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すれちがい1−1 side 彼女
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<じぶんちかえる>
ピコンと通知音と一緒に表示された通知バーを見て、またかと思った。
自宅に帰るのは正しいこと。
何も間違っていない。
でも、これで3ヶ月目に突入か、とカレンダーを見て、小さくため息をつく。
毎度丁寧にこれだけのメッセージ。
日常が混じった業務連絡も、いつしか今までの中で一番少ない回数になってて。
付き合い始めてから数年、互いに繁忙期の時以外、ほとんどうちに帰ってきて、うちから仕事に向かってた。
それが、急に「自宅に帰るわ」って言い出して、それからここにくるのも減っていって。
あーこれはアレか、倦怠期ってやつなのか?なんて、思ったり。
まぁでも、私は私で結構キテることに驚いてもいる。
彼は私よりも全然若いし、周りはみんな綺麗だったり可愛い子達がいっぱいいる環境だし。
久しぶりの恋愛だから、面倒くさいよとも伝えたし。
そうなったらそうなったで、まぁ仕方ないのかもしれない。
でも、それなりの時間ここで一緒に過ごしていた分、この空間にある彼の気配を消すことは困難だ。
少しの抵抗を込めて、既読はつけない。
仕事で気づきませんでしたっていう風を見せて、彼が眠った頃に既読をつけて、<わかった>だけを返す。
これだけが並ぶトーク画面をみて、この関係に意味はあるのかな?って思う気持ちも嘘じゃない。
もとは可愛いと思って買ったはずのブルーのマグ。
いつのまにか彼専用のマグになって、今は食器棚の奥に移動している。
お箸も茶碗もお椀も、所在なさげに、でも存在感をアピールしてくる。
彼が置いていたお気に入りのジャージも、いつの間にか持って帰られてて。
残ってるのなんて、食器類と半分以下になった基礎化粧品たちだけ。
うん、やっぱりそう言うことなんだろうな。
親友に一本のメッセージを送って、スマホの電源を切る。
充電だけしてる文鎮なんて、機械に負荷かけまくってるなと思いつつ、また小さな抵抗。
明日から半年の長期出張で海外だし、朝も早いしもう今日は未読のままでいいやって、布団に入った。
翌朝早朝。
朝の身支度の時に目に入った基礎化粧達を、棚の奥にしまう。
冷蔵庫の中身を確認して、電源を抜く。
テレビやその他の家電も、電源を抜いて周り、指差し確認。
手荷物に必要なものだけを入れて、ガスの元栓も閉める。
彼の手元にこの家の鍵はあるけど、きっと、来ないだろうから。
全部もう一度指差し確認をして、朝明けたカーテンを閉めて、荷物を玄関へ。
腕時計を確認して、予約しておいたタクシーの到着時刻を確認する。
部屋を出て、玄関を閉める。
エントランスに降りて、念の為郵便受けを確認すると、白い封筒が入っていた。
中身を確認しようとしたが、タクシーが来たのが見えたので、カバンの中に入れた。
車内は小さな音でラジオがかかっていた。
運転手さんが気を利かせてくれているのか、会話がない分ラジオの音がよく聞こえる。
カバンの中に入れておいた封筒を開けると、出てきたのは鍵。
息が止まった。
右手の中には、見慣れた、我が家の鍵。
この鍵を持っているのは、私と彼だけ。
……ああ、そう言うことか。
まぁ、でも不在時に部屋に入られることは無くなったってことでよかったじゃない。
大きく、一つ深呼吸をして、封筒をしまおうともう一度癖で中身を確認したら、小さな紙。
可愛らしい字で
ーお返しします
なるほど、なかなかに、なかなかに。
車内に響くのは、タイミングを図ったかのように、彼らの最新曲だった。
ピコンと通知音と一緒に表示された通知バーを見て、またかと思った。
自宅に帰るのは正しいこと。
何も間違っていない。
でも、これで3ヶ月目に突入か、とカレンダーを見て、小さくため息をつく。
毎度丁寧にこれだけのメッセージ。
日常が混じった業務連絡も、いつしか今までの中で一番少ない回数になってて。
付き合い始めてから数年、互いに繁忙期の時以外、ほとんどうちに帰ってきて、うちから仕事に向かってた。
それが、急に「自宅に帰るわ」って言い出して、それからここにくるのも減っていって。
あーこれはアレか、倦怠期ってやつなのか?なんて、思ったり。
まぁでも、私は私で結構キテることに驚いてもいる。
彼は私よりも全然若いし、周りはみんな綺麗だったり可愛い子達がいっぱいいる環境だし。
久しぶりの恋愛だから、面倒くさいよとも伝えたし。
そうなったらそうなったで、まぁ仕方ないのかもしれない。
でも、それなりの時間ここで一緒に過ごしていた分、この空間にある彼の気配を消すことは困難だ。
少しの抵抗を込めて、既読はつけない。
仕事で気づきませんでしたっていう風を見せて、彼が眠った頃に既読をつけて、<わかった>だけを返す。
これだけが並ぶトーク画面をみて、この関係に意味はあるのかな?って思う気持ちも嘘じゃない。
もとは可愛いと思って買ったはずのブルーのマグ。
いつのまにか彼専用のマグになって、今は食器棚の奥に移動している。
お箸も茶碗もお椀も、所在なさげに、でも存在感をアピールしてくる。
彼が置いていたお気に入りのジャージも、いつの間にか持って帰られてて。
残ってるのなんて、食器類と半分以下になった基礎化粧品たちだけ。
うん、やっぱりそう言うことなんだろうな。
親友に一本のメッセージを送って、スマホの電源を切る。
充電だけしてる文鎮なんて、機械に負荷かけまくってるなと思いつつ、また小さな抵抗。
明日から半年の長期出張で海外だし、朝も早いしもう今日は未読のままでいいやって、布団に入った。
翌朝早朝。
朝の身支度の時に目に入った基礎化粧達を、棚の奥にしまう。
冷蔵庫の中身を確認して、電源を抜く。
テレビやその他の家電も、電源を抜いて周り、指差し確認。
手荷物に必要なものだけを入れて、ガスの元栓も閉める。
彼の手元にこの家の鍵はあるけど、きっと、来ないだろうから。
全部もう一度指差し確認をして、朝明けたカーテンを閉めて、荷物を玄関へ。
腕時計を確認して、予約しておいたタクシーの到着時刻を確認する。
部屋を出て、玄関を閉める。
エントランスに降りて、念の為郵便受けを確認すると、白い封筒が入っていた。
中身を確認しようとしたが、タクシーが来たのが見えたので、カバンの中に入れた。
車内は小さな音でラジオがかかっていた。
運転手さんが気を利かせてくれているのか、会話がない分ラジオの音がよく聞こえる。
カバンの中に入れておいた封筒を開けると、出てきたのは鍵。
息が止まった。
右手の中には、見慣れた、我が家の鍵。
この鍵を持っているのは、私と彼だけ。
……ああ、そう言うことか。
まぁ、でも不在時に部屋に入られることは無くなったってことでよかったじゃない。
大きく、一つ深呼吸をして、封筒をしまおうともう一度癖で中身を確認したら、小さな紙。
可愛らしい字で
ーお返しします
なるほど、なかなかに、なかなかに。
車内に響くのは、タイミングを図ったかのように、彼らの最新曲だった。
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