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日常編

ゲーム

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私は、推しから何の見返りもなく
“愛してる”と言われるというだけの魅惑のゲームの只中にあった。

お金払わなくていいんですかね?
録音したい…!
冷静になろうとするも、できそうにない。
なぜなら、今まさにフィリップに攻められているからだ。

「また負けだね姉さん。もう、真面目にやってよ?」

「真面目にやってるつもりなんだけど…。」

あなたの攻撃力が高すぎるとはとても言えない。ただの変態になってしまう。

「じゃあ、もう一回」

只今、三連敗中。
私はフィリップが口を開く前に反撃に出た。

「その美しい蒼い瞳が本当に好き。
…えっとそれに優しい性格も声も全部。
あ、愛してるわ」

「わぁありがとう姉さん!
そんな風に思ってくれてたんだ!
僕も姉さんの薔薇のような髪も月の如く輝く瞳も僕に甘いその性格も全部全部愛してるよ。」

グハッ

あまりにもダメージが大きい。
思わず顔を背けたが、フィリップは止まらない。

「姉さんの看病してくれる優しい手が好き。我が儘を聞いてくれる時の優しい笑顔が好き。それにね─」

「ストーップ。もう分かったわ。私の負けでいいから」

「えー!またなの姉さん?」

まだ言い足りないと騒ぐフィリップの将来の人たらし具合を想像しながら、いつか死人が出るんじゃないかと考える。

彼の能力の高さは、底知れずだ。遊んでいるだけのように見えて、家庭教師にも厳しく指導されている。

聞くところによると、一度読んだことは忘れず一部の知識は家庭教師の知識に追い付く勢いだと言う。

さすが、フィル…。
ってそうじゃなくて。

私は慌てて提案した。

「私が知ってるおすすめのゲームがあって…。次はそれをやりましょう?」

「…もう仕方ないな。何ていうゲーム?」

「名前は確か…マジカルバナナ」

「バナナってあの黄色い?」

「そう、あのフルーツ!これは、リズムに乗って遊ぶ連想ゲームよ。」

フィリップに簡単にゲーム内容を説明する。

「とりあえず、やってみましょう?
マジカルバナナ~バナナと言ったら黄色い♪」

「黄色いと言ったら月?」

「月と言ったら夜~♪」

「夜と言ったら暗闇」

「暗闇と言ったら出口がない♪」

「出口がないと言ったら監禁」

「…か、監禁と言ったらそれダメ絶対!」

「姉さんそれ連想じゃないよ?」

「フィリップの口から監禁って出てびっくりしちゃった」

「…おかしな姉さん」

不穏な連想が続き、ストップをかけたが私は思う。

─連想ゲームってもっと平和な感じじゃなかったっけ?
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