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私をこの世界に堕としたのは、だぁれ?

囚われの身のアリス⑱

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乱暴に私の手から鈴をもぎ取ったレイシーは、何度も鈴を指で擦っている…汚れが着いていた部分を。
「…ハハッ…」レイシーは捨てるように笑ったかと思うと、窓に背を向けて力なくしゃがみ込んだ。
「…レイシー?」私は心配で名を呼んでみた。
「血の汚れってさ、銀につくとなかなか落ちないんだぜ?」レイシーは天を仰ぐ。
「前に父さんのさ、手伝いで少しだけ銀細工を彫らせて貰った事があったんだ。その時、俺指をケガしちゃって、商品に血がついて…完全には落とせなくて…納品出来なかったんだ…。」レイシーの声がどんどん小さくなっていく。
「母さん、どこ行っちゃったんだよ…………あの噂………」レイシーは立ち上がる。
「俺、やっぱり主様のところに行ってくるよ」そういうと、ランタンを持って走り出してしまった。
「レイシー…待って!!行かないで!!」
レイシーは止まらない。激しく揺れるランタンの灯りがどんどん小さくなっていく。
「レイシー!!!!」私は声の限り叫んだけれど、レイシーには届かなかった。
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