【完結】ヴェノリュシオン ~ 違法研究所を摘発したら、実験体にされていた遺伝子組み換えされた子供を育てることになりました ~ 

ツヅラ

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6話 外敵

02

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 今に始まった事ではないが、警戒をS08に任せ、牧野への嫌がらせを優先させるO12とT19には、困ったものだ。
 それだけ、彼らが牧野へ心を開きだしているということなのだろう。
 牧野の声色も、最初に比べてずっと柔らかくなっている。

「Sも混ざっていいんだよ?」
「断る」

 隣に座り、果物の皮を剥こうとしているP03が首を傾げながら尋ねるが、すごい勢いで拒否された。

「マキノのこと、嫌い?」
「…………嫌い、ではない。けど」

 人間は笑って、自分たちを傷つける。
 指先の動きひとつ観察され、行動の自由はない。
 自分たちの行いひとつ責任を取らず、邪魔で、用済みなら喜びも落胆もなく、ただ廃棄する。
 最初から興味なんてなかったように。

「…………」

 夜、少し騒がしくなるたびに、耳を覆うように掛けられる布団を思い出しては、視線を逸らす。
 そこには、手を震わせながらもビクともしない果実の皮と戦うP03の姿。

 先程、G45が同じ果実を割って食べていたはずだが、どうやら軽々と割っていた果実は、P03にとって硬い代物だったらしい。
 手を出せば、P03も無言でそれを手に乗せてくる。

「ふんっ……」

 結構硬かったと思いながら、果実を割れば、果汁が溢れて、零れ落ちていく。

「これ、この水は飲むのか?」

 割った衝撃で半分ほど流れ出てしまったが、果実の中身はほとんどが空洞だ。食べられそうな部分は少ない。

「周りも食べれたって」
「……たぶん、俺でも齧れないぞ……これ」
「だよね」

 この硬い皮を噛み砕けるのはG45くらいだろう。
 ふたりは、辛うじて食べられそうな白い部分を指でひっかいてみるが、外皮よりも少しだけ柔らかいというくらいで、大人しくほんのりと甘みを感じる果汁を口に含む。
 腹の足しにならなくても、何も加工をせずに飲める水は貴重だ。持ち運べて、素手で割れるし、牧野も喜ぶかもしれない。

「…………」

 つい頭に過ってしまったことに、果汁を飲み込む喉を止めてしまう。

「Sってば、真面目」
「なっ……!? これは仕事だろ!? だから……その……」

 人間に有用な動植物を報告するのは、当たり前。
 だから、これを牧野に伝えるのは、決して間違っていない。

 何故か、向こうでは、G45たちが牧野に虫を食べさせようとして、断られているし、絶対にこちらの果実の方が喜ぶ。
 牧野は自分たちと異なり、動物に関しては必ず加工をする。植物も洗いたがるし、例外なのが、こういった果実だ。

「俺は見張りをしてるから、Pが伝えてきてくれ」

 まだ残っている果汁をP03へ差し出す。
 
 心が読めなくたってわかる。いつも夢の中だけでしか会えなかったP03の表情が、ここ数日間、本当に嬉しそうなのくらい。
 理不尽で、苦しい思いなど、もうしなくていいのだから。
 それをもたらしたのは、あの男だ。
 無感情の声ではない声を出す、牧野だから。

「マキノー!」

 隣で牧野へ手を振るP03に、重く巡っていた思考が掻き消される。

「どうした? って、ちょっと待て。こいつら、どうにかしてからな!!」

 虫はいないようだが、三人にしがみつかれている牧野は、何故だとばかりに表情を引きつらせながら、諦めて三人を引きずりながら、こちらに歩いてきた。

「ココナッツみたいなものか……? 東京に? まぁ、植物園とかならあったのか……」

 先程の果汁を口につける牧野は、予想通りいくつかサンプルを持ち帰りたいと、頭ほどの大きさがある果実を変異種の死体に乗せる。

「周り食べないの?」
「ココナッツなら食べられるんだろうが、歯が折れそう……」
「ふーん……」

 牧野が割れたそれを確認していれば、その隣でものすごい音を立てながら果実を噛み砕いているG45へ目を向け、そっと中身が空になった果実をT19へ渡し、叩き落とされた。

 G45が特別な顎を持っているのだと、何故か責められているG45がその果実を構えて、また喧嘩が始まりそうな気配に、牧野が止めようとした時だ。
 全員が、一斉に同じ方向へ目をやった。

「?」

 遅れながら、牧野も同じ方向へ目をやるが、何もいないし、何も聞こえない。
 だが、五人の様子は、何かに警戒するように、じっと森の奥を見つめていて、声をかけることすら憚れた。
 音を立てないように、じっと待っていれば、ゆっくりと警戒が解かれていく。

「O見えたか?」
「いや、ほとんど見えなかった」

 地面を這っているようで、低い木々の間に姿のほとんどが見えなかった。
 体の大きさすら、はっきりと捉えられたわけではない。音も周囲の枝を折る音や地面を這う音だけだ。大型であろうということしかわからない。

「匂いは強くないけど、ギリ追えると思いますよ。どうします?」

 T19が牧野を見上げながら確認する。
 変異種の狩猟に関して、最終的な判断は牧野に任せられており、今のところ、小型の変異種だけを狙うようにしている。
 体の大きさというものは、直接的に力の強さに結び付く。故に、彼らよりも明らかに大きな個体は避けていた。

「今、そいつはいないのか?」
「音は遠ざかってます。妙な音だが、おそらく誘っているわけではないかと」
「そうか」

 セーフ区画に巨大な変異種はいない。だからか、今までヴェノリュシオンたちが、ここまで明らかに警戒したことはなかった。
 だからこそ、さきほどの様子は注意すべき変異種であることを示していた。
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