ふくよかな姉と美貌の妹

ぴぴみ

文字の大きさ
1 / 1

毒花

しおりを挟む
「お願い…!めないで!
私は、クラウド様と将来を誓い合ったの…!」

ふくよかな肢体したいを、そうと見られないよう、胸を強調するようなワンピースで隠し、エリーは主張する。

心配そうな顔で見るのは、彼女の両親と、
村のアイドルになりつつある美貌の妹だ。

「どうしても、あの人と結婚するのかい?」

顎髭あごひげを蓄えた父親が聞く。

「さっきから、そう言ってるでしょ…!
あんなに素敵な人、他にいないわ!
あの人だけが私のことを分かってくれてる!」

「あなたは、だまされているのよ。どこかの国の王子だなんて、本当に信用できるの?」

母親もなんとか思いとどまってはくれないかと、エリーの肩を優しく包む。

しかし、彼女の心には響かない。

「母さんだって、父さんと結婚するの、散々反対されて押しきったんでしょ?
どうして、私だけが我慢しなくちゃいけないの!?」

そのとき、涼やかな声がした。

「姉さんの好きにさせてあげたら、いいじゃない」

妹のカリンだった。
エリーは驚いたように妹の顔を見る。

「あなたは、賛成してくれるの?」
「もちろんよ。私は大事な姉の幸せを願ってる」
「…ありがとう」

マリーは複雑な思いで礼を言った。

自分とは何もかもが違う、美しい妹。
村の住人から敬われる巫女の家系なれど、皆から人気があるのは、いつも妹。
そんな妹に、性格の面でも負けてしまうのか…。



いつも、悔しい思いをしていた彼女の心に、彼─クラウドは蛇のように忍び寄った。

「君の方がずっとかわいいよ。みんな、見る目がないね」

それから、マリーの心にずっと彼がんでいる。


**

深夜、妹のカリンは考えていた。

─結婚でもなんでも、好きにさせたらいいのよ。あの場でなんて言ったところで、姉さんは耳を傾けなかったでしょうし。

我が家の血の力は、富を生むもの。
姉の力は、その中でも先祖返りと呼べるほどに強い。

将来の相手も、それ相応の家の中から選ばれるはずだった。

それをうらやんだこともあったけれど、今となってはどうでもいい。

仮に、クラウド様とやらの家が、王子など‥とんでもない、黒い噂が絶えない家だと知っていて、姉の情報を売ったのだとしても、誰に知られることもないでしょう。

遠からず、殺されて、死ぬ男。
私の未来視という力が、教えてくれたのです。

姉は、出戻ってくるでしょう。
身体と価値を汚されて。

私は、ただ口をつぐんだだけ。
それに何のとががあるというのでしょうか?
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

(完結)妹の身代わりの私

青空一夏
恋愛
妹の身代わりで嫁いだ私の物語。 ゆるふわ設定のご都合主義。

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

2回目の逃亡

158
恋愛
エラは王子の婚約者になりたくなくて1度目の人生で思い切りよく逃亡し、その後幸福な生活を送った。だが目覚めるとまた同じ人生が始まっていて・・・

姉の引き立て役の私は

ぴぴみ
恋愛
 アリアには完璧な姉がいる。姉は美人で頭も良くてみんなに好かれてる。 「どうしたら、お姉様のようになれるの?」 「ならなくていいのよ。あなたは、そのままでいいの」  姉は優しい。でもあるとき気づいて─

【完結】大好きな彼が妹と結婚する……と思ったら?

江崎美彩
恋愛
誰にでも愛される可愛い妹としっかり者の姉である私。 大好きな従兄弟と人気のカフェに並んでいたら、いつも通り気ままに振る舞う妹の後ろ姿を見ながら彼が「結婚したいと思ってる」って呟いて…… さっくり読める短編です。 異世界もののつもりで書いてますが、あまり異世界感はありません。

ざまぁの後~妹への復讐と私の幸せ~

ぴぴみ
恋愛
“妹への復讐と私の幸せ”のその後の話。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

全てを奪っていた妹と、奪われていた私の末路

こことっと
恋愛
妹のマティルデは私の全てを奪う。 まるで、そう言う生物であるかのように。

処理中です...