってきた。
 『馨、下がってろ!』
 すかさず弥栄が前に立ち、刀でもって応戦する。
 ――しかし。
 『うあっ!』
 化け物の体に刀ごと吹き飛ばされてしまう。
 「弥栄!」
 『大丈夫や!お前は自分の心配してろ!こいつの拳ひとつでもあたれば死んでしまうぞ!』
 弥栄はすぐさま体勢を立て直し、化け物に向かうが、その力に圧倒され、押されていく。
 ――このままでは弥栄が危ない。
 見かねた馨は意を決して、袂から本を取り出し、言葉を紡ぎ始めた。
 
 押されていた弥栄の刀が、化け物を押し戻し始めた。力がみなぎる感覚に、弥栄は驚く。
 ――この感じ……まさか!
 一刻も早く戦いを終わらせようと、溢れ出る力に任せ、刀を振り下ろした。
 『りゃぁぁぁぁぁぁ!』
 巨体が、真っ二つになった。
 
 
 ――どうやら倒せたようですね。
 訪れた静寂に馨は安堵した。その体は仰向けに投げ出されている。あの術を使うといつもこうなる。体力を消耗し、指ひとつ動かせなくなるのだ。
 『――馨のアホ!』
 弥栄が飛んできた。その瞳は潤んでいるようだ。
 『俺の力を解放させるのって、お前にすっごい負担がかかるんやろ?そんなことせんでも俺、勝てたのに……』
 「すみません。つい心配になってしまって、うっかり術を使ってしまいました」
 『馨のアホ、バカ、タコ、心配性』
 「あはは。ひどい言われようですね」
 『……ごめんなぁ』
 こらえきれなかった雫がひとつ、ふたつ、瞳からこぼれ落ちる。心配性なのはお互い様と、馨は一人思う。
 「しばらくしたら回復しますから、大丈夫ですよ。それに、こうやって寝転んだら新しい発見もありましたし」
 発見、という言葉にきょとりと馨を見つめる弥栄。
 「弥栄も仰向けになってごらんなさい。……すごいですよ」
 言われるがまま、馨のとなりにごろりと転がる。すると――。
 『空が……キラキラしてる』
 「このキラキラしているのは″星″っていうんですよ」
 雲ひとつない夜空一面に広がった星々。それぞれが己の存在を主張している。
 『″星″かぁ……。キレイやんなぁ』
 「思えば私たち、夜は化け物退治が忙しくて空を見上げることがあまりありませんでしたね」
 『俺らが戦ってる頭上ではこんなキレイな景色が広がってたんやなぁ』
 うっとりと夜空を眺める弥栄。ちらりと横目で見たその顔には先程までの涙はないようだ。コロコロと表情を変える相棒に、馨は苦笑をこぼす。
 そして、視線を夜空に戻し、少し動くようになった指で星をさす。
 「あそこ……柄杓のように連なる7つの星がわかりますか?あの星たちは北斗七星と言うんですよ」
 『ホクトシチセイ?』
 「えぇ。北斗七星は星空の案内役とも言われているんです」
 『案内役?』
 「北斗七星を起点にして、方角がわかるんですよ」
 『そうなん!?すごいなぁ。どうやったらわかるん?』
 「柄杓の注ぎ口から視線を下ろしていくと、よく光ってる星があるでしょう」
 『うんうん』
 馨の話に耳を傾けつつ、すっと星空を辿る指先を、弥栄は真剣に追っていく。
 「あの星は北極星と言うんです。この星が見える方向が北なんですよ」
 『へぇー!馨は何でも知ってるんやなぁ。なぁなぁ、他に星の話はないんか?』
 星にも負けないくらい、瞳を煌めかせて弥栄が訪ねる。
 「そうですね……では星座の話をしましょうか」
 『セイザ?座るのか?』
 「″星座″です。昔の人は星をさまざまなものに例えて、名前をつけたんですよ。たとえば先程の北斗七星もおおぐま座の一部で……」
 『へぇーあれがおおぐま座かぁ……。見えへんなぁ。あ、あっちのは何か名前があるんか?』
 「あれは――」
 違う星座の説明をする度にころころ表情を変え、子供のようにはしゃぐ相棒が退屈しないよう、馨は本で得た知識を総動員させた。
 
 
 「――さん、お兄さん!」
 体を揺さぶられる感覚に、意識が浮上した。目を開けると、そこには――。
 「……桜子さん」
 「どうして外で寝てるのさ?声かけても反応しないし、一瞬死んでるのかとびっくりしちゃったよ」
 ゆっくりと身を起こしつつ、昨日のことを思い出す。
 「あぁ――」
 昨日は結局、星の話をせがむ弥栄に付き合い、延々と話していくうちにそのまま眠ってしまったようだ。土の上で寝たからか、体が痛い。
 「桜子さんの言っていた、ズシンズシンという音の原因を探していたらうっかり眠ってしまいまして。もうあの音はしないと思いますよ」
 「お兄さん、すごいんだか間が抜けてるんだか……。普通うっかりで外で寝るかい?」
 桜子は呆れたように言う。その背中にはかごを背負っている。朝食用に食材を取りに来たのだろう。
 「でも、ありがとう!やっぱり物音がするって不気味だからね。助かったよ」
 「お役に立ててよかったです」
 にっこりと笑う桜子につられて馨も笑う。
 いつまでも地べたに座りっぱなしもいけないと、軽く土をほろって立ち上がる。宿に戻ると思ったのだろう。
 「お兄さん、宿の台所に水瓶があるからさ、使っていいよ。顔とか髪とか、洗いたいでしょ」
 「ありがとうございます。では使わせていただきますね」
 私は食材取りに行くから、という桜子と別れ、ひとり宿を目指す。
 『馨!』
 ふわりと弥栄が現れる。
 「弥栄。起きていたんですね。いないからてっきり寝ているのかと」
 『んー、ちょっと、特訓、みたいな?』
 「特訓?」
 『やって馨に負担かけたくないんやもん』
 「昨日の術のことですか?」
 『せや!俺が強くなれば術使わんでもええやろ?』
 じっと馨を見ながら、弥栄は続ける。
 『昨日、馨、途中から声かけても全然反応なくて……。寝てるんやって頭では理解しててもどうしても不安で……』
 小さく震える相棒を前にして、馨は触れられないもどかしさを感じた。
 ――触れることができれば、不安を感じなかっただろうに。
 ――体温さえ感じることができれば、生きているとわかるのに。
 彼の不安を取り除くためにできることは――。
 「私は弥栄をおいていきませんよ」
 柔らかく笑って、語りかける。
 「弥栄はひとりぼっちになりません。約束します」
 この気持ちが、温度となって彼に伝わればいいのに。
 『約束破ったら怒るからな!』
 笑った彼に、温かさは伝わっただろうか。
 
 ふと、ぽとりと何かが落ちてきた。これは――。
 「お兄さん、見たことある?八重桜だよ」
 後ろを振り向くと、桜子が立っていた。別れたときと違い、背中のかごには食材がつまっている。
 「聞いたことはありますが……実物を見るのははじめてです」
 「普通の桜と違ってね、八重の桜は花の形のまま落ちるんだ」
 足元を見るとぽつぽつと、落ちた花がある。
 「この時期、この桜を目あてにうちに泊まりに来る人も多いんだよ。この桜、香りもして珍しいって」
 だから、変な物音がなくなってホントよかったよ、と桜子は続けて宿への道を歩く。宿屋の朝は忙しいのだろう。少し早足だ。
 『″ヤエ″って俺と同じ名前や!』
 しげしげと桜の木を見ながら、興奮したように弥栄が呟く。
 「食事が終わったら、一緒に見に来ましょうか」
 こそりと弥栄に提案する。
 いくらか離れた桜子にこの声は聞こえないだろう。
 『ホンマか!?』
 ぱあっと明るくなる表情。
 分かりやすい弥栄にくすりと笑みをこぼし、頭を回転させ始める。八重桜は歌や物語の題材になることも多い。
 どの話からしようか――。
 どの話をしても、表情をコロコロ変える相棒の姿が容易に想像できる。その姿に再びクスリと笑ってしまうとその相棒が訝しげに見てきた。
 誤魔化すように、上へと向けた視線のその先には桜と青々とした空が広がっていた。
 「綺麗ですね……」
 その呟きは桜の香りとともに風に乗り、空へと溶けていった。
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