自立したい僕を社長が甘やかしてきます

春夏

文字の大きさ
58 / 81
15.贅沢な冬

62.なんぼでも妬いてくれ

「さて葵君」
「…なんですか急に」
「今夜は外食や。イルミネーション見て、フレンチの練習。というわけで、前に買うた服、着てみよか」
やだよラーメンでいい、とは言えなくて、渋々立ち上がった僕。

「んー、ええなぁ。たまらんわ。ホンマにええなぁ」
サイズはピッタリ。
いつもと違う僕が鏡にうつって、恥ずかしい。
曲がったネクタイを直しながら、たまらんたまらん、と繰り返す智秋さん。
「…脱がさないでくださいね」
そら後でゆっくり、と、落とされた暖かさが憎らしくて、その唇を甘噛みする。
ご褒美やな、と囁かれた耳たぶに返された甘噛みは、本音を言えば僕にとってもご褒美。
「俺も着替えてくるからな。今日は電車で行こな」

「俺もお揃いでネクタイ買うたんよ。スーツもなぁ、ホンマは同じとこで買いたかってんけど、俺は一応“奥山”のモンやから」
智秋さんのスーツは、びっくりするほど高かったこのスーツより、やっぱりずっと素敵。
カッコよさが倍増してるんじゃない?
こんな人混みにこんな素敵な人、危なくない?
「きっとな、葵にも“奥山”の服を着せたがるはずやで?そらもう、車に乗りきらんくらい渡されるんちゃうかな。葵は可愛ええから皆の着せ替え人形になってまうよ?」
無理無理、そんなの貰えないよ?!
「ウチの人らの常識の範囲やからなぁ。大丈夫、葵ならなんでも似合うわ」
涼しい顔がやっぱり憎らしくて、でもカッコよくて、混雑した電車の中だというのに見とれてしまう。
「…そんな顔は外でしたらあかん」
智秋さんが僕を引き寄せて、胸に僕の顔を隠した。

「…すごいですね、綺麗!」
「ホンマやなぁ。学生ン時に来た時より派手になっとるわ」
「………誰と来たの………?」
「柴田と太田や。アイツら、俺が居ること忘れとったんちゃうかな。2人の世界、っちゅうやつや。今日は俺と葵の2人の世界やな。ほれ、周りもみんな」
言われて見回せば、顔を寄せあって写真を撮ったり、温め合うように抱き合う恋人達。
「ほらな、誰も見てへんよ」
後ろから抱き締められて、肩に顎がのせられる。

「いろんなとこ見に行こな。ずっと一緒に冬を過ごそう。春も夏も秋も、オッサンになってじいちゃんになっても、ずっと」
あったかくて、嬉しくて、なぜだかちょっと切なくて、僕は体をずらして、智秋さんにちゃんと抱き締めてもらった。

「約束ですよ?」
「せや。俺はちゃんと守るから、葵も破らんといて」
「僕がけっこう嫉妬深くても?」
「葵のヤキモチやったら大歓迎や」
感想 0

あなたにおすすめの小説

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

あなたの番になれたなら

ノガケ雛
BL
皇太子──リオール・エイリーク・エーヴェルは生まれて間もなく第二の性がアルファだとわかり、次期国王として期待されていた。 王族の仕来りで十歳を迎えるその年から、半年に一度訓練と称してオメガが用意され、伽をする。 そしてその訓練で出会ったオメガのアスカに恋に落ちたリオールは、番になってくれと願い出るのだが──。 表紙は七節エカ様です。 【登場人物】 ✤リオール・エイリーク・エーヴェル  14歳 α  エーヴェル国皇太子 ✤アスカ  18歳 Ω  エーヴェル国の平民

【完結】名前のない皇后 −記憶を失ったSubオメガはもう一度愛を知る−

社菘
BL
息子を産んで3年。 瀕死の状態で見つかったエリアスは、それ以前の記憶をすっかり失っていた。 自分の名前も覚えていなかったが唯一所持品のハンカチに刺繍されていた名前を名乗り、森の中にひっそりと存在する地図上から消された村で医師として働く人間と竜の混血種。 ある日、診療所に運ばれてきた重病人との出会いがエリアスの止まっていた時を動かすことになる。 「――お前が俺の元から逃げたからだ、エリアス!」 「本当に、本当になにも覚えていないんだっ!」 「ととさま、かかさまをいじめちゃメッ!」 破滅を歩む純白竜の皇帝《Domアルファ》× 記憶がない混血竜《Subオメガ》 「俺の皇后……」 ――前の俺?それとも、今の俺? 俺は一体、何者なのだろうか? ※オメガバース、ドムサブユニバース特殊設定あり(かなり好き勝手に詳細設定をしています) ※本作では第二性→オメガバース、第三性(稀)→ドムサブユニバース、二つをまとめてSubオメガ、などの総称にしています ※作中のセリフで「〈〉」この中のセリフはコマンドになります。読みやすいよう、コマンドは英語表記ではなく、本作では言葉として表記しています ※性的な描写がある話数に*をつけています ✧毎日7時40分+17時40分に更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

【完結】完璧アルファの寮長が、僕に本気でパートナー申請なんてするわけない

中村梅雨(ナカムラツユ)
BL
海軍士官を目指す志高き若者たちが集う、王立海軍大学。エリートが集まり日々切磋琢磨するこの全寮制の学舎には、オメガ候補生のヒート管理のため“登録パートナー”による処理行為を認めるという、通称『登録済みパートナー制度』が存在した。 二年生になったばかりのオメガ候補生:リース・ハーストは、この大学の中で唯一誰ともパートナー契約を結ばなかったオメガとして孤独に過ごしてきた。しかしある日届いた申請書の相手は、完璧な上級生アルファ:アーサー・ケイン。絶対にパートナーなんて作るものかと思っていたのに、気付いたら承認してしまっていて……??制度と欲望に揺れる二人の距離は、じりじりと変わっていく──。 夢を追う若者たちが織り成す、青春ラブストーリー。

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。 完結しました!ありがとうございました。

当たり前の幸せ

ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。 初投稿なので色々矛盾などご容赦を。 ゆっくり更新します。 すみません名前変えました。

愛され方を教えて

あちゃーた
BL
主人公リハルトは自分を愛さなかった元婚約と家族のために無惨に死んだ…はずだった。 次に目が覚めた時、リハルトは過去に戻っていた。 そこは過去のはずなのにどこかおかしくて…