自立したい僕を社長が甘やかしてきます

春夏

文字の大きさ
51 / 72
13.見張りの皆さん

55.横山の通告

しおりを挟む
「…そうか、いろいろあったんだな…」
「はい。でも横山美化で雇ってもらえて良かったです」
「おう。これからは俺が葵の親代わりだ」

葵の父、伊原健と俺は幼馴染だった。
高校を出て家業を継いだ俺は健がまだ大学生だった頃に結婚したから、葵が産まれた時には我が子はもう大きくなっていて、小さな葵が可愛くて可愛くて。
土産を手に時折顔を出す俺に葵も懐いてくれて。
「…ウチで働くこと、健と由美さんに報告しねえとな」
あんなに突然、2人がいなくなるなんて。

掃除をして花を手向け、墓に手を合わせる。
健、俺が葵を守るから。
頼りないかもしれねえけど、大目に見てくれよ。
……こうして葵の新しい暮らしが始まった。

葵が好きやねん、というこの男を信じていいのか?
恋愛なんて葵にはまだ早すぎないか?
だけど葵はオメガで、この男はアルファで奥山一族の一員で金持ちで…だけど葵が遊ばれて泣くなんてことになったら、健に顔向けできねえんだけど?

あれよあれよといううちになるようになっちまって、あろうことか番になっただと?!
まだ葵は15なんだぞ、ふざけんじゃねえ、と09に怒鳴りこんだはずが、奥山社長の葵への真剣な想いを再確認させられた、ときたもんだ。

観念した俺の報告を、戸惑うように、でも嬉しそうに聞く葵。
…わかってたんだよ、いつかは誰かに葵を託さなきゃならない、って。
それにしたって早すぎるだろ?
まだまだ俺の手が届く範囲にしまっておかせてくれたって良かったのに。
赤ちゃんのころから知ってる葵を、回らぬ舌で“よきょやみゃ”と俺を呼んだ葵を。
これ以上は引き延ばせない、と言われた葬式に、病院の外出許可をもらって、包帯を巻いたまま参列した葵を。

ころんじゃったの、と泣いていたあの日と同じように、わんわんと声をあげて泣く葵を抱きしめる。
「親は俺だけだよなぁ?!」
泣きながら、でもしっかり頷いてくれた葵。

俺が親で、俺の親父はじいちゃんで、ウチの社員や09の社員さんたちはおじさんおばさん兄さん姉さんで、斉藤は親友で。
葵に惚れる、ってことはこれだけの人の信頼を得なきゃならないんだ。
葵を泣かす、ってことはこれだけの人を敵に回すってことなんだ。

奥山さん、覚悟してもらいますよ?
あなたにならできる、と、あなたにしかできない、と、信じている葵のために。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

病弱の花

雨水林檎
BL
痩せた身体の病弱な青年遠野空音は資産家の男、藤篠清月に望まれて単身東京に向かうことになる。清月は彼をぜひ跡継ぎにしたいのだと言う。明らかに怪しい話に乗ったのは空音が引き取られた遠縁の家に住んでいたからだった。できそこないとも言えるほど、寝込んでばかりいる空音を彼らは厄介払いしたのだ。そして空音は清月の家で同居生活を始めることになる。そんな空音の願いは一つ、誰よりも痩せていることだった。誰もが眉をひそめるようなそんな願いを、清月は何故か肯定する……。

運命よりも先に、愛してしまった

AzureHaru
BL
幼馴染で番同士の受けと攻め。2人は運命の番ではなかったが、相思相愛だった。そんな時、攻めに運命の番が現れる。それを知った受けは身籠もっていたが、運命の番同士の子供の方が優秀な者が生まれることも知っており、身を引く事を決め姿を消す。 しかし、攻めと運命の番の相手にはそれぞれに別の愛する人がいる事をしり、 2人は運命の番としてではなく、友人として付き合っていけたらと話し合ってわかれた。 その後、攻めは受けが勘違いしていなくなってしまったことを両親達から聞かされるのであった。

愛しい番に愛されたいオメガなボクの奮闘記

天田れおぽん
BL
 ボク、アイリス・ロックハートは愛しい番であるオズワルドと出会った。  だけどオズワルドには初恋の人がいる。  でもボクは負けない。  ボクは愛しいオズワルドの唯一になるため、番のオメガであることに甘えることなく頑張るんだっ! ※「可愛いあの子は番にされて、もうオレの手は届かない」のオズワルド君の番の物語です。 ※他サイトでも連載中

たとえば、俺が幸せになってもいいのなら

夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語――― 父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。 弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。 助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。

【完結】この契約に愛なんてないはずだった

なの
BL
劣勢オメガの翔太は、入院中の母を支えるため、昼夜問わず働き詰めの生活を送っていた。 そんなある日、母親の入院費用が払えず、困っていた翔太を救ったのは、冷静沈着で感情を見せない、大企業副社長・鷹城怜司……優勢アルファだった。 数日後、怜司は翔太に「1年間、仮の番になってほしい」と持ちかける。 身体の関係はなし、報酬あり。感情も、未来もいらない。ただの契約。 生活のために翔太はその条件を受け入れるが、理性的で無表情なはずの怜司が、ふとした瞬間に見せる優しさに、次第に心が揺らいでいく。 これはただの契約のはずだった。 愛なんて、最初からあるわけがなかった。 けれど……二人の距離が近づくたびに、仮であるはずの関係は、静かに熱を帯びていく。 ツンデレなオメガと、理性を装うアルファ。 これは、仮のはずだった番契約から始まる、運命以上の恋の物語。

逃げた先に、運命

夢鴉
BL
周囲の過度な期待に耐えられなくなったアルファーー暁月凛(あかつき りん)は、知らない電車に乗り込み、逃避行を計った。 見知らぬ風景。 見知らぬ土地。 見知らぬ海で出会ったのは、宵月蜜希(よいつき みつき)――番持ちの、オメガだった。 「あははは、暁月くんは面白いなぁ」 「ありがとうね、暁月くん」 「生意気だなぁ」 オメガとは思えないほど真っすぐ立つ蜜希。 大人としての余裕を持つ彼に、凛は自分がアルファであることを忘れるほど、穏やかな気持ちで日々を過ごしていく。 しかし、蜜希の初めての発情期を見た凛は、全身を駆け巡る欲に自分がアルファであることを思い出す。 蜜希と自分が”運命の番”だと知った凛は、恋を自覚した瞬間失恋していたことを知る。 「あの人の番は、どんな人なんだろう」 愛された蜜希は、きっと甘くて可愛らしい。 凛は蜜希への秘めた想いを抱えながら、蜜希を支えることを決意する。 しかし、蜜希の番が訳ありだと知った凛は、怒り、震え――同時に、自分がアルファである事を現実は無情にも突き付けて来る。 「凛さん。遊びは終わりです。帰りますよ」 強引に蜜希と引き剥がされる凛。 その凛の姿と、彼の想いを聞いていた蜜希の心は揺れ――。 オメガバースの世界で生きる、運命の二人の逃避行。 ※お気に入り10突破、ありがとうございます!すごく励みになります…!!

多分嫌いで大好きで

ooo
BL
オメガの受けが消防士の攻めと出会って幸せになったり苦しくなったり、普通の幸せを掴むまでのお話。 消防士×短大生のち社会人 (攻め) 成瀬廉(31) 身長180cm 一見もさっとしているがいかにも沼って感じの見た目。 (受け) 崎野咲久(19) 身長169cm 黒髪で特に目立った容姿でもないが、顔はいい方だと思う。存在感は薄いと思う。 オメガバースの世界線。メジャーなオメガバなので特に説明なしに始まります( . .)"

処理中です...