2 / 3
もしもの世界
しおりを挟む
日差しが降り注ぎ、瑞々しい白薔薇を明るく照らし出す。
小鳥は囀ずり歌歌う。今日という日を祝福するように。
─佳き日だこと
ラフレシアは蔦に手を絡ませながら心の内で思った。
笑い駆ける子どもたちを見て、ふふと知らず微笑む。平和そのものの光景だ。
美しいもので溢れた国。
「…許せないわ。」
しかし口に出た言葉にはありありと不穏な響きが籠っていた。
これはもしもあったかもしれない物語。
別の過去のお話。
**─**─**─**─**─**─**─**─
その日ラフレシアの元に一通の手紙が届いた。
彼女に心底惚れ込み、しはしば季節の挨拶と共に情報を差し出してくれる者からだ。
穏やかな顔で読み進めていた彼女は、ピタリと止まり執事に言った。
「出かけるわ。」
かくして、心の赴くまま歩を進めたラフレシアは一人の令嬢と出会う。
澄んだ湖にかかる真っ赤な橋。その真ん中辺りで項垂れ、ただ静かに水面を見つめているまだ少女とも呼べる年頃の娘。
どこか悲しげで庇護欲を誘う姿。彼女が誰なのかラフレシアには分かっていた。
「協力してくださらない?」
突然ふわりと風が吹く。二人の女性の髪を撫でるように軽やかに過ぎ去り、心地よさだけが残る。
後に彼女は語る。
─抗いかだい運命であった、と。
出会うべくして出会った二人の女は目的を同じくして、手を取り合った。
「なぜ…。」
老獪な貴族が青ざめる。
愚鈍な王子を隠れ蓑に貴賤を問わず子供の人身売買をしていた組織の元締めの男。
数年にわたり私腹を肥やし、贅の限りを尽くした。
王子が書類に違和を感じていたら、もしくは有能な部下がいたら気づけていたこと。
またある者は涙ながらに感謝する。
「ありがとうございます…!ほんとに…何と申し上げたらいいか…。」
王子付きのメイドとして仕えていたもの。
少しばかり顔が良かったために、王子お気に入りの男爵令嬢に嫉妬されて盗人の汚名を着せられていた。
鞭打たれた肌には消えない跡が残り、泣き暮らす日々。
彼女の復讐をラフレシアはほんの少しばかり手伝っただけ。
悪意なき相手を故意に傷つけた者は、それ相応の報いを受けるべきだ。
そうでしょう?
「同士諸君!今こそ立ち上がるとき!」
王制に不満を抱きながらも、資金がなく仲間が足りず燻っていた者は声を限りに訴える。
そんな者を陰から支援する。
仲の良い貴族にはそれとなく情報を伝え、賢い者は亡命する。
国は自然瓦解する。
残ったのは、君主制を廃止せざるを得なくなった国とその民たち。
新しい指導者に導かれて、別の国に今生まれ変わろうとしている最中。
しかし、とうに、仲の良いヴェルン国女王に誘われて居を移していたラフレシアには関係のないこと。
傍らには第一王子の元婚約者、悪役令嬢と蔑まれた彼女がいたそうな。
真偽は定かではない。だが恐らく確かなことなのだろう。
王子には、ヴェルン国女王の王配として、生まれ変わり励む道もどこかにあったかもしれない。
だが彼女の逆鱗に触れたことでその道は絶たれた。
美しい花には二面性がある。毒と薬。似て非なるもの。だが実質同じもの。
どう使うか以前に、毒になるも薬になるも彼女次第。
美しく残酷な花。
世に多くの花はあれど、彼女を表す花はない。ただ美しく、気ままに彼女は移ろい咲き誇る。周囲を彩り染めながら。
小鳥は囀ずり歌歌う。今日という日を祝福するように。
─佳き日だこと
ラフレシアは蔦に手を絡ませながら心の内で思った。
笑い駆ける子どもたちを見て、ふふと知らず微笑む。平和そのものの光景だ。
美しいもので溢れた国。
「…許せないわ。」
しかし口に出た言葉にはありありと不穏な響きが籠っていた。
これはもしもあったかもしれない物語。
別の過去のお話。
**─**─**─**─**─**─**─**─
その日ラフレシアの元に一通の手紙が届いた。
彼女に心底惚れ込み、しはしば季節の挨拶と共に情報を差し出してくれる者からだ。
穏やかな顔で読み進めていた彼女は、ピタリと止まり執事に言った。
「出かけるわ。」
かくして、心の赴くまま歩を進めたラフレシアは一人の令嬢と出会う。
澄んだ湖にかかる真っ赤な橋。その真ん中辺りで項垂れ、ただ静かに水面を見つめているまだ少女とも呼べる年頃の娘。
どこか悲しげで庇護欲を誘う姿。彼女が誰なのかラフレシアには分かっていた。
「協力してくださらない?」
突然ふわりと風が吹く。二人の女性の髪を撫でるように軽やかに過ぎ去り、心地よさだけが残る。
後に彼女は語る。
─抗いかだい運命であった、と。
出会うべくして出会った二人の女は目的を同じくして、手を取り合った。
「なぜ…。」
老獪な貴族が青ざめる。
愚鈍な王子を隠れ蓑に貴賤を問わず子供の人身売買をしていた組織の元締めの男。
数年にわたり私腹を肥やし、贅の限りを尽くした。
王子が書類に違和を感じていたら、もしくは有能な部下がいたら気づけていたこと。
またある者は涙ながらに感謝する。
「ありがとうございます…!ほんとに…何と申し上げたらいいか…。」
王子付きのメイドとして仕えていたもの。
少しばかり顔が良かったために、王子お気に入りの男爵令嬢に嫉妬されて盗人の汚名を着せられていた。
鞭打たれた肌には消えない跡が残り、泣き暮らす日々。
彼女の復讐をラフレシアはほんの少しばかり手伝っただけ。
悪意なき相手を故意に傷つけた者は、それ相応の報いを受けるべきだ。
そうでしょう?
「同士諸君!今こそ立ち上がるとき!」
王制に不満を抱きながらも、資金がなく仲間が足りず燻っていた者は声を限りに訴える。
そんな者を陰から支援する。
仲の良い貴族にはそれとなく情報を伝え、賢い者は亡命する。
国は自然瓦解する。
残ったのは、君主制を廃止せざるを得なくなった国とその民たち。
新しい指導者に導かれて、別の国に今生まれ変わろうとしている最中。
しかし、とうに、仲の良いヴェルン国女王に誘われて居を移していたラフレシアには関係のないこと。
傍らには第一王子の元婚約者、悪役令嬢と蔑まれた彼女がいたそうな。
真偽は定かではない。だが恐らく確かなことなのだろう。
王子には、ヴェルン国女王の王配として、生まれ変わり励む道もどこかにあったかもしれない。
だが彼女の逆鱗に触れたことでその道は絶たれた。
美しい花には二面性がある。毒と薬。似て非なるもの。だが実質同じもの。
どう使うか以前に、毒になるも薬になるも彼女次第。
美しく残酷な花。
世に多くの花はあれど、彼女を表す花はない。ただ美しく、気ままに彼女は移ろい咲き誇る。周囲を彩り染めながら。
25
あなたにおすすめの小説
よくある父親の再婚で意地悪な義母と義妹が来たけどヒロインが○○○だったら………
naturalsoft
恋愛
なろうの方で日間異世界恋愛ランキング1位!ありがとうございます!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
最近よくある、父親が再婚して出来た義母と義妹が、前妻の娘であるヒロインをイジメて追い出してしまう話………
でも、【権力】って婿養子の父親より前妻の娘である私が持ってのは知ってます?家を継ぐのも、死んだお母様の直系の血筋である【私】なのですよ?
まったく、どうして多くの小説ではバカ正直にイジメられるのかしら?
少女はパタンッと本を閉じる。
そして悪巧みしていそうな笑みを浮かべて──
アタイはそんな無様な事にはならねぇけどな!
くははははっ!!!
静かな部屋の中で、少女の笑い声がこだまするのだった。
婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。
風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。
※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。
断罪の準備は完璧です!国外追放が楽しみすぎてボロが出る
黒猫かの
恋愛
「ミモリ・フォン・ラングレイ! 貴様との婚約を破棄し、国外追放に処す!」
パルマ王国の卒業パーティー。第一王子アリオスから突きつけられた非情な断罪に、公爵令嬢ミモリは……内心でガッツポーズを決めていた。
(ついにきたわ! これで堅苦しい王妃教育も、無能な婚約者の世話も、全部おさらばですわ!)
婚約破棄されたので王子様を憎むけど息子が可愛すぎて何がいけない?
tartan321
恋愛
「君との婚約を破棄する!!!!」
「ええ、どうぞ。そのかわり、私の大切な子供は引き取りますので……」
子供を溺愛する母親令嬢の物語です。明日に完結します。
この悪役令嬢には悪さは無理です!みんなで保護しましょう!
naturalsoft
恋愛
フレイムハート公爵家令嬢、シオン・クロス・フレイムハートは父に似て目付きが鋭くつり目で、金髪のサラサラヘアーのその見た目は、いかにもプライドの高そうな高飛車な令嬢だが、本当は気が弱く、すぐ涙目でアワアワする令嬢。
そのギャップ萌えでみんなを悶えさせるお話。
シオンの受難は続く。
ちょっと暇潰しに書いたのでサラッと読んで頂ければと思います。
あんまり悪役令嬢は関係ないです。見た目のみ想像して頂けたらと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる