6 / 11
わがまま令嬢は改心して処刑される運命を回避したい
⑥
しおりを挟む
***
デズモンドはセアラを西棟の一室まで連れて行った。
「セアラ様、お茶をどうぞ。この紅茶好きでしたよね?」
「ええ。ありがとう」
デズモンドからにこやかにカップを勧められ、セアラは警戒しながら受け取る。もちろん口をつける気はない。
「ウェンディ様とは変わらず家に招き合ったりしているんですか?」
「ええ、まあ。仲良くしていただいておりますわ」
セアラは作り笑顔で答える。デズモンドはそれはよかったです、と笑った。
それからリボンのついた小瓶を差し出して言う。
「話というのは大したことじゃないのですよ。これは以前にも話した、うちによく出入りする商人がくれた珍しい紅茶です。前にウェンディ様と話した時、彼女も好きだと仰っていました。よろしければセアラ様の自宅に招かれた時に出して差し上げてください」
「まあ。ありがとうございます。デズモンド様。けれど、私に渡すよりも直接ウェンディ様に渡された方がいいのではなくて?」
セアラは顔が引きつりそうになるのをこらえて笑顔で言う。夢で見たのと同じシチュエーションだ。夢の中の自分は何の疑いもなく受け取っていたが、よく考えればなぜ直接渡せるものをセアラが仲介しなければならないのか。
「私から渡すよりも、仲の良いセアラ様のご自宅で一緒に召しあがる方がいいと思ったのです。どうぞお受け取りください」
「……そう?では受け取っておきますわ」
セアラは仕方なく紅茶を手に取る。家に帰ったらすぐに処分しよう、と心に決めた。
「紅茶、全く召し上がっていませんね」
デズモンドはセアラの前のカップをじっと鋭い目で見つめながら言う。セアラは一瞬言葉に詰まり、それからごまかすように言った。
「……実は先ほどもウェンディ様とお茶をいただきましたの。だからあまり喉が渇いていなくて」
「そうだったのですか。それは失礼しました」
デズモンドはすぐににこやかな表情に戻って言う。
「……最近、グレアム様とよく一緒にいますね」
少しの沈黙の後、デズモンドが静かな声で言った。
「ええ。そうですわね」
「セアラ様、失礼ですが以前はグレアム様のことをあまりよく思っていなかったのでは?どうして急に?」
「そうだったのですけれど、話してみると案外いい人だったんですの。以前の私は浅はかでしたのね。グレアム様は間違ったことを言っていないのに反発ばかりして」
「グレアム様のことがお好きなのですか?」
デズモンドは突然真剣な声で言う。セアラは唐突な言葉に眉をひそめた。
「突然ですわね。確かにお友達としては好きですけれど。それだけですわ」
「ずっと気になっていたのです。今までは私とウェンディ様以外には人を人とも思わないような態度ばかり取っていたセアラ様が、最近誰に対しても礼儀正しいと。その上、以前なら顔を見ただけで嫌そうな顔を隠しもしなかったグレアム様と頻繁に話し込んでいるなんて」
デズモンドは深刻そうな顔で言う。セアラは失礼ね、と憤慨しかけたが、言われてみれば確かにその通りだったので仕方なく黙った。
デズモンドは続ける。
「近頃のセアラ様はおかしい。私のことを意図的に避けてらっしゃいますよね?私が何かしましたか?それとも心情に変化が現れるようなことが?」
「嫌ですわ。避けてなんか。さっきも言った通り、クラスが違うのでなかなか顔を合わせる機会がないだけですわ」
セアラは素知らぬ顔で言い訳をする。
デズモンドはおそらく、セアラをウェンディを害するための都合の良い道具くらいに思っているのだろう。
少しおだてれば簡単に信用して思い通りに動いてくれるのだ。以前のセアラほど扱いやすい駒はなかったはずだ。だから急にセアラの態度が変わり、焦っているに違いない。
都合よく扱われているだけだったのにデズモンドの言葉一つに一喜一憂していたなんて、とセアラは過去の自分に同情した。
デズモンドはセアラを西棟の一室まで連れて行った。
「セアラ様、お茶をどうぞ。この紅茶好きでしたよね?」
「ええ。ありがとう」
デズモンドからにこやかにカップを勧められ、セアラは警戒しながら受け取る。もちろん口をつける気はない。
「ウェンディ様とは変わらず家に招き合ったりしているんですか?」
「ええ、まあ。仲良くしていただいておりますわ」
セアラは作り笑顔で答える。デズモンドはそれはよかったです、と笑った。
それからリボンのついた小瓶を差し出して言う。
「話というのは大したことじゃないのですよ。これは以前にも話した、うちによく出入りする商人がくれた珍しい紅茶です。前にウェンディ様と話した時、彼女も好きだと仰っていました。よろしければセアラ様の自宅に招かれた時に出して差し上げてください」
「まあ。ありがとうございます。デズモンド様。けれど、私に渡すよりも直接ウェンディ様に渡された方がいいのではなくて?」
セアラは顔が引きつりそうになるのをこらえて笑顔で言う。夢で見たのと同じシチュエーションだ。夢の中の自分は何の疑いもなく受け取っていたが、よく考えればなぜ直接渡せるものをセアラが仲介しなければならないのか。
「私から渡すよりも、仲の良いセアラ様のご自宅で一緒に召しあがる方がいいと思ったのです。どうぞお受け取りください」
「……そう?では受け取っておきますわ」
セアラは仕方なく紅茶を手に取る。家に帰ったらすぐに処分しよう、と心に決めた。
「紅茶、全く召し上がっていませんね」
デズモンドはセアラの前のカップをじっと鋭い目で見つめながら言う。セアラは一瞬言葉に詰まり、それからごまかすように言った。
「……実は先ほどもウェンディ様とお茶をいただきましたの。だからあまり喉が渇いていなくて」
「そうだったのですか。それは失礼しました」
デズモンドはすぐににこやかな表情に戻って言う。
「……最近、グレアム様とよく一緒にいますね」
少しの沈黙の後、デズモンドが静かな声で言った。
「ええ。そうですわね」
「セアラ様、失礼ですが以前はグレアム様のことをあまりよく思っていなかったのでは?どうして急に?」
「そうだったのですけれど、話してみると案外いい人だったんですの。以前の私は浅はかでしたのね。グレアム様は間違ったことを言っていないのに反発ばかりして」
「グレアム様のことがお好きなのですか?」
デズモンドは突然真剣な声で言う。セアラは唐突な言葉に眉をひそめた。
「突然ですわね。確かにお友達としては好きですけれど。それだけですわ」
「ずっと気になっていたのです。今までは私とウェンディ様以外には人を人とも思わないような態度ばかり取っていたセアラ様が、最近誰に対しても礼儀正しいと。その上、以前なら顔を見ただけで嫌そうな顔を隠しもしなかったグレアム様と頻繁に話し込んでいるなんて」
デズモンドは深刻そうな顔で言う。セアラは失礼ね、と憤慨しかけたが、言われてみれば確かにその通りだったので仕方なく黙った。
デズモンドは続ける。
「近頃のセアラ様はおかしい。私のことを意図的に避けてらっしゃいますよね?私が何かしましたか?それとも心情に変化が現れるようなことが?」
「嫌ですわ。避けてなんか。さっきも言った通り、クラスが違うのでなかなか顔を合わせる機会がないだけですわ」
セアラは素知らぬ顔で言い訳をする。
デズモンドはおそらく、セアラをウェンディを害するための都合の良い道具くらいに思っているのだろう。
少しおだてれば簡単に信用して思い通りに動いてくれるのだ。以前のセアラほど扱いやすい駒はなかったはずだ。だから急にセアラの態度が変わり、焦っているに違いない。
都合よく扱われているだけだったのにデズモンドの言葉一つに一喜一憂していたなんて、とセアラは過去の自分に同情した。
140
あなたにおすすめの小説
【完結】もしかして悪役令嬢とはわたくしのことでしょうか?
桃田みかん
恋愛
ナルトリア公爵の長女イザベルには五歳のフローラという可愛い妹がいる。
天使のように可愛らしいフローラはちょっぴりわがままな小悪魔でもあった。
そんなフローラが階段から落ちて怪我をしてから、少し性格が変わった。
「お姉様を悪役令嬢になんてさせません!」
イザベルにこう高らかに宣言したフローラに、戸惑うばかり。
フローラは天使なのか小悪魔なのか…
あなたのおかげで吹っ切れました〜私のお金目当てならお望み通りに。ただし利子付きです
じじ
恋愛
「あんな女、金だけのためさ」
アリアナ=ゾーイはその日、初めて婚約者のハンゼ公爵の本音を知った。
金銭だけが目的の結婚。それを知った私が泣いて暮らすとでも?おあいにくさま。あなたに恋した少女は、あなたの本音を聞いた瞬間消え去ったわ。
私が金づるにしか見えないのなら、お望み通りあなたのためにお金を用意しますわ…ただし、利子付きで。
公爵令嬢は愛に生きたい
拓海のり
恋愛
公爵令嬢シビラは王太子エルンストの婚約者であった。しかし学園に男爵家の養女アメリアが編入して来てエルンストの興味はアメリアに移る。
一万字位の短編です。他サイトにも投稿しています。
某国王家の結婚事情
小夏 礼
恋愛
ある国の王家三代の結婚にまつわるお話。
侯爵令嬢のエヴァリーナは幼い頃に王太子の婚約者に決まった。
王太子との仲は悪くなく、何も問題ないと思っていた。
しかし、ある日王太子から信じられない言葉を聞くことになる……。
悪女として処刑されたはずが、処刑前に戻っていたので処刑を回避するために頑張ります!
ゆずこしょう
恋愛
「フランチェスカ。お前を処刑する。精々あの世で悔いるが良い。」
特に何かした記憶は無いのにいつの間にか悪女としてのレッテルを貼られ処刑されたフランチェスカ・アマレッティ侯爵令嬢(18)
最後に見た光景は自分の婚約者であったはずのオルテンシア・パネットーネ王太子(23)と親友だったはずのカルミア・パンナコッタ(19)が寄り添っている姿だった。
そしてカルミアの口が動く。
「サヨナラ。かわいそうなフランチェスカ。」
オルテンシア王太子に見えないように笑った顔はまさしく悪女のようだった。
「生まれ変わるなら、自由気ままな猫になりたいわ。」
この物語は猫になりたいと願ったフランチェスカが本当に猫になって戻ってきてしまった物語である。
貧乏子爵令嬢は両片思いをこじらせる
風見ゆうみ
恋愛
「結婚して」
「嫌です」
子爵家の娘である私、アクア・コートレットと若き公爵ウィリアム・シルキーは、毎日のように、こんなやり取りを繰り返している。
しかも、結婚を迫っているのは私の方。
私とウィルは幼馴染みで婚約者。私はウィルと結婚したいのだけど、どうやらウィルには好きな人がいるみたい。それを知った伯爵令息が没落しかけた子爵家の娘だからと私の恋を邪魔してくるのだけど――。
※過去にあげたお話のリメイク版です。設定はゆるいです。
【完結・全10話】偽物の愛だったようですね。そうですか、婚約者様?婚約破棄ですね、勝手になさい。
BBやっこ
恋愛
アンネ、君と別れたい。そういっぱしに別れ話を持ち出した私の婚約者、7歳。
ひとつ年上の私が我慢することも多かった。それも、両親同士が仲良かったためで。
けして、この子が好きとかでは断じて無い。だって、この子バカな男になる気がする。その片鱗がもう出ている。なんでコレが婚約者なのか両親に問いただしたいことが何回あったか。
まあ、両親の友達の子だからで続いた関係が、やっと終わるらしい。
婚約破棄されてしまいました。別にかまいませんけれども。
ココちゃん
恋愛
よくある婚約破棄モノです。
ざまぁあり、ピンク色のふわふわの髪の男爵令嬢ありなやつです。
短編ですので、サクッと読んでいただけると嬉しいです。
なろうに投稿したものを、少しだけ改稿して再投稿しています。
なろうでのタイトルは、「婚約破棄されました〜本当に宜しいのですね?」です。
どうぞよろしくお願いしますm(._.)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる