お前の妄想で、俺ってどうなってるの?

パチェル

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1 最初に気になったのは中3の時

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 昼御飯が終わって、レポート作成のためにデスクでキーボードを叩いていたときにふと思った。

 あー、あれ。
 縄の痕だな。


 テレビとかでよく見る。擦過傷的なやつだ!
 自分のひらめきに自分で相槌を打つ。うんうん、赤く擦れていて、なんかちょっと網目状な感じだった。ちょっと細めな感じだから、シャツの手首の部分から覗いてもそれほど違和感はなかった。



 だからかー。
 既視感あるなぁ。って思ったんだよな。


 って、え?



 瞼の裏に浮かぶのは、いつかの華奢な白い手首。
 その周りを赤黒く飾り付ける縄の痕。


 服の袖や裾から覗く痕。特に気にしていなかったのだがレポートとかをまとめていると、そういった普段特に気にしていないことを考えていたりする。

 腕を伸ばして、凝って丸まった背筋を伸ばす。あくびをしながらついつい思ったことが口から出て行ってしまった。

 天井には丸い電球がいくつも見えるんだろうけど、光を直視したから網膜が焼けた。



「あー、ついに緊縛かぁ」


「は? 先輩、なんすか?」
「いや、別に」


 眠そうな後輩が聞こえるレベルで声を出してしまった。
 図書館で俺は何を。

 健全な男子大学生は図書館で大声で破廉恥なことは言わないと思う。こっそり小さい声なら別だけれども。
 ましてや女性もいるような部屋で、危ない、危ない。


 後輩はまたしてもウトウトと日光に当たる亀のように穏やかに目を瞑る。
 これもまた健全な男子大学生としては当たり前だな、と俺も休憩がてら伸ばした背を再び丸め、ノートパソコンも閉じて、目を瞑った。


 まあ、瞼の裏にはあいつの華奢な手首がよみがえってくるのだが。



 別に、個人の性癖をとやかく言うつもりはない。
 俺だって俺の性癖が誰にも迷惑かけてもいないのに、とやかくは言われたくない。


 完全な同意があればね。お互いに良いと思うし。

 でも、中学生の時から知っている奴が日に日に過激なプレイしているかもって思うのは。
 気になっちゃうわけで。





 最初に気になったのは中学3年の時。
 いつも長袖長ズボンの、前の席のやつの襟足が長くて、ちょっと気になったのが始まりだと思う。
 どこのシャンプー使ってんだろうと思うくらいさらさらで。
 五月の風がそいつの髪の毛を揺らして、目に入ったのは。


「虫刺されか?」

 首のところについた赤い痕。
 真面目そうで、それなのに襟足が長いのが気になっていた。
 さらさらした黒髪がいつも窓からくる風になびくから。


 こういう爽やか―な風がそよぐのが似合いの相手ならそれくらいの襟足の髪の毛があっても違和感はない。たなびかせたいよな。襟足だってたまにはな。
 でも、前の席のやつ自身がうざったそうに時々、襟足に触れるから。

 うざったいなら切ればいいのに、どうして切らないのだろう。

 そう思ったから俺は授業中暇さえあればその襟足とにらめっこをしていた。


 でもその虫刺されはなかなか消えなくって。一週間毎日見ていた。
 月曜からあるけど金曜日まで消えないんだなぁ。


 あれか、肌が白いからそう見えるだけで、俺も案外そうなのかも。
 でも痒くないんかな。



 それからしょっちゅう虫刺されを見るようになった。
 冬になると襟足がさらに伸びて、シャツの下に首が長めのアンダーを着ているから首元はあんまりわからなくなった。

 うちは結構制服とか髪型に自由な校風だったから気にならなかった。

 因みに俺は、気付けば周りが長袖とかになっていて、あれ? と思っている間に自分の部屋に置いてある制服一式が半袖から長袖に代わっているから問答無用でそれを着ていく。
 セーターだとお暑くなった時に無理やり脱いで、首話まりが窮屈でポイッとしてしまい、なくしてしまうことがあった。だからか、もっぱらカーディガンを親が用意している。
 それも一応着るけど、暑くて大抵腰に巻いていることも多い。
 むしろ腰巻だと思う。
 何の防御にもならなさそうな腰巻だ。
 腹は冷えなくていいと思う。






 次にふと気になったのは高校の時。
 同じクラスではなかったけど、体育が一緒だった。
 そこでもやっぱり長袖長ズボンで、水泳の授業はよく休んでいた。

 水泳の授業は休むと補習がある。だからみんなはなるべく休みたくはないのに、あいつは結構平気で休む。そもそもなんでマラソンと水泳だけが補習が別で用意されているんだろう。
 それなら体育の授業の回数自体が行事とか祝日とかで同じなはずじゃないのに補習にならないのはおかしいと思う。きかいのふきんとうだ、と思う。
 バスケも、サッカーも、テニスもバドミントンもバレーも補習なんてないのに。
 ちょっと理不尽。
 球技からの猛抗議を体育の先生に代弁して唱えてみたけれど、先生には怒られた、屁理屈をこねるんじゃないって言われた。担任の先生には苦笑いされた。


 俺は高校生になっても屁理屈の意味がいまいちわかってないけれど、あれは悲しかった。

 人は言語があるのだから、話し合って解決しようじゃないかって思っただけだったのに。
 これが戦争という悲劇を生み出す原因の一つなのか、とそれを垣間見てしまった俺は悲しくなったものだ。

 その日も、やいやいうるさく体操着に着替えていたら、着替えるときにちらりと見えるその白い肌に、赤い痕が見えた。

 何か打ち身みたいな。

 だから、組んでストレッチをしているときに何となく聞いた。



「なぁ、背中に打ち身あったけど、痛くないの?」
「え? は? いや、別に」



 すごく狼狽えて、ストレッチどころじゃないくらい慌て始めて申し訳なかった。
 だから、着替えの時に持っていた湿布を渡した。



「これ、スース―する方の湿布。もしよかったら貼っといて。匂いはちょっときついかもしれんけど」
「え? あ、ありがとう」
「俺こそごめんな? わかるわかる。隠したいよな」


 そう言ったら、動きが止まって、湿布を落としたので拾ってもう一回、渡す。


「側転失敗したんだろ? 広い場所でやんないと。俺も家で一人で練習したけど、ガラスのテーブル割っちゃって、親にマジ切れされたからな。ちびどもの前で。学校の廊下がおすすめだぞ。なるべく広いさ。ほら! 渡り廊下とかいいと思う。あんまり人も通らないし。ただ汚れは半端なくつくから。無用のテカリを生み出させるよな。あれかっこいいよな」
「……あ、うん」



 その、あ、はちょっと傷付く雰囲気の、あ、じゃない?


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