オハギとオモチ ~夏編~

水無月あん

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「できたー!」
オハギが、叫んだ。
涙のしずくをぬいあわせた、ながーいものを手に持っている。

「…なに、それ?」

「なみだのマフラーよ!」

「なみだのマフラー? それを首にまくの?」

「もちろん! これを首にまいたら、涙のしずくが、あっという間に、ひやしてくれるのよ。どんな暑さがこようとも、体中が、いつでもひんやり。こんどこそ、完璧。夏よ、いつでもいらっしゃい!」
きらきら光るマフラーを、頭の上にかかげ、仁王立ちのオハギ。

「オハギが完璧って言って、完璧だったことってないよね…?」
オモチが、じとっとした目で言う。

「こら、オモチ。失礼ね! 見てなさい」
そう言うと、オハギは、できたてのマフラーを首にまいた。

そのとたん、涙のしずくが、いっせいに動きだした。
オハギの首のまわりを、小さな川が流れ始めたみたい。

「うわ、すごい! しずくが、動いている!」
オモチがびっくりした声をあげると、オハギが、にんまりした。

「ほら、ごらん。大成功。しずくが流れて、あっという間に、ひんやり冷たくなってくる…。うん?」

オハギが、首にかけたマフラーのはしっこを手にもち、首をかしげた。

「オハギ、どうしたの?」

「あんまり、冷たくならないの…。あっという間に、ひえるはずなんだけど…」

「あ、呪文を、言い間違えたのかな? ほら、目のいい、立派な助手のぼくが、涙をとりに外にでてた間、オハギだけで呪文を唱えてたよね?」

「はあ?! オモチがいなくても、一字一句、しっかり、唱えたわ!」
オハギが抗議の声をあげる。

「ほんとに?」

「あたりまえよ。私は立派な魔女なのよ。…って、あれっ?! あったかくなってきた?!」

「え?!」

「あついっ! なに、これっ?! なんで、あついの?!」
オハギが.、あわててマフラーを首からはずした。

「あついって…?!」
オモチが、まっしろな手で、そろっとマフラーをさわる。が、あわてて、手をひっこめた。

「うん、あついね。それに、マフラーのはしっこだけ、すごく、きらきらしてる」
オモチの言葉に、はっとしたように、マフラーを見るオハギ。

そして、
「ああ! オモチー!」
と、大きな声をだした。

「なんだよ? そんな、大きな声で」
思わず、後ずさるオモチ。

「この、きらきらしてるとこ、オモチがとってきた涙をつなげたとこ。これ、うれし涙じゃない?!」

「うれし涙?」

「涙を取った時のこと、話して!」

オモチは、思い出しながら、話し出す。
「…ハリネズミくんが大事にしていたカイガラを、ぼくが見つけてあげたんだ。その時、泣きだして、ハンカチですいとった。確か、うれしくて涙がとまらなくなったって、言ってたかも…」

「ほら、ごらん。立派なうれし涙じゃない!」

「でも、涙は涙だろう? なにが違うの?」

「全然、ちがうわよ! 悲しい涙は冷たくて、うれし涙は、あつい涙なの。寒い時なら、重宝するんだけどね」
そう言うと、オハギはため息をついた。

「ハンカチをしぼった時、とても、きれいな涙だなあ、とは思ったのよね…。あの時、確認しとけば良かった」

「じゃあ、うれし涙のとこだけ、ほどいてみたら? そしたら、冷たい涙ばかりになるよ」

「無理ね。うれし涙がまざったら、もう、他の涙も冷たくはならないから。しょうがない。全部ほどいて、魔法に使うため育てている草花にでもまくとするか。草花たちは喜んで、一気にのびて、一気に収穫できるだろうから。そうしたら、せっかくの涙も無駄にならないしね」

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