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【無視できない招待状】
協力者
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「そこにいるのは誰だ!」
「は、はいっ!」
アースが声をあらげたことで、扉の向こうにいた女性が姿を現した。
「あの……申し訳ございません。お話が聞こえてしまったのですが、薬が必要……と、いうことはエドモンド様に何かあったんですか?」
急に現れた人物に対し瞬時に身構えるアースであったが、その人物から敵意を全く感じなかったので、アースはすぐに警戒を解いた。
それに、その人物に見覚えがあったのだ。
「あなたは……あの時案内してくれた……」
「はい、私はこの館で使用人を勤めております、キサラと申します」
アース達の前に現れたその人物は、この館に入る際に案内をしてくれた銀髪の女性であった。
年の頃はエレミアより少し上ぐらいであろうか、身長が低めなせいか幼くも見えるが、その立ち振舞いからは大人の女性特有の優雅さを感じる。
「キサラ……エドモンド様は、今かなり危険な状態に陥ってるわ。一刻を争うぐらいに」
「――っ!? ほ、本当ですか!? そんな……エドモンド様が……! 館が騒がしいのは、そのせいなのですね……」
「ええ。言いにくいのだけど……私達は今、エドモンド様殺害の容疑で追われているの。この騒ぎはそのせいね」
「えっ!?」
「でも、私達は誓って何もしていないわ。信用できないかもしれないけど、エドモンド様を助けに行きたいと思っているの。……できれば見なかったことにしてもらえるかしら?」
エレミアの突然の告白に驚愕するキサラ。
しかしエレミアの真摯な言葉を受け止め、疑うことはしなかった。
「……信じます。エドモンド様からリーフェルニア様のことは何度も聞き及んでおります。あの方が信頼を置く方がそんな愚かな事をするとは思えません。それに……先刻衛兵の人数が不自然な程増員されていたんです。何かあるのではと思っていましたが、まさかこんなことになるとは……」
やはりこれだけの数の衛兵が常時館の中を警備している訳ではないのだなと、アースは思った。
それが意味するところは、衛兵に指示を出せる内部の人間の犯行であるということだ。
「私は子供の頃、魔物の襲来によって故郷を失いました。そこをエドモンド様に拾われて以来、ここに仕えさせていただいております。その恩を返すためにできることがあればしたいのです。エドモンド様を救うため、私にも何かご協力させてください」
「……こんな状況よ。館の人間だからって危険がない訳じゃないと思うの。それでもいいの?」
「はい。私の敬愛するお方の一大事に、何もしないわけにはまいりません」
エレミアとキサラの二人が会話をしている最中、アースは感覚を研ぎ澄ませて警戒していた。
そして、多くの足音がアース達のいる部屋へと近付いて来る気配を感じ、残された時間は少ないことを悟る。
「二人とも、さすがに長話をし過ぎたようだ。もう間もなく衛兵がこちらに来るぞ」
「――わかったわ。キサラ、この薬をエドモンド様に飲ませてもらえるかしら。あなたに託すのが一番良いと思う」
そう言ってエレミアは薬をキサラへと手渡す。
追われている自分達が強行突破するよりも、勝手をよく知るキサラに任せた方が可能性が高いと判断したのだ。
「わかりました、必ず……必ず届けます」
「俺達が館の中を逃げ回り、可能な限り衛兵を引き付ける。その隙を付いてくれ」
「よろしくね、キサラ。……どうか気を付けて」
「任せてください! この館は自分の家のようなものですから!」
薬を両手に握り締め、キサラは決意を込めた瞳で、しっかりと頷いた。
「は、はいっ!」
アースが声をあらげたことで、扉の向こうにいた女性が姿を現した。
「あの……申し訳ございません。お話が聞こえてしまったのですが、薬が必要……と、いうことはエドモンド様に何かあったんですか?」
急に現れた人物に対し瞬時に身構えるアースであったが、その人物から敵意を全く感じなかったので、アースはすぐに警戒を解いた。
それに、その人物に見覚えがあったのだ。
「あなたは……あの時案内してくれた……」
「はい、私はこの館で使用人を勤めております、キサラと申します」
アース達の前に現れたその人物は、この館に入る際に案内をしてくれた銀髪の女性であった。
年の頃はエレミアより少し上ぐらいであろうか、身長が低めなせいか幼くも見えるが、その立ち振舞いからは大人の女性特有の優雅さを感じる。
「キサラ……エドモンド様は、今かなり危険な状態に陥ってるわ。一刻を争うぐらいに」
「――っ!? ほ、本当ですか!? そんな……エドモンド様が……! 館が騒がしいのは、そのせいなのですね……」
「ええ。言いにくいのだけど……私達は今、エドモンド様殺害の容疑で追われているの。この騒ぎはそのせいね」
「えっ!?」
「でも、私達は誓って何もしていないわ。信用できないかもしれないけど、エドモンド様を助けに行きたいと思っているの。……できれば見なかったことにしてもらえるかしら?」
エレミアの突然の告白に驚愕するキサラ。
しかしエレミアの真摯な言葉を受け止め、疑うことはしなかった。
「……信じます。エドモンド様からリーフェルニア様のことは何度も聞き及んでおります。あの方が信頼を置く方がそんな愚かな事をするとは思えません。それに……先刻衛兵の人数が不自然な程増員されていたんです。何かあるのではと思っていましたが、まさかこんなことになるとは……」
やはりこれだけの数の衛兵が常時館の中を警備している訳ではないのだなと、アースは思った。
それが意味するところは、衛兵に指示を出せる内部の人間の犯行であるということだ。
「私は子供の頃、魔物の襲来によって故郷を失いました。そこをエドモンド様に拾われて以来、ここに仕えさせていただいております。その恩を返すためにできることがあればしたいのです。エドモンド様を救うため、私にも何かご協力させてください」
「……こんな状況よ。館の人間だからって危険がない訳じゃないと思うの。それでもいいの?」
「はい。私の敬愛するお方の一大事に、何もしないわけにはまいりません」
エレミアとキサラの二人が会話をしている最中、アースは感覚を研ぎ澄ませて警戒していた。
そして、多くの足音がアース達のいる部屋へと近付いて来る気配を感じ、残された時間は少ないことを悟る。
「二人とも、さすがに長話をし過ぎたようだ。もう間もなく衛兵がこちらに来るぞ」
「――わかったわ。キサラ、この薬をエドモンド様に飲ませてもらえるかしら。あなたに託すのが一番良いと思う」
そう言ってエレミアは薬をキサラへと手渡す。
追われている自分達が強行突破するよりも、勝手をよく知るキサラに任せた方が可能性が高いと判断したのだ。
「わかりました、必ず……必ず届けます」
「俺達が館の中を逃げ回り、可能な限り衛兵を引き付ける。その隙を付いてくれ」
「よろしくね、キサラ。……どうか気を付けて」
「任せてください! この館は自分の家のようなものですから!」
薬を両手に握り締め、キサラは決意を込めた瞳で、しっかりと頷いた。
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