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最悪の夢
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おやつもわけてあげ、わけのわからないところへ連れてこられ、わけのわからないことを一方的に言われているのに、こんな事まで言われるすじあいなんて全然ない。
断固、断る! だって、絶対に無理だから!
きゅっと口を結んだ私をさとすように、ケヤキの妖精が声をやわらげた。
「よく聞け、人の子よ。わしが自ら行けるものなら、誰にも頼まぬ。わしはケヤキの妖精。ケヤキを守ることが役目。じゃが、妖精の世と人の世の通り道になっているこの大事なケヤキは、今、人の世での姿では、痛々しい姿になっておる。知ってのとおり、おぬしのじいさんに短く切られすぎたからのう。もう少し枝が伸びてくるまでは、心配で心配で、つきっきりじゃ」
うっ……おじいちゃん……。
そう言われると申し訳ない気持ちが……。
ケヤキの妖精が、たたみかけるように言った。
「かといって、他の妖精に頼めば、どんな対価を払わされるか、はたまた大事なおくりものを横取りされるかわからん。そんな時、おぬしに出会った。わしとて、人の子に頼むなど考えたこともなかったが、おぬしは持っておるからの」
「私、何も持ってないけど……?」
「いや、持っておる。妖精の目と耳をな。ゆえに、わしが見えるし、声が聞こえるのじゃ。妖精のたのみごとをするのなら、見合ったものをしなくちゃならん。おぬしのその力を見つけた以上は、それを使ってもらわねばな。それになにより、おぬしのくれたおやつはうまい。じゃから、わしも気合いを入れて、大事なたのみごとをおぬしにするんじゃ」
ありがたがらないといけない感じを、やたらと醸し出してくるケヤキの妖精。
いや、それ、めちゃくちゃ迷惑だから……。
でも、意味のわからない理屈を並べる妖精を前に、私の力がぬけた。
なんだか、必死に断ることがばかばかしくて、面倒になった。
だって、現実とは思えないから。
きっと夢だ。それも最悪の……。
「わかった。鷲でも妖精でも怪物だって、なんだっていい。とりあえず、やってみる」
なげやりに言うと、ケヤキの妖精は手足を振りまわしはじめた。
「わしやま様に、なんという物言いじゃ! こんな無礼なやつに、これほど上等な礼などもったいない! やめじゃ、やめじゃああ!」
あ、それなら良かった。
と思った時、ケヤキの妖精の振りまわしていた手足がぴたりと止まった。
「……いや、いかん、いかん。礼はせねばならん。わしは恩を忘れる失礼な妖精ではない。受けた恩には必ず礼を返す、妖精の中の妖精。きっすいの妖精なんじゃ!」
つったっている私の前で、ケヤキの妖精は勝手に怒って、勝手に落ちついたみたい。
「それにじゃ、いったん口に出した妖精のたのみごとは、なしにはできんかったわ」
そう言うと、ケヤキの妖精は、山のふもとに向かってひょろりと細い緑色の手をのばした。
「では、行け。人の子よ」
「は……?」
あっけにとられる私に、妖精は面倒くさそうに付けくわえた。
「なんじゃ? まだ、なにかあるのか?」
「おおありだよ!」
私は自分でもびっくりするくらいの大声で叫んでいた。
「勝手なことばっかり言うくせに、ぜんぜん説明が足りないんだけど! まさか、私一人で行くの? 道は? 道も知らないのに? それにおくりものって何? そんなに大事なおくりものなら、私にたのまず魔法でも使ったら? 妖精なんでしょ? 私は、ただの子どもで、なんにも持ってない。もう、家に帰らせてよっ!」
緑色の目が大きく見ひらかれた。
何も言わず、ただ私を見つめている。
私は、急に不安になった。
いつもなら、すぐに言い返してくるケヤキの妖精が黙っているのは、とても不気味だったから。
断固、断る! だって、絶対に無理だから!
きゅっと口を結んだ私をさとすように、ケヤキの妖精が声をやわらげた。
「よく聞け、人の子よ。わしが自ら行けるものなら、誰にも頼まぬ。わしはケヤキの妖精。ケヤキを守ることが役目。じゃが、妖精の世と人の世の通り道になっているこの大事なケヤキは、今、人の世での姿では、痛々しい姿になっておる。知ってのとおり、おぬしのじいさんに短く切られすぎたからのう。もう少し枝が伸びてくるまでは、心配で心配で、つきっきりじゃ」
うっ……おじいちゃん……。
そう言われると申し訳ない気持ちが……。
ケヤキの妖精が、たたみかけるように言った。
「かといって、他の妖精に頼めば、どんな対価を払わされるか、はたまた大事なおくりものを横取りされるかわからん。そんな時、おぬしに出会った。わしとて、人の子に頼むなど考えたこともなかったが、おぬしは持っておるからの」
「私、何も持ってないけど……?」
「いや、持っておる。妖精の目と耳をな。ゆえに、わしが見えるし、声が聞こえるのじゃ。妖精のたのみごとをするのなら、見合ったものをしなくちゃならん。おぬしのその力を見つけた以上は、それを使ってもらわねばな。それになにより、おぬしのくれたおやつはうまい。じゃから、わしも気合いを入れて、大事なたのみごとをおぬしにするんじゃ」
ありがたがらないといけない感じを、やたらと醸し出してくるケヤキの妖精。
いや、それ、めちゃくちゃ迷惑だから……。
でも、意味のわからない理屈を並べる妖精を前に、私の力がぬけた。
なんだか、必死に断ることがばかばかしくて、面倒になった。
だって、現実とは思えないから。
きっと夢だ。それも最悪の……。
「わかった。鷲でも妖精でも怪物だって、なんだっていい。とりあえず、やってみる」
なげやりに言うと、ケヤキの妖精は手足を振りまわしはじめた。
「わしやま様に、なんという物言いじゃ! こんな無礼なやつに、これほど上等な礼などもったいない! やめじゃ、やめじゃああ!」
あ、それなら良かった。
と思った時、ケヤキの妖精の振りまわしていた手足がぴたりと止まった。
「……いや、いかん、いかん。礼はせねばならん。わしは恩を忘れる失礼な妖精ではない。受けた恩には必ず礼を返す、妖精の中の妖精。きっすいの妖精なんじゃ!」
つったっている私の前で、ケヤキの妖精は勝手に怒って、勝手に落ちついたみたい。
「それにじゃ、いったん口に出した妖精のたのみごとは、なしにはできんかったわ」
そう言うと、ケヤキの妖精は、山のふもとに向かってひょろりと細い緑色の手をのばした。
「では、行け。人の子よ」
「は……?」
あっけにとられる私に、妖精は面倒くさそうに付けくわえた。
「なんじゃ? まだ、なにかあるのか?」
「おおありだよ!」
私は自分でもびっくりするくらいの大声で叫んでいた。
「勝手なことばっかり言うくせに、ぜんぜん説明が足りないんだけど! まさか、私一人で行くの? 道は? 道も知らないのに? それにおくりものって何? そんなに大事なおくりものなら、私にたのまず魔法でも使ったら? 妖精なんでしょ? 私は、ただの子どもで、なんにも持ってない。もう、家に帰らせてよっ!」
緑色の目が大きく見ひらかれた。
何も言わず、ただ私を見つめている。
私は、急に不安になった。
いつもなら、すぐに言い返してくるケヤキの妖精が黙っているのは、とても不気味だったから。
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