低音火傷な世界に鞭を

灯火(とうか)

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第一章

第五話

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 蛍光灯で照らされた古い廊下を進むと、一気に日が差してくる。食堂は日が差す南側にあるらしい。
「うちの病院食どうよ?ナンちゃん。」
「すごく、種類が多いね。パンも麺もある!」
「へへへ。そうでしょ。」
 病院の食堂は、すごく明るい。誰もが笑顔になれる、そんな場所だ。
 桜さんは胸を張って宣言していた。彼女の背は小さく、私よりも十センチは小さい。かわいい。
「ありがとう。」
「へへ。さ、早く食べよう!ナンちゃん。」
「うん…」
 食堂はバイキング方式だ。とは言え、好き勝手選べるわけではなく、メインやサラダなどで分かれた中から好きなものを選ぶことができる。ようは組み合わせだ。
「あ! …ん? ふむふむ… うーん。」
 桜が楽しそうに選んでいる。表情がコロコロ変わる。かわいい。
「早く!早く!」
「はーい!」
 私が悩んでいると、桜に声をかけられた。どうやら待たせてしまったらしい。
「ふふふ。」
「? どうしたの?」
「何でもないよ。…かわいい。」
「?」
「さ、食べよう!」

「「いただきます!」」

 窓からは元気なお日様が覗く。久々だ。こんなにも清々しい1日は。

 食べ終わった後、検査が始まることになる。
 薄汚れた廊下を進むと、

「それでは、検査を始めさせていただきます。」
 目の前には、冷たい機械。そして、すこし黄ばんだ電球がある。
「まずは、採血からですね。」
「・・・はい。」
 鋭い注射針が、皮膚を貫く。皮膚の内側から小さく痛みが走る。
「うっ」
「少し痛みますよー。」
 この医者は針を刺してから言った。手遅れだ。
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