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愛、故

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「──ルナ・リンゼン、お前の行いは目に余る。これ以上、私に近づくな」
「・・・それは、私との婚約を破棄されると、そういうことでしょうか?」
「そうは言っておらん。・・・お前もそのようなこと、望まないだろう?」

ルナはその美しい月の瞳を、不思議そうにまばたいた。

「何を根拠に?」
「な…!そのようなこと、私の口からは言えん」
「いいから、おっしゃってください」

有無を言わせぬその様子に、王子は渋々口を開いた。

「いつも、私のことを見ているだろう?」
「・・・はぁ、まあ。そうですね。周りの蛆虫うじむし共が、あなたをいつも狙っていますからね」
「嫉妬か!?」
「はぁ。あなたの頭の中は、平和そのものですね」
「む…。他に何があると言うんだ?」
「宰相とか公爵と話していて、何か感じません?」
「?別に何も。いつも笑っているじゃないか」
「・・・。まあ、あなたはそれでいいと思います」
「なんだ、その呆れた顔は?俺は、いつもちゃんと考えてる!」
「そうですね。(一人称まで変わってしまって…素が出てしまっていますよ)」

ルナは、半笑いした。

「他に根拠はないのですか?」
「ふふふ。よくぞ聞いてくれた。お前が私を熱い目で見ていると、他のご令嬢方が教えてくれた」
「・・・信じたんですか?」
「間違ってはいないだろう?」
「仮にそうだとして、それは一体どんな感情からだとお思いで?」
「そ、そんなもの決まっているではないか!?」
「何です?」
「──だろう?」

あまりにも小声で聞きとれなかったので、聞き直した。

「…そんなの、【愛】ゆえに決まっているだろう?」
「は?」
「そう、恥ずかしがるな」
「・・・まさか、私があなたのことを愛していると、本気で思っていらっしゃったんですか?」

面白い冗談だと、私は可笑しげに笑った。

「・・・。」
「なんでそんなに悲しげなんですか?」
「・・お前が、お前が、酷いことを言うから…」
「悪者は私、ですか?そもそも側に寄るなと言ったのはどなたでしたっけ?」
「お前が、少しは俺のこと……」
「また、ゴニョゴニョと。言いたいことがあるなら、はっきりおっしゃってください」
「──少しは、動揺してくれるんじゃないかって思ったんだ!」
「まあ。それは・・」
「いい、みなまで言うな。お前が俺のこと、好きじゃないのは分かってる」
「そんなことありませんよ?」
「え!?」
「私、嫌いだ、なんて一言も言ってないでしょう?」
「では、好きか?」

その言葉には答えず、私はにっこり笑って言った。

「他の女に引っ掛からない限りは、お側にいてあげますよ。あなたみたいな(扱いやすい)人、他にいませんからね」



    
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