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夢から覚めた生活

囚われの身のアリス⑤

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気付けば私はウサギさんを抱いたまま眠っていたらしい。朝日がぼんやりと窓から差し込んでいた。
私は椅子を窓の下まで持って行くと、そこに登り、ウサギさんに外の景色を見せてあげた。
「どう?貴女が生まれて初めての朝よ。とっても気持ちが良いでしょう?」ウサギはただ黙ったまま、ジッと外を見ている。
「外はね、本当はもっと広くて、自由で、素敵なの。町には人が沢山いて…こことは全然違うのよ。」この窓から見える景色と言えば、まず地面が見える。それから大きな木が1本と高い塀。もう少し覗けば空がかろうじて見える位だ。前はとても悲しかった。けれど今はウサギさんがいるから、悲しいことはあっても、寂しくはない。
「貴女がいてくれてとても嬉しいわ、すぐにお友達も作ってあげるからね?」
私はウサギさんを椅子に置いて、薪をくべるために窓から離れた。
…ーッリーン!リーン!!
突然の高い音に体がビクリと反応した。
どうやら窓から何か落ちてきたみたい。なんだろう?
小さくて丸い…鈴?銀で出来ていて、細かな細工が施してある鈴だ。一体誰が落としたのか。
すぐにドタバタと慌ただしく窓に近付く足音が聞こえてきた。
「あー!やっぱり入っちゃったのか!?参ったな…」
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