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3.引き止めるのはやめてください
⑤
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「リリアーヌ、私は婚約解消なんて認めないからな」
「ジェラール様、けれど……」
「考え直して欲しい。君が考えを改めてくれるよう、私も努力する」
私は言われた言葉に戸惑ってしまった。
ジェラール様がこんな下手に出るようなことを言うのは初めてだ。
頼むような言い方をされると、高圧的に命令されるよりやりづらいから困る。
アベル様はジェラール様の方をちらりと見ると、私たちを引き離すように急ぎ足で扉の向こうへ引っ張って行った。
***
王宮の廊下まで出ると、アベル様が口を開いた。
「びっくりした。リリアーヌが来てるっていうから会いにいってみたら、兄上と揉めてるんだもん」
「お騒がせしましたわ……」
「ううん。ていうか兄上が本当にごめんね。腕大丈夫?」
「大丈夫ですわ。掴まれたとき少し痛かったですけれど」
腕をさすりながら言うと、アベル様は顔をしかめた。
まったく兄上は、とぶつぶつ文句を言っている。
「それよりアベル様。ありがとうございました。なかなか出て行けなくて困っておりましたの」
「どういたしまして。リリアーヌの役に立てたならよかった」
アベル様はにっこり笑ってそう言った。
それから真面目な顔で尋ねてくる。
「婚約解消の話をしていたんだって? あの様子だとうまくまとまらなかったみたいだけど」
「そうなんです。ジェラール様、なかなか納得してくれなくて。ジェラール様にとってもメリットの方が大きいと思うのですけどね」
私はため息を吐いて言った。
予想ではもっとあっさり話が進むと思っていたのに。
アベル様はそんな私を見てくすくす笑って言う。
「無事に婚約解消できるといいね。僕としても早くリリアーヌと婚約したいから、円滑に進んでくれると助かるな」
「その話はお断りしたではありませんか」
「リリアーヌの結婚相手として僕以上の適任はいないと思うよ?」
アベル様は自信満々にそんなことを言う。
私は少々呆れてしまった。
「私はアベル様のことを生意気な弟のようにしか思えませんので無理です。お庭で転んでぴぃぴぃ泣いていた頃の印象が強くて」
「ひどいな、僕はこんなに立派に成長したのに……! 僕を選んでよ、リリアーヌ!」
「しつこいですわね! 前にも言った通り、今はそんなこと考えている暇はないのですわ!」
私が呆れて言うと、アベル様は納得のいかなそうな顔をしながらも歩き出した。
私は彼に手を引かれるまま、王宮の廊下を歩く。
アベル様が冗談を言ってくるせいでいつものようにつんけんしてしまったけれど、彼には本心から感謝していた。
先ほどアベル様がジェラール様を引きはがしてくれた時、本当は少しすっきりしてしまったのだ。
焦ったジェラール様の顔はおかしかった。
私は笑い声を零さないよう気をつけながら、足を進めた。
「ジェラール様、けれど……」
「考え直して欲しい。君が考えを改めてくれるよう、私も努力する」
私は言われた言葉に戸惑ってしまった。
ジェラール様がこんな下手に出るようなことを言うのは初めてだ。
頼むような言い方をされると、高圧的に命令されるよりやりづらいから困る。
アベル様はジェラール様の方をちらりと見ると、私たちを引き離すように急ぎ足で扉の向こうへ引っ張って行った。
***
王宮の廊下まで出ると、アベル様が口を開いた。
「びっくりした。リリアーヌが来てるっていうから会いにいってみたら、兄上と揉めてるんだもん」
「お騒がせしましたわ……」
「ううん。ていうか兄上が本当にごめんね。腕大丈夫?」
「大丈夫ですわ。掴まれたとき少し痛かったですけれど」
腕をさすりながら言うと、アベル様は顔をしかめた。
まったく兄上は、とぶつぶつ文句を言っている。
「それよりアベル様。ありがとうございました。なかなか出て行けなくて困っておりましたの」
「どういたしまして。リリアーヌの役に立てたならよかった」
アベル様はにっこり笑ってそう言った。
それから真面目な顔で尋ねてくる。
「婚約解消の話をしていたんだって? あの様子だとうまくまとまらなかったみたいだけど」
「そうなんです。ジェラール様、なかなか納得してくれなくて。ジェラール様にとってもメリットの方が大きいと思うのですけどね」
私はため息を吐いて言った。
予想ではもっとあっさり話が進むと思っていたのに。
アベル様はそんな私を見てくすくす笑って言う。
「無事に婚約解消できるといいね。僕としても早くリリアーヌと婚約したいから、円滑に進んでくれると助かるな」
「その話はお断りしたではありませんか」
「リリアーヌの結婚相手として僕以上の適任はいないと思うよ?」
アベル様は自信満々にそんなことを言う。
私は少々呆れてしまった。
「私はアベル様のことを生意気な弟のようにしか思えませんので無理です。お庭で転んでぴぃぴぃ泣いていた頃の印象が強くて」
「ひどいな、僕はこんなに立派に成長したのに……! 僕を選んでよ、リリアーヌ!」
「しつこいですわね! 前にも言った通り、今はそんなこと考えている暇はないのですわ!」
私が呆れて言うと、アベル様は納得のいかなそうな顔をしながらも歩き出した。
私は彼に手を引かれるまま、王宮の廊下を歩く。
アベル様が冗談を言ってくるせいでいつものようにつんけんしてしまったけれど、彼には本心から感謝していた。
先ほどアベル様がジェラール様を引きはがしてくれた時、本当は少しすっきりしてしまったのだ。
焦ったジェラール様の顔はおかしかった。
私は笑い声を零さないよう気をつけながら、足を進めた。
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