【完結】ヴェノリュシオン ~ 違法研究所を摘発したら、実験体にされていた遺伝子組み換えされた子供を育てることになりました ~ 

ツヅラ

文字の大きさ
48 / 67
11話 呼び声

03

しおりを挟む
 夜間の見張りは、基本的にヴェノリュシオンたちの誰かが担当している。
 お世辞にも、部隊として成り立っているとはいえない部隊であり、訓練されている兵士といえば、牧野か楸のどちらかのため、基本的な見張り業務は、ヴェノリュシオンたちに任せる他ない。

「……ねぇ。Oちゃん。なんか、小難しい話してくんない?」
「あ?」

 今晩の見張り担当であるO12は、毛布を掛けて寝たはずの楸の声に、眉を潜めた。
 基本的な見張りは、ヴェノリュシオンたちの誰かが担当するが、何か異常を発見した場合、監督役として付き添っている牧野か楸を起こし、判断することになっている。
 つまり、異常のない今は、監督役である楸は睡眠を取ることを重視しているはずだが、体をこちらに向けて、バッチリと目を開けている。

「いや、なんか目が冴えちゃって……でも、体は疲れてるから、絶対寝れんのよ。だから、睡眠の良い小難しい話をしてくんない?」
「…………」

 それを子供に求めるのかと言いたくなるが、「お願い」と腹立たしい表情をする楸に、相手をするのをやめた。

「ちょっ!? わかった! わかった! こうしよう。俺が質問するから、それに対して答えてくれ。それならいいだろ?」
「とっとと寝ろよ」
「言葉のキャッチボールして? ツッコミが冴えて寝れなくなっちまうだろ」
「チッ」

 素直に舌打ちをするO12の態度を諸共せず、楸は夜空を見上げながら、質問を考える。

「ん~じゃあ、一番仲のいい奴は?」

 最初だからと、難しくないはずの質問をしたはずだが、何の返事も返ってこない。

「…………一番気に入らない奴」
「……G」
「そこは素直に言うのな」

 別に好きな子を聞いているわけでもないのに、答えないのは、おそらく答えが気恥ずかしいからだ。

「Tは? よく一緒にいるじゃん」

 P03を除いて、O12がよく一緒にいるのは、T19が多い。
 正直、何を考えているかわからないT19は、あまり得意なタイプではない。

「アイツは……消去法」
「消去法……」

 S08とT19のどちらも、決して社交的な性格ではないが、素直に貶してくるか、変化球で貶してくるかの違いくらいで、大きな違いはない。
 何か決定的な違いでもあったかと聞けば、O12はゴミムシでも見るかのような目で、楸を見ろ降ろした。

「あのバケモンと同じにすんな」
「バケモン……」

 戦闘力に関しては、確かにG45に続いて高いが、そこまで言われるS08に、少し同情してしまう。

「一桁台で、まともなままでいる方がおかしいだろ」
「そうなの? Oちゃんの、えっと、一桁台? は会ったことあるの? お兄ちゃんみたいなもん?」
「……O型の3番までは、全身に眼球があった」

 物心ついた時に、全身に大量の眼球が並ぶ何かを、同じ型番のヴェノリュシオンだと認識はできなかった。
 だが、その後、人の形を保っていたはずの早く生まれたヴェノリュシオンたちが、研究員に投薬されるたびに、人の形を失っていく様子に、ようやくそれらが、自分たちの成れの果てだと知った。

 幸運だったのは、自分がO型の中で、最も新しい個体であり、投薬の数が少なかったことだ。
 だから、片目で済んだ。

「アイツらの区画の方、毒ガスが撒かれてたらしいが、モロに食らって暴れまわったんだぞ。バケモンだろ」

 研究室が安全装置として必ず備え付けている、実験動物が脱走しようとしたり、予想外の行動を起こした場合の緊急処置方法のひとつ。
 実験動物の生息区画全域を、無差別に殺処分するための処置。

「そりゃ、バケモンだわ」

 その処置が行われたとは聞いていないが、当時、G45が各区画の隔壁を破壊して、P03の元へ辿り着こうとしていたという。
 詳しい研究所の間取りを知っているわけではないが、そこまでの事件ならば、その緊急処置は、ヴェノリュシオンが生息していた区画全てが対象になりそうなものだ。

「……Tの奴が『やられる前にやっとけ☆』とか言ってた」
「そっちの方が怖いんだけど!?」

 どっちもどっちじゃないかと、つい上体を起こしてしまった。

 すっかり目が冴えてしまい、ため息を共に、火に薪をくべていると、O12がじっとどこかを見ていた。
 何かいたところで見えないだろうが、その方向が牧野たちの休むテントの方なので、反射的に目をやってしまう。
 テント以外に異常はない。

「なんかあった?」
「…………アイツらが、牧野のテントに入っていった」
「えー……ションベンくらい、パパに声かけなくていいのに」

 変異種がいたわけでもないならいいかと、焚火にもうひとつ薪をくべた。

*****

 何かの動く気配に、瞼を閉じたまま、布団の下に隠したライトと銃に触れ、一息と共に気配のする方へ向ける。
 直後、ライトを握っていた左腕は、抑え込まれ、無事だった右手に握られた銃を、自分の体へ馬乗りになっている小さな影へ向け、慌てて引き金から指を離した。

「G!?」

 G45だった。

「なにしてんだ。お前」

 危うく撃つところだった。

 以前に交わしたP03との約束もあるし、G45たちから襲われることはないと思っていたが、状況から絶対というわけではないらしい。
 しかし、夜中に、明らかに敵意を持って近づかれる覚えはない。
 最近は、わりと友好的に交流できていたつもりだったが、どこかで不興でも買ったかと、頭を巡らせる。

 G45は直情的で、もし何かあったのなら、その場で顔に出ているはずだ。
 だとすれば、牧野たちと別れてから、ここに来る直前までに、誰かにそそのかされたか。

「ん……?」

 視界の隅で、動いている姿がもうひとつ。
 体格からして、S08だろう。G45に抑えられているおかげで、ほとんど見えないが、何かを探しているようだ。

「……G。離せ」
「ダメ! このまま、寝てるだけでいいから!」
「馬乗りになられたままでいろっていうには、説明がなさ過ぎるだろ」
「え゛ぇ゛~……」
「えーじゃない。まずは口を動かして、会話しろって言ってんだろ」

 今のところ、右腕は自由だし、単純な力比べはともかく、体重差は大きい。
 ひっくり返そうと思えば、不可能ではない。

 しかし、目を泳がせているG45は、渋い表情をした後、S08に振り返った。

「やっぱり、マキノさんにお願いしてもらった方がよくない?」
「奪った方が早い」

 相変わらず、実力行使をするS08に、少し頭が痛くなるが、こういう時は決まって仲間、特にP03関係だ。わかりやすい。
 となれば、S08の奪い取りたい物というのは、想像に易い。

 ”飴”だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

処理中です...