1 / 1
ありのまま
しおりを挟む
私は、名のある公爵家に生まれ、王家に嫁ぐことが物心つく前から決まっていた女でした。
当然、未来の王妃として厳しい教育が成されました。求められるものは、あまり多く、幼い身に負担をかけながらも精一杯学びました。
ただ、私には平凡な才能しか無いようでした。一流の家庭教師からありとあらゆることを学びましたが、両親には溜め息をつかれてばかり。
私の努力では、彼らの期待に応えられないようでした。
ある日のことです。同じ年頃の娘たちとの茶会の場で、私は失敗しました。
はずみで、カップを倒してしまったのです。大した失敗ではないと堂々としていればよかった。しかし完璧を常に求められていた私は、頭が真っ白になり、次の瞬間カァァと頬が熱くなるのを感じました。
「お顔が真っ赤ですわよ…くすくすくす」
─それ以来、私は、致命的な欠陥を抱えるようになったのです。
誰かから向けられる目が怖い。平静を装えない。心臓が早鐘を打ち、誰かを楽しませるような会話などとてもではないが、できません。
両親も愛想をつかし、私は血筋だけ高貴なあがり症の地味令嬢として、陰で馬鹿にされるようになりました。
私がこの家にいられるのは、王子の婚約者だから。ただそれだけです。これ以上恥をかかせるなと外には出してもらえませんでしたが、私はそれでよかった。誰にも会いたくなかったから。
誰にも気づかれないよう存在感を消し、息を潜めて生活しました。本が好きだったから、過去失われたという魔術の本も貪るように読み込みました。
不仲な両親には他に娘はなく、今後も望めそうにありません。私は自身の血筋には自信を持っていました。どこかに慢心があったのです。私の評判がどうであれ、王子は私と結婚するのだと…。
しかし、それは間違いでした。
「お前みたいな、みっともない女が、
本気で、未来の王妃になれると思っていたのか?身の程を知れ」
それが、全てでした。
みっともなくすがり付くことすらできず、家に帰りました。青ざめ、前に立った私に両親は、二択を迫りました。
王子に捨てられた女として、結婚を望む者など皆無。
ここで哀れな令嬢として死ぬか、無一文で出ていけと。どちらにせよ、私は死んだと公表するようです。
嬉しい…。
やっと、全てを捨てられるようです。
潔く死ぬと答えた私に、両親は初めて微笑みました。それでこそ、我が娘だと…。
「待て…こちらに来るな…っ!!
俺が悪かった…!!だから、もう…許してくれ…!!」
一体誰に向かって謝ってるのかしら?
どうやら目の前で元婚約者が死んで、ずっとその幻影を見ているらしい。
真しやかに噂は流れ、病んだ王子として、王位継承権争いに破れた王子は幽閉されました。
そして、時を同じくして、悪徳貴族に関する致命的な情報を売るという、凄腕の情報屋の話が囁かれるようになりました。
その者は決して、素顔を見せず、どうやら特殊な秘術を使うようでした。
「公爵家を滅ぼしたいのだが…」
依頼に来た男に、情報屋は口の片端をにやりと歪めました。
「お望みのままに」
当然、未来の王妃として厳しい教育が成されました。求められるものは、あまり多く、幼い身に負担をかけながらも精一杯学びました。
ただ、私には平凡な才能しか無いようでした。一流の家庭教師からありとあらゆることを学びましたが、両親には溜め息をつかれてばかり。
私の努力では、彼らの期待に応えられないようでした。
ある日のことです。同じ年頃の娘たちとの茶会の場で、私は失敗しました。
はずみで、カップを倒してしまったのです。大した失敗ではないと堂々としていればよかった。しかし完璧を常に求められていた私は、頭が真っ白になり、次の瞬間カァァと頬が熱くなるのを感じました。
「お顔が真っ赤ですわよ…くすくすくす」
─それ以来、私は、致命的な欠陥を抱えるようになったのです。
誰かから向けられる目が怖い。平静を装えない。心臓が早鐘を打ち、誰かを楽しませるような会話などとてもではないが、できません。
両親も愛想をつかし、私は血筋だけ高貴なあがり症の地味令嬢として、陰で馬鹿にされるようになりました。
私がこの家にいられるのは、王子の婚約者だから。ただそれだけです。これ以上恥をかかせるなと外には出してもらえませんでしたが、私はそれでよかった。誰にも会いたくなかったから。
誰にも気づかれないよう存在感を消し、息を潜めて生活しました。本が好きだったから、過去失われたという魔術の本も貪るように読み込みました。
不仲な両親には他に娘はなく、今後も望めそうにありません。私は自身の血筋には自信を持っていました。どこかに慢心があったのです。私の評判がどうであれ、王子は私と結婚するのだと…。
しかし、それは間違いでした。
「お前みたいな、みっともない女が、
本気で、未来の王妃になれると思っていたのか?身の程を知れ」
それが、全てでした。
みっともなくすがり付くことすらできず、家に帰りました。青ざめ、前に立った私に両親は、二択を迫りました。
王子に捨てられた女として、結婚を望む者など皆無。
ここで哀れな令嬢として死ぬか、無一文で出ていけと。どちらにせよ、私は死んだと公表するようです。
嬉しい…。
やっと、全てを捨てられるようです。
潔く死ぬと答えた私に、両親は初めて微笑みました。それでこそ、我が娘だと…。
「待て…こちらに来るな…っ!!
俺が悪かった…!!だから、もう…許してくれ…!!」
一体誰に向かって謝ってるのかしら?
どうやら目の前で元婚約者が死んで、ずっとその幻影を見ているらしい。
真しやかに噂は流れ、病んだ王子として、王位継承権争いに破れた王子は幽閉されました。
そして、時を同じくして、悪徳貴族に関する致命的な情報を売るという、凄腕の情報屋の話が囁かれるようになりました。
その者は決して、素顔を見せず、どうやら特殊な秘術を使うようでした。
「公爵家を滅ぼしたいのだが…」
依頼に来た男に、情報屋は口の片端をにやりと歪めました。
「お望みのままに」
13
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
貴方の幸せの為ならば
缶詰め精霊王
恋愛
主人公たちは幸せだった……あんなことが起きるまでは。
いつも通りに待ち合わせ場所にしていた所に行かなければ……彼を迎えに行ってれば。
後悔しても遅い。だって、もう過ぎたこと……
離れて後悔するのは、あなたの方
翠月るるな
恋愛
順風満帆だったはずの凛子の人生。それがいつしか狂い始める──緩やかに、転がるように。
岡本財閥が経営する会社グループのひとつに、 医療に長けた会社があった。その中の遺伝子調査部門でコウノトリプロジェクトが始まる。
財閥の跡取り息子である岡本省吾は、いち早くそのプロジェクトを利用し、もっとも遺伝的に相性の良いとされた日和凛子を妻とした。
だが、その結婚は彼女にとって良い選択ではなかった。
結婚してから粗雑な扱いを受ける凛子。夫の省吾に見え隠れする女の気配……相手が分かっていながら、我慢する日々。
しかしそれは、一つの計画の為だった。
そう。彼女が残した最後の贈り物(プレゼント)、それを知った省吾の後悔とは──とあるプロジェクトに翻弄された人々のストーリー。
真実の愛の祝福
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
皇太子フェルナンドは自らの恋人を苛める婚約者ティアラリーゼに辟易していた。
だが彼と彼女は、女神より『真実の愛の祝福』を賜っていた。
それでも強硬に婚約解消を願った彼は……。
カクヨム、小説家になろうにも掲載。
筆者は体調不良なことも多く、コメントなどを受け取らない設定にしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
侯爵様の懺悔
宇野 肇
恋愛
女好きの侯爵様は一年ごとにうら若き貴族の女性を妻に迎えている。
そのどれもが困窮した家へ援助する条件で迫るという手法で、実際に縁づいてから領地経営も上手く回っていくため誰も苦言を呈せない。
侯爵様は一年ごとにとっかえひっかえするだけで、侯爵様は決して貴族法に違反する行為はしていないからだ。
その上、離縁をする際にも夫人となった女性の希望を可能な限り聞いたうえで、新たな縁を取り持ったり、寄付金とともに修道院へ出家させたりするそうなのだ。
おかげで不気味がっているのは娘を差し出さねばならない困窮した貴族の家々ばかりで、平民たちは呑気にも次に来る奥さんは何を希望して次の場所へ行くのか賭けるほどだった。
――では、侯爵様の次の奥様は一体誰になるのだろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる