孤独王

ラギ

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準備

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小さなことからとは言ったが、一体何をしたらよいのだろうか。今まで不真面目に生活してきた自分にとって、普通の人からしたら当たり前のことでも、大きなことのように感じてしまう。
「僕に足りないものは…」
帰り道を歩きながら考えてはみたものの、思い当たる節が多すぎる。何せなにも出来ないのだから。勉強をとるか運動をとるか、どちらにせよ普通の小学生にとっては欠かせないものである。
「でも僕は四年間、勉強も運動もサボってきた。今から四年分を取り返すなんて到底出来っこないよな…」
しかし、このままなにもしなければいつまでたっても変われない。
「何かしなきゃ!」
焦る気持ちを抑えつつ、僕は見覚えのないない道を歩く。しばらく歩くこと数分、ようやく見覚えのある大通りに出ることが出来た。
「良かった、これで家に帰れる」
一体どれくらい歩いていたのだろう。
「こんなに歩いたのは初めてだ。疲れたな、どっか休める場所はないかなぁ」
そういって周辺を見渡すと、すぐそこに公園があることに気づいた。僕はすぐさま公園に向かった。
「一休み、一休み」
公園に着いてすぐにベンチに腰を下ろした。長い時間歩いていたせいか足がとても重く感じた。ベンチに座りながらしばらく公園の風景を見ていた。
公園には子連れの親子や僕と同い年っぽそうな子、中学生か高校生かは分からないが学ランを着た人たちが遊んだり、会話したりしていた。その平和な風景をボーッと見ていると、ある物体を見つけた。
「あれって時計かな?」
僕の座っている角度からはハッキリとは見えなかったので、見える位置まで移動する。
「うわ、針時計か…」
僕は針時計を読むのが苦手だ。デジタルに慣れすぎていて、理解するのにかなりの時間がかかる。しかし、今の時間を知る手段が他になかったため、僕は時計の前で指を折りながら必死に考えた。
「午後…2時か?」
学校が終わったのはお昼過ぎ。そのまま家に家に着いてから、昼飯を食べずに勢いで家を飛び出して今に至る。あれから2時間近く経過していた。
「そんなに経ってたのか…」
きっと家族が心配しているだろうに違いない。そして、僕は再び家に帰るために歩きだすのだった。
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