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8話 戦闘
03
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足元から絶えず聞こえる多足類の足音が、地中の空洞に反射して、何十にも重なり鼓膜を震わせる。
「…………」
正確な居場所を探るのは、向こうが万全な状態である状況では難しい。
T19が提案したような爆弾で、地中から炙り出すのも、不確定要素が多い状況では、川窪や牧野から渋られている。
そうなると、こちらを攻撃するために変異種が顔を出てきた時に、反撃するしかない。
S08は、数歩歩くと、足を止めた。
そして、何度か足を動かすと、
「ふんッッ!!」
意気込み、片足を強く地面に叩きつけた。
地面スレスレに掘られた穴の一部が崩れ落ちる様子に、T19は驚き半分呆れ半分にS08へ目をやった。
「ほんとバケモノ……」
しかし、S08の予想外の攻撃に驚いたのは、変異種も同じで、新しく開いた穴から吹き上がってくる匂い。
S08とT19が跳んで逃げた直後に、顔を出した変異種は、空中で体を折り曲げると、もう一度地面に逃げ込もうと垂直に地面に頭を突っ込んでいった。
頭が消えた直後、S08はもう一度変異種に飛び込むと、その足に向かって拳を振り下ろした。
「のわっ!?」
派手な音を立てるわけでもなく、折れた足は楸の足元に突き刺さった。
「え、マジ? 素手で足折った? マジ?」
足元に突き刺さった変異種の足のひとつを手に取り、軽く叩いてみても、その硬さはなんとなくわかる。
付け根からもぎ取るように折れているところを見る限り、変異種の外皮を傷つけたというより、弱いところに本来かからない力が掛かり、折れたようだ。
自分たちからすればありえないが、その彼らですら素手であの外皮を割ることは難しいということになる。
「足の本数分繰り返せば、いけるな」
「絶対、途中から体出さなくなると思うんだけど」
「そうなったら、引きずり出せるだろ。足減ってるんだし」
実験体の中では、最年長であるし、頭も悪くないと思っているが、フィジカルの強さからか、戦闘になると頭を使わなくなるのは本当に何とかしてほしいと思いながら、近づいてくる匂いに、川窪を掴み、その場から離れる。
大きく飛び退いた地面から現れた変異種は、頭だけを出すと、すぐに地面に潜っていった。
「もう学習されてるみたいだな」
川窪の冷静な分析に、T19は嫌そうに目を細めた。
「G! ちょっとその辺でじたばたして!」
「は? どういうことだよ」
T19の言葉の意味は理解できないが、言う通りその場で暴れれば、足に伝わる揺れが大きくなり、地面から突き出してくる触角。
寸のところで、その触角に足を乗せ、飛び退く。だが、バランスを崩したG45へ追撃はせず、すぐに地面の中に戻っていってしまう。
やはり、先程のS08の攻撃で、だいぶ警戒しているようだ。
「だ、だったら、今の内に車に逃げないか? 胴体が出てこないなら、車で逃げられるだろ? 対物ライフルも乗ってるし」
あの変異種の危険なところは、あの巨大な体が地中から突然現れることだ。それが、頭しか出さないと言うなら、車を走らせることは不可能ではないはずだ。
車の真下から出てきては、横転する危険はあるが、徒歩で変異種から逃げることができないのなら、手段の一つではある。
川窪も周囲を確認し、あと数回変異種にヴェノリュシオンたちの脅威を学習させた後、隊員たちを退避させようと考えた時だ。
動いた楸の近くから変異種が顔を出し、胴体を地上に出して、追いかけていた。
「うわわっ!?」
慌てる楸に体当たりするように助けたO12たちの背後を通り抜けた変異種は、そのままぐるりと体を曲げ、動けないふたりに頭を向ける。
小型の銃で反撃するも、アサルトライフルで傷つかなかった変異種の外皮が傷つくわけもなく、弾かれるばかり。
だが、近づいてくる頭は、大量の足のある腹側を見せながら、離れていく。
その根元には、G45とS08の姿。
「せぇーのっ!!」
G45とS08は、変異種の体を掴みながら、ひっくり返すように地面に叩きつけた。
「このまま仕留め――」
足が多いとはいえ、ひっくり返ってしまえば少しは時間が稼げるだろうと、追撃しようとするS08の予想に反し、その長い体を捻り、暴れさせ、S08たちを近づかせさせないようにしながら、地中へ逃げて行った。
お互い、握りしめていた数本の脚は折っているとはいえ、この程度では意味がないらしい。
「見分け付いてるってこと?」
楸の足音には地中から体を出し、ヴェノリュシオンの足音には頭しか出さないということは、兵士かヴェノリュシオンかの見分けがついているということだ。
ここにいる兵士とヴェノリュシオンの体格は大きく異なる。足音で体格を識別し、攻撃できるということだろうか。
もしそうなら、車へ逃げるのは得策とは言えない。だが、作戦が無いわけではない。
「……俺たちが囮になる」
ヴェノリュシオンとはいえ、地中にいる変異種を追いかけ、地中に潜れば、返り討ちに遭う可能性が高い。
だからこそ、変異種たちも顔しか出さない。
だが、兵士たちが囮になれば、変異種は地上へ体を全て晒す可能性がある。そうなれば、ヴェノリュシオンたちにも対抗手段ができる。
第一にヴェノリュシオンたちが協力してくれる前提の作戦な上、ヴェノリュシオンたちの反応が遅れたり負ければ、囮になった兵士は死ぬ。
彼らを信じることでしか、成立しない作戦。
「まずは俺が囮をする」
だからこそ、川窪が最初に名乗りを上げた。
「…………」
正確な居場所を探るのは、向こうが万全な状態である状況では難しい。
T19が提案したような爆弾で、地中から炙り出すのも、不確定要素が多い状況では、川窪や牧野から渋られている。
そうなると、こちらを攻撃するために変異種が顔を出てきた時に、反撃するしかない。
S08は、数歩歩くと、足を止めた。
そして、何度か足を動かすと、
「ふんッッ!!」
意気込み、片足を強く地面に叩きつけた。
地面スレスレに掘られた穴の一部が崩れ落ちる様子に、T19は驚き半分呆れ半分にS08へ目をやった。
「ほんとバケモノ……」
しかし、S08の予想外の攻撃に驚いたのは、変異種も同じで、新しく開いた穴から吹き上がってくる匂い。
S08とT19が跳んで逃げた直後に、顔を出した変異種は、空中で体を折り曲げると、もう一度地面に逃げ込もうと垂直に地面に頭を突っ込んでいった。
頭が消えた直後、S08はもう一度変異種に飛び込むと、その足に向かって拳を振り下ろした。
「のわっ!?」
派手な音を立てるわけでもなく、折れた足は楸の足元に突き刺さった。
「え、マジ? 素手で足折った? マジ?」
足元に突き刺さった変異種の足のひとつを手に取り、軽く叩いてみても、その硬さはなんとなくわかる。
付け根からもぎ取るように折れているところを見る限り、変異種の外皮を傷つけたというより、弱いところに本来かからない力が掛かり、折れたようだ。
自分たちからすればありえないが、その彼らですら素手であの外皮を割ることは難しいということになる。
「足の本数分繰り返せば、いけるな」
「絶対、途中から体出さなくなると思うんだけど」
「そうなったら、引きずり出せるだろ。足減ってるんだし」
実験体の中では、最年長であるし、頭も悪くないと思っているが、フィジカルの強さからか、戦闘になると頭を使わなくなるのは本当に何とかしてほしいと思いながら、近づいてくる匂いに、川窪を掴み、その場から離れる。
大きく飛び退いた地面から現れた変異種は、頭だけを出すと、すぐに地面に潜っていった。
「もう学習されてるみたいだな」
川窪の冷静な分析に、T19は嫌そうに目を細めた。
「G! ちょっとその辺でじたばたして!」
「は? どういうことだよ」
T19の言葉の意味は理解できないが、言う通りその場で暴れれば、足に伝わる揺れが大きくなり、地面から突き出してくる触角。
寸のところで、その触角に足を乗せ、飛び退く。だが、バランスを崩したG45へ追撃はせず、すぐに地面の中に戻っていってしまう。
やはり、先程のS08の攻撃で、だいぶ警戒しているようだ。
「だ、だったら、今の内に車に逃げないか? 胴体が出てこないなら、車で逃げられるだろ? 対物ライフルも乗ってるし」
あの変異種の危険なところは、あの巨大な体が地中から突然現れることだ。それが、頭しか出さないと言うなら、車を走らせることは不可能ではないはずだ。
車の真下から出てきては、横転する危険はあるが、徒歩で変異種から逃げることができないのなら、手段の一つではある。
川窪も周囲を確認し、あと数回変異種にヴェノリュシオンたちの脅威を学習させた後、隊員たちを退避させようと考えた時だ。
動いた楸の近くから変異種が顔を出し、胴体を地上に出して、追いかけていた。
「うわわっ!?」
慌てる楸に体当たりするように助けたO12たちの背後を通り抜けた変異種は、そのままぐるりと体を曲げ、動けないふたりに頭を向ける。
小型の銃で反撃するも、アサルトライフルで傷つかなかった変異種の外皮が傷つくわけもなく、弾かれるばかり。
だが、近づいてくる頭は、大量の足のある腹側を見せながら、離れていく。
その根元には、G45とS08の姿。
「せぇーのっ!!」
G45とS08は、変異種の体を掴みながら、ひっくり返すように地面に叩きつけた。
「このまま仕留め――」
足が多いとはいえ、ひっくり返ってしまえば少しは時間が稼げるだろうと、追撃しようとするS08の予想に反し、その長い体を捻り、暴れさせ、S08たちを近づかせさせないようにしながら、地中へ逃げて行った。
お互い、握りしめていた数本の脚は折っているとはいえ、この程度では意味がないらしい。
「見分け付いてるってこと?」
楸の足音には地中から体を出し、ヴェノリュシオンの足音には頭しか出さないということは、兵士かヴェノリュシオンかの見分けがついているということだ。
ここにいる兵士とヴェノリュシオンの体格は大きく異なる。足音で体格を識別し、攻撃できるということだろうか。
もしそうなら、車へ逃げるのは得策とは言えない。だが、作戦が無いわけではない。
「……俺たちが囮になる」
ヴェノリュシオンとはいえ、地中にいる変異種を追いかけ、地中に潜れば、返り討ちに遭う可能性が高い。
だからこそ、変異種たちも顔しか出さない。
だが、兵士たちが囮になれば、変異種は地上へ体を全て晒す可能性がある。そうなれば、ヴェノリュシオンたちにも対抗手段ができる。
第一にヴェノリュシオンたちが協力してくれる前提の作戦な上、ヴェノリュシオンたちの反応が遅れたり負ければ、囮になった兵士は死ぬ。
彼らを信じることでしか、成立しない作戦。
「まずは俺が囮をする」
だからこそ、川窪が最初に名乗りを上げた。
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