65 / 67
15話 伸ばした手
01
しおりを挟む
――熱い、痛い。痛い痛い
――――イタイタイタイタイタイタイタイタイタイタイッッ!!
――――助けて、助ケテ!!
どれだけ叫んでも、目の前に浮き上がっていくのは、泡だけ。
泡をどれだけかき分けても、足をばたつかせても、何も見えない。何も聞こえない。
うるさい誰かの悲鳴だけが、木霊し続けていた。
*****
開けるというには、随分と手荒な入室をしたG45とS08は、脳を震わせる悲鳴を上げ続けている、小さな通路に入っているP03の元へ跳ぶ。
ふたりの体が、MRIへ近づいたその瞬間、腰と足が、自分たちの意思に反して、MRIの方へ引き寄せられる。
「ハ……!?」
空中で、見えない何かに引っ張られるような感覚に、G45もS08も、慌てて、体制を立て直そうとするが、間に合わず、変な体制でMRIへぶつかってしまった。
「カッヒューー」
意図しない体制で勢いよくぶつかったせいか、息が詰まった。
反射的に打ち付けたわき腹を抑えるが、その腕が体の下から抜けない。
腕は確かに動いているのに、体が機械に張り付いたまま動かない。
「ぅ、ぐ……」
首を動かして、P03の入っている小さな通路へ目をやる。
――あと少し。
叫び、助けを求めるように暴れる、P03の足はすぐそこにあるのに、自分たちを押さえつける見えない圧で、体が動かない。
手も足も、自由に動くというのに。
「P……! Pィ……!!」
また届かない。
あの時と同じだ。
水槽の中で苦しんで叫ぶ、P03を助けられなかった。救えなかった。
G45たちができたのは、P03を苦しめた人間を殺すことだけで、P03を水槽から出すこともできず、水槽の前で待つことしかできなかった。
「ゥ゛、ァ゛、ァアァ、ァアァァア……ッッ!!」
G45の目から溢れる涙が、零れ落ちていく。
G45とS08が、どれだけ力を入れても、体は機械から離れることはなく、どれだけ手を伸ばしても届かなかった。
「――――」
助けを求めて叫ぶ声が、すぐ傍にあるのに、届かなかった。
S08も表情を歪めたその時だ。
突然、甲高い空気が渦巻く音が響き渡った。
「うわっ……!?」
G45ですら、耳を塞ぎたくなる音が響き渡り出すと、ふたりを押さえつけていた圧力は突然消え、ふたりは床に落下した。
辛うじて、G45は両手足で着地し、S08は耳を塞いでいたせいか、受け身も取れず、床へ落下した。
「お前ら、無事か!?」
自分たちの壊したドアを越えて入ってきた音に、G45は勢いよく顔を上げる。
だが、その声の主が牧野だと気が付くと、自分の歯を噛み砕く勢いで食いしばっていた、力が少しだけ抜けた。
そして、震える口を、開いては閉じ、今度は弱く歯を食いしばると、苦し気に呻き声を漏らした。
「マ゛キ゛、ノ゛、さ゛……ッ!!」
「!! G、落ち着け。大丈夫だ」
涙をこぼしながら、必死に言葉を紡ごうとするG45に、牧野は少しだけ目を見開き、G45の前に膝をつくと、G45へ視線を合わせた。
「Pぃが……!! Pを、助けて……」
嗚咽混じりに、そう口にするG45に、牧野はG45の頭へ手をやり、しっかりと頷いた。
「任せろ」
牧野の言葉に、G45は頭に乗せられた温かな手に導かれるように、小さく頷く。
その様子に、牧野は小さく息をつくと、もうひとり、床に這いつくばっているS08へ目をやる。
「だから、Sのこと、見ててやってくれ。緊急だったとはいえ、ひどい音だったからな」
MRIの緊急停止のために必要だったとはいえ、間近であれほど大きな音が鳴ってしまったのだ。
聴覚が強化されているS08にとっては、相当のダメージだっただろう。
その証拠に、今も、両耳を抑え、床に小さく丸くなったまま、動いていない。
G45は、ゆっくりとS08の方へ顔を向けると、小さく頷いて、S08の傍らに座った。
その様子を確認すると、牧野は、ゆっくりと立ち上がり、ストレッチャーの上で静かになったP03の足を見下ろした。
――――イタイタイタイタイタイタイタイタイタイタイッッ!!
――――助けて、助ケテ!!
どれだけ叫んでも、目の前に浮き上がっていくのは、泡だけ。
泡をどれだけかき分けても、足をばたつかせても、何も見えない。何も聞こえない。
うるさい誰かの悲鳴だけが、木霊し続けていた。
*****
開けるというには、随分と手荒な入室をしたG45とS08は、脳を震わせる悲鳴を上げ続けている、小さな通路に入っているP03の元へ跳ぶ。
ふたりの体が、MRIへ近づいたその瞬間、腰と足が、自分たちの意思に反して、MRIの方へ引き寄せられる。
「ハ……!?」
空中で、見えない何かに引っ張られるような感覚に、G45もS08も、慌てて、体制を立て直そうとするが、間に合わず、変な体制でMRIへぶつかってしまった。
「カッヒューー」
意図しない体制で勢いよくぶつかったせいか、息が詰まった。
反射的に打ち付けたわき腹を抑えるが、その腕が体の下から抜けない。
腕は確かに動いているのに、体が機械に張り付いたまま動かない。
「ぅ、ぐ……」
首を動かして、P03の入っている小さな通路へ目をやる。
――あと少し。
叫び、助けを求めるように暴れる、P03の足はすぐそこにあるのに、自分たちを押さえつける見えない圧で、体が動かない。
手も足も、自由に動くというのに。
「P……! Pィ……!!」
また届かない。
あの時と同じだ。
水槽の中で苦しんで叫ぶ、P03を助けられなかった。救えなかった。
G45たちができたのは、P03を苦しめた人間を殺すことだけで、P03を水槽から出すこともできず、水槽の前で待つことしかできなかった。
「ゥ゛、ァ゛、ァアァ、ァアァァア……ッッ!!」
G45の目から溢れる涙が、零れ落ちていく。
G45とS08が、どれだけ力を入れても、体は機械から離れることはなく、どれだけ手を伸ばしても届かなかった。
「――――」
助けを求めて叫ぶ声が、すぐ傍にあるのに、届かなかった。
S08も表情を歪めたその時だ。
突然、甲高い空気が渦巻く音が響き渡った。
「うわっ……!?」
G45ですら、耳を塞ぎたくなる音が響き渡り出すと、ふたりを押さえつけていた圧力は突然消え、ふたりは床に落下した。
辛うじて、G45は両手足で着地し、S08は耳を塞いでいたせいか、受け身も取れず、床へ落下した。
「お前ら、無事か!?」
自分たちの壊したドアを越えて入ってきた音に、G45は勢いよく顔を上げる。
だが、その声の主が牧野だと気が付くと、自分の歯を噛み砕く勢いで食いしばっていた、力が少しだけ抜けた。
そして、震える口を、開いては閉じ、今度は弱く歯を食いしばると、苦し気に呻き声を漏らした。
「マ゛キ゛、ノ゛、さ゛……ッ!!」
「!! G、落ち着け。大丈夫だ」
涙をこぼしながら、必死に言葉を紡ごうとするG45に、牧野は少しだけ目を見開き、G45の前に膝をつくと、G45へ視線を合わせた。
「Pぃが……!! Pを、助けて……」
嗚咽混じりに、そう口にするG45に、牧野はG45の頭へ手をやり、しっかりと頷いた。
「任せろ」
牧野の言葉に、G45は頭に乗せられた温かな手に導かれるように、小さく頷く。
その様子に、牧野は小さく息をつくと、もうひとり、床に這いつくばっているS08へ目をやる。
「だから、Sのこと、見ててやってくれ。緊急だったとはいえ、ひどい音だったからな」
MRIの緊急停止のために必要だったとはいえ、間近であれほど大きな音が鳴ってしまったのだ。
聴覚が強化されているS08にとっては、相当のダメージだっただろう。
その証拠に、今も、両耳を抑え、床に小さく丸くなったまま、動いていない。
G45は、ゆっくりとS08の方へ顔を向けると、小さく頷いて、S08の傍らに座った。
その様子を確認すると、牧野は、ゆっくりと立ち上がり、ストレッチャーの上で静かになったP03の足を見下ろした。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる