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10.報告
44.死んだほうがマシや
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「そんなことさせてたまるか!」
思わず叫んだ俺に医師が続ける。
「そう、酷いことだよ。そのレイプで噛まれてしまうことさえある。だけど実際にこういう犯罪はあとをたたない。だからオメガもフェロモンを自制できるようになるまでは薬の服用が薦められている」
横の葵に目をやれば、青い顔で小刻みに震える指を握りしめとる。
いとこに襲われかけたことのある葵。
全く知らん奴にも狙われる可能性があることを、改めて認識したに違いない。
「葵、大丈夫や。俺が守ったる」
「そう、君はその人と番になった。番はちゃんと成立していたよ。君のフェロモンは他の人には僅かにしか感じとれなくなったはずだ。だから守られていることに間違いはないね」
「…よかった…番にしてくれてありがとうございます」
ありがとうやなんて、こちらこそやで。
葵が他の誰かに、なんて、考えただけでも苦しくなんのに。
「けれど、それならそれで別の問題がある」
医師の厳しい声に意識を戻される。
「まずは妊娠についてだね。オメガとしてはもちろん、ヒトとしてもまだ未成熟な体の伊原君は、妊娠はまだ避けるべきだ」
「わかっとります。葵の体に負担をかけたくありません」
「そうだね。法的には16になれば結婚できるし、結婚できない今でも妊娠は可能だけれど、おすすめできないね」
俺は葵に向き合って、まだ震えている手を握る。
「葵との子は可愛ええやろなぁ。いつかは欲しいよ。何人おってもええわなぁ。けどな、葵、言うとったやろ。働いて勉強して大人になりたい、て。葵の心と体の準備がでけるまでは、俺が葵を独り占めや。大人になる葵を一番近くで見とってもええかな」
「…僕、ゆっくり大人になってもいいですか?」
「あたりまえやろ。そのぶん俺が独占でける時間が延びんねん」
葵が笑って、手の震えもおさまった。
「仲がよくてなによりだ。しかし先のことはわからない。伊原君は番に去られたオメガがどうなるのか知っているのかな?」
「一応は…保健体育の時間に教わったくらいです」
「番を失ったオメガの心身は徐々に不安定になり、そのまま心も体も壊すことがある。アルファが新しい番を得たりして一方的に捨てられたオメガは…死に至ることもある。伊原君にはその覚悟があったのかな?」
口を出そうとした俺を、医師の視線が止める。
「…僕は…ちあ、奥山さんが好きです。いつかもしそんな日がくるのなら、僕が奥山さんのそばに居られない日がくるのなら、生きていてもしかたない」
「……だそうだけど?」
医師が俺の発言を促す。
喉が詰まって、口が上手く動かへん。
葵の覚悟を伝えられて、何を言っても泣き声になってしまいそうで。
「…俺も…おんなじや…」
さっきまでとは逆に、葵が震える俺の手を握ってくれた。
「定期健診は半年ごと。いつも二人で来るように。こんな泣き虫だけに伊原君を任せるわけにはいかないからね」
無理に顰めっ面を作ったような医師が言う。
涙がとまったら、親身なくせにイヤミな医者に言ったんねん。
健診のたびに見せつけたるわ。
俺がどれだけ葵を好きで、葵がどれだけ俺を好きなのかを。
思わず叫んだ俺に医師が続ける。
「そう、酷いことだよ。そのレイプで噛まれてしまうことさえある。だけど実際にこういう犯罪はあとをたたない。だからオメガもフェロモンを自制できるようになるまでは薬の服用が薦められている」
横の葵に目をやれば、青い顔で小刻みに震える指を握りしめとる。
いとこに襲われかけたことのある葵。
全く知らん奴にも狙われる可能性があることを、改めて認識したに違いない。
「葵、大丈夫や。俺が守ったる」
「そう、君はその人と番になった。番はちゃんと成立していたよ。君のフェロモンは他の人には僅かにしか感じとれなくなったはずだ。だから守られていることに間違いはないね」
「…よかった…番にしてくれてありがとうございます」
ありがとうやなんて、こちらこそやで。
葵が他の誰かに、なんて、考えただけでも苦しくなんのに。
「けれど、それならそれで別の問題がある」
医師の厳しい声に意識を戻される。
「まずは妊娠についてだね。オメガとしてはもちろん、ヒトとしてもまだ未成熟な体の伊原君は、妊娠はまだ避けるべきだ」
「わかっとります。葵の体に負担をかけたくありません」
「そうだね。法的には16になれば結婚できるし、結婚できない今でも妊娠は可能だけれど、おすすめできないね」
俺は葵に向き合って、まだ震えている手を握る。
「葵との子は可愛ええやろなぁ。いつかは欲しいよ。何人おってもええわなぁ。けどな、葵、言うとったやろ。働いて勉強して大人になりたい、て。葵の心と体の準備がでけるまでは、俺が葵を独り占めや。大人になる葵を一番近くで見とってもええかな」
「…僕、ゆっくり大人になってもいいですか?」
「あたりまえやろ。そのぶん俺が独占でける時間が延びんねん」
葵が笑って、手の震えもおさまった。
「仲がよくてなによりだ。しかし先のことはわからない。伊原君は番に去られたオメガがどうなるのか知っているのかな?」
「一応は…保健体育の時間に教わったくらいです」
「番を失ったオメガの心身は徐々に不安定になり、そのまま心も体も壊すことがある。アルファが新しい番を得たりして一方的に捨てられたオメガは…死に至ることもある。伊原君にはその覚悟があったのかな?」
口を出そうとした俺を、医師の視線が止める。
「…僕は…ちあ、奥山さんが好きです。いつかもしそんな日がくるのなら、僕が奥山さんのそばに居られない日がくるのなら、生きていてもしかたない」
「……だそうだけど?」
医師が俺の発言を促す。
喉が詰まって、口が上手く動かへん。
葵の覚悟を伝えられて、何を言っても泣き声になってしまいそうで。
「…俺も…おんなじや…」
さっきまでとは逆に、葵が震える俺の手を握ってくれた。
「定期健診は半年ごと。いつも二人で来るように。こんな泣き虫だけに伊原君を任せるわけにはいかないからね」
無理に顰めっ面を作ったような医師が言う。
涙がとまったら、親身なくせにイヤミな医者に言ったんねん。
健診のたびに見せつけたるわ。
俺がどれだけ葵を好きで、葵がどれだけ俺を好きなのかを。
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