自立したい僕を社長が甘やかしてきます

春夏

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14.お土産の思い出

58.無理がいっぱい

………たっか………!

今朝僕が着ていた服は、買い物の前に着替えさせられた。
そりゃそうだよね、こんな高級そうな服屋さんに、トレーナーは似合わないもん。
目が回りそう。
あ、これなら買える……靴下だけど。

「インフォーマルやからな、こんなんでええやろ」
こんなん、って、こんなんってこんなん?!
そんな適当みたいな言い方していいお値段じゃないでしょ?!
だいたいインフォーマルってなんなの?!
「俺ンちかて、そんなんとこしょっちゅう行っとるわけやないよ?今年も1年お疲れさん、ってやつや」
いやいや、だからそんなの…僕、無理…。

「…制服じゃダメ…?」
「制服?高校のか?着とらんやろ、制服あったん?」
「あのね、ほら、クラスにはおじいさんとかもいるでしょ?だから普段は着なくていいんだけど、せっかくだから、って伯父さんが昼部の制服を買ってくれたんです。入学式に着ただけだけど」
「…制服か…んー、葵の制服姿……たまらんかも…」
「エヘヘ、見たいですか?」
「あたりまえや!もちろん見たいわ。でもって…」

脱がしたい、智秋さんが耳元で囁いた。

その言葉に僕が動揺しているうちに、店員さんがお高いスーツを箱にしまった。
「とりあえず買うとこ。まぁ……」
これも脱がしてまうけど、と2度めの囁きをくらって、僕はもう限界。
お値段も無理、甘い囁きも…無理だよ…。

「葵、怒っとる?」
「…怒ってない…でも高すぎてびっくりしてます」
「柴田達が作っとるやつなんか、もっと高いやつあんねんで」
もっと?あれよりもっと?嘘でしょ?
「ハイブランドなんかだと俺も躊躇することもあるけどな、このくらいは“俺の”常識の範囲や。慣れてもらわなあかんなぁ」
あのお値段に慣れるわけないじゃん。
車がちょうど信号で止まって、智秋さんが頬を撫でる。
「こういうのも、慣れてもらわな」
「無理!」
とうとう叫んだ僕に智秋さんが大笑いしながら車を発進させた。

お疲れさん、と智秋さんが連れてきてくれたのは、“僕の”常識の範囲のファミレスで。
「デザートセットつけたろな」
“智秋さんの”常識の範囲は僕には難しいけれど、その笑顔も…囁きも…結局僕は智秋さんが大好きなんです。
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