元四天王は貧乏令嬢の使用人 ~冤罪で国から追放された魔王軍四天王。貧乏貴族の令嬢に拾われ、使用人として働きます~

大豆茶

文字の大きさ
55 / 120
【無視できない招待状】

協力者

しおりを挟む
「そこにいるのは誰だ!」

「は、はいっ!」

 アースが声をあらげたことで、扉の向こうにいた女性が姿を現した。

「あの……申し訳ございません。お話が聞こえてしまったのですが、薬が必要……と、いうことはエドモンド様に何かあったんですか?」

 急に現れた人物に対し瞬時に身構えるアースであったが、その人物から敵意を全く感じなかったので、アースはすぐに警戒を解いた。
 それに、その人物に見覚えがあったのだ。

「あなたは……あの時案内してくれた……」

「はい、私はこの館で使用人を勤めております、キサラと申します」

 アース達の前に現れたその人物は、この館に入る際に案内をしてくれた銀髪の女性であった。
 年の頃はエレミアより少し上ぐらいであろうか、身長が低めなせいか幼くも見えるが、その立ち振舞いからは大人の女性特有の優雅さを感じる。
 
「キサラ……エドモンド様は、今かなり危険な状態に陥ってるわ。一刻を争うぐらいに」

「――っ!? ほ、本当ですか!? そんな……エドモンド様が……! 館が騒がしいのは、そのせいなのですね……」

「ええ。言いにくいのだけど……私達は今、エドモンド様殺害の容疑で追われているの。この騒ぎはそのせいね」

「えっ!?」

「でも、私達は誓って何もしていないわ。信用できないかもしれないけど、エドモンド様を助けに行きたいと思っているの。……できれば見なかったことにしてもらえるかしら?」

 エレミアの突然の告白に驚愕するキサラ。
 しかしエレミアの真摯な言葉を受け止め、疑うことはしなかった。
 
「……信じます。エドモンド様からリーフェルニア様のことは何度も聞き及んでおります。あの方が信頼を置く方がそんな愚かな事をするとは思えません。それに……先刻衛兵の人数が不自然な程増員されていたんです。何かあるのではと思っていましたが、まさかこんなことになるとは……」

 やはりこれだけの数の衛兵が常時館の中を警備している訳ではないのだなと、アースは思った。
 それが意味するところは、衛兵に指示を出せる内部の人間の犯行であるということだ。

「私は子供の頃、魔物の襲来によって故郷を失いました。そこをエドモンド様に拾われて以来、ここに仕えさせていただいております。その恩を返すためにできることがあればしたいのです。エドモンド様を救うため、私にも何かご協力させてください」

「……こんな状況よ。館の人間だからって危険がない訳じゃないと思うの。それでもいいの?」

「はい。私の敬愛するお方の一大事に、何もしないわけにはまいりません」

 エレミアとキサラの二人が会話をしている最中、アースは感覚を研ぎ澄ませて警戒していた。
 そして、多くの足音がアース達のいる部屋へと近付いて来る気配を感じ、残された時間は少ないことを悟る。

「二人とも、さすがに長話をし過ぎたようだ。もう間もなく衛兵がこちらに来るぞ」

「――わかったわ。キサラ、この薬をエドモンド様に飲ませてもらえるかしら。あなたに託すのが一番良いと思う」

 そう言ってエレミアは薬をキサラへと手渡す。
 追われている自分達が強行突破するよりも、勝手をよく知るキサラに任せた方が可能性が高いと判断したのだ。

「わかりました、必ず……必ず届けます」

「俺達が館の中を逃げ回り、可能な限り衛兵を引き付ける。その隙を付いてくれ」

「よろしくね、キサラ。……どうか気を付けて」

「任せてください! この館は自分の家のようなものですから!」

 薬を両手に握り締め、キサラは決意を込めた瞳で、しっかりと頷いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ

双葉 鳴
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。 彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。 そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。 洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。 さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。 持ち前のサバイバル能力で見敵必殺! 赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。 そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。 人々との出会い。 そして貴族や平民との格差社会。 ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。 牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。 うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい! そんな人のための物語。 5/6_18:00完結!

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー

芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。    42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。   下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。  約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。  それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。  一話当たりは短いです。  通勤通学の合間などにどうぞ。  あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。 完結しました。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...