あなたたちに、愛されなくても

ぴぴみ

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ありのまま

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 私は、名のある公爵家に生まれ、王家に嫁ぐことが物心つく前から決まっていた女でした。

 
 当然、未来の王妃として厳しい教育が成されました。求められるものは、あまり多く、幼い身に負担をかけながらも精一杯学びました。

 ただ、私には平凡な才能しか無いようでした。一流の家庭教師からありとあらゆることを学びましたが、両親には溜め息をつかれてばかり。

 私の努力では、彼らの期待に応えられないようでした。


 ある日のことです。同じ年頃の娘たちとの茶会の場で、私は失敗しました。


 はずみで、カップを倒してしまったのです。大した失敗ではないと堂々としていればよかった。しかし完璧を常に求められていた私は、頭が真っ白になり、次の瞬間カァァと頬が熱くなるのを感じました。


「お顔が真っ赤ですわよ…くすくすくす」


─それ以来、私は、致命的な欠陥を抱えるようになったのです。


 誰かから向けられる目が怖い。平静を装えない。心臓が早鐘を打ち、誰かを楽しませるような会話などとてもではないが、できません。


 両親も愛想をつかし、私は血筋だけ高貴なあがり症の地味令嬢として、陰で馬鹿にされるようになりました。


 私がこの家にいられるのは、王子の婚約者だから。ただそれだけです。これ以上恥をかかせるなと外には出してもらえませんでしたが、私はそれでよかった。誰にも会いたくなかったから。

 誰にも気づかれないよう存在感を消し、息を潜めて生活しました。本が好きだったから、過去失われたという魔術の本も貪るように読み込みました。

 不仲な両親には他に娘はなく、今後も望めそうにありません。私は自身の血筋には自信を持っていました。どこかに慢心があったのです。私の評判がどうであれ、王子は私と結婚するのだと…。

 
 しかし、それは間違いでした。

「お前みたいな、みっともない女が、
本気で、未来の王妃になれると思っていたのか?身の程を知れ」


 それが、全てでした。


 みっともなくすがり付くことすらできず、家に帰りました。青ざめ、前に立った私に両親は、二択を迫りました。

 
 王子に捨てられた女として、結婚を望む者など皆無。

 ここで哀れな令嬢として死ぬか、無一文で出ていけと。どちらにせよ、私は死んだと公表するようです。

 
 嬉しい…。

 やっと、全てを捨てられるようです。


 潔く死ぬと答えた私に、両親は初めて微笑みました。それでこそ、我が娘だと…。







「待て…こちらに来るな…っ!!
俺が悪かった…!!だから、もう…許してくれ…!!」


 一体誰に向かって謝ってるのかしら?
どうやら目の前で元婚約者が死んで、ずっとその幻影を見ているらしい。

 真しやかに噂は流れ、病んだ王子として、王位継承権争いに破れた王子は幽閉されました。


 そして、時を同じくして、悪徳貴族に関する致命的な情報を売るという、凄腕の情報屋の話が囁かれるようになりました。

 その者は決して、素顔を見せず、どうやら特殊な秘術を使うようでした。
 


「公爵家を滅ぼしたいのだが…」

 
 依頼に来た男に、情報屋は口の片端をにやりと歪めました。


「お望みのままに」
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