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【迫り来る危機】
皇帝との謁見
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「ふむ……ようやく到着か」
長旅を終え、馬を降りたレオナルドはため息混じりに呟いた。
アースとエレミアをコンクエスター家に送り出した後に、皇帝陛下との謁見のため、レオナルド自身もすぐさま帝都へと向かい出発していた。
「エレミア達はそろそろ帰路に就いている頃合いだろうか……?」
自慢の駿馬で駆けてきたものの、距離の関係でアース達の乗る馬車よりも到着まで時間がかかってしまっている。
予定どおりであれば、アース達はリーフェルニア領へと帰っている途中であろうと、レオナルドは遠く離れた愛娘に想いを馳せる。
「――それにしても、何度見てもこの景色は壮観だな」
ガンドルヴァ帝国の首都『帝都ドライゼス』、世界最大の都市であるその都市は遠くから見ても視界に収まらないほどの広大な面積を誇り、その光景を見ると自分の統治するリーフェルニアの街がいかに発展途上なのかが改めて感じられる。
もちろん広さだけではなく、施設の数や質、領民の生活水準までもがまるで別物と言えるだろう。
国中の最高の学者達が集まる研究機関や、騎士になるための教育機関など、非常に充実していた。
「さて、謁見を済ませて早く帰ろう。まだまだ仕事が山積みだからな……」
世界一の大都市と比較するだけ時間の無駄だと思い直したレオナルドは、早々に入国の手続きを終え皇帝の居城へと足を運ぶ。
広大な敷地故に、入口の門からガンドルヴァ城までの道程も長いものだった。
しかし、城まで続く一本道はかなり道幅を広く取られており、馬に乗っての移動が可能であったため、歩いて行くより遥かに早く辿り着くことができた。
そして諸々の手続きを済ませ、謁見の間に到着したレオナルド。
そこには、玉座に腰掛ける老齢の男性が佇んでいた。
年老いているにも関わらず若き頃と変わらぬ鋭い眼光を放ち、口回りには立派な髭を蓄えている。
彼こそがこの世界の覇者に最も近い男、皇帝コーネリウス・ガンドルヴァその人である。
「お目にかかれて光栄です、陛下。レオナルド・リーフェルニア、陛下の召集に応じ只今馳せ参じました」
レオナルドは入室した扉より数歩前に進み、膝をつき頭を垂れながらそう挨拶をした。
謁見の間には皇帝の他にも宰相と思わしき人物や、護衛の騎士が数名待機しており、それら全員からの視線がレオナルドに集中していた。
視線を一身に集める緊張感で、レオナルドの頬を一筋の汗が伝う。
「うむ、遠路遙々ご苦労であった。面を上げよ」
コーネリウスの低く重みのある声が部屋に響く。
しばらく間を開けたあと、レオナルドはゆっくりと頭を起こす。
「さて、レオナルド・リーフェルニア辺境伯よ。此度は新たな鉱山資源の獲得並びに良質な物品の生産に成功したようだな。土地の開拓に尽力したこと、誉めて遣わす」
「はっ! ありがたき幸せにございます」
呼び出されどんな事を言われるのかと身構えていたレオナルドであったが、案外好意的な話にひとまず安堵した。
しかし、宰相と思わしき人物が会話に割って入り、レオナルドにとって衝撃的な宣告をする。
「ウオッホン! それにあたりリーフェルニア領にはこの書状にある物を帝都へ毎月納めてもらう」
レオナルドは書状を渡され、すぐさまに目を通す。
「――なっ!」
その書状に記されたものは、法外とも言える条件での徴収内容だった。
金銭はもちろんのこと、薬や武具、食料品など現在交易のため輸出している分と同等の量を要求されている。
もちろん他の領地からも一定の金額を徴収してはいるが、リーフェルニア領に課された条件はとても素直に飲み込めるようなものではなかった。
「こ、これでは領民の生活がままなりませぬ! お考え直しください!」
「フン、何を言っている! 今は魔族との戦争中だぞ! 国のために貢献するのは当然であろう? 派兵できるだけの兵力を持たない貴殿らの事情を鑑みての条件だ。感謝したまえ」
上に跳び跳ねた口髭を弄りながら、その男はレオナルドの意見を頭ごなしに却下する。
書状の内容にも不満はあるが、それ以上にその理不尽な物言いから容姿まで、気に食わない男だとレオナルドは感じた。
以前にレオナルドか帝都に滞在していた際には見かけない顔だったので、おそらくここ数年で今の座に就いたのだろうが、よくこんな男を重職に置いているものだと少々憂いてしまう。
しかし、彼の言うことにも一理あり、戦時中における特例として同様なことを行ってきた前例がある。
少なくとも今行われている戦いが終息するまで、レオナルド程度の権力しか持たない貴族には拒否権などない。
「ぐっ……」
何の支援もなく辺境へ追いやった過去など、忘れてしまっているのか。
冒険者あがりの貴族に与えられた任務など、数撃てば当たると思っていた内の一つだったのか。
どんな条件だろうと甘んじて受け入れるしかない、そんな自分が情けなくて、レオナルドはぎりりと歯を噛み締める。
その時、背後の扉が勢いよく開かれ、何者かが謁見の間へと入室してきた。
長旅を終え、馬を降りたレオナルドはため息混じりに呟いた。
アースとエレミアをコンクエスター家に送り出した後に、皇帝陛下との謁見のため、レオナルド自身もすぐさま帝都へと向かい出発していた。
「エレミア達はそろそろ帰路に就いている頃合いだろうか……?」
自慢の駿馬で駆けてきたものの、距離の関係でアース達の乗る馬車よりも到着まで時間がかかってしまっている。
予定どおりであれば、アース達はリーフェルニア領へと帰っている途中であろうと、レオナルドは遠く離れた愛娘に想いを馳せる。
「――それにしても、何度見てもこの景色は壮観だな」
ガンドルヴァ帝国の首都『帝都ドライゼス』、世界最大の都市であるその都市は遠くから見ても視界に収まらないほどの広大な面積を誇り、その光景を見ると自分の統治するリーフェルニアの街がいかに発展途上なのかが改めて感じられる。
もちろん広さだけではなく、施設の数や質、領民の生活水準までもがまるで別物と言えるだろう。
国中の最高の学者達が集まる研究機関や、騎士になるための教育機関など、非常に充実していた。
「さて、謁見を済ませて早く帰ろう。まだまだ仕事が山積みだからな……」
世界一の大都市と比較するだけ時間の無駄だと思い直したレオナルドは、早々に入国の手続きを終え皇帝の居城へと足を運ぶ。
広大な敷地故に、入口の門からガンドルヴァ城までの道程も長いものだった。
しかし、城まで続く一本道はかなり道幅を広く取られており、馬に乗っての移動が可能であったため、歩いて行くより遥かに早く辿り着くことができた。
そして諸々の手続きを済ませ、謁見の間に到着したレオナルド。
そこには、玉座に腰掛ける老齢の男性が佇んでいた。
年老いているにも関わらず若き頃と変わらぬ鋭い眼光を放ち、口回りには立派な髭を蓄えている。
彼こそがこの世界の覇者に最も近い男、皇帝コーネリウス・ガンドルヴァその人である。
「お目にかかれて光栄です、陛下。レオナルド・リーフェルニア、陛下の召集に応じ只今馳せ参じました」
レオナルドは入室した扉より数歩前に進み、膝をつき頭を垂れながらそう挨拶をした。
謁見の間には皇帝の他にも宰相と思わしき人物や、護衛の騎士が数名待機しており、それら全員からの視線がレオナルドに集中していた。
視線を一身に集める緊張感で、レオナルドの頬を一筋の汗が伝う。
「うむ、遠路遙々ご苦労であった。面を上げよ」
コーネリウスの低く重みのある声が部屋に響く。
しばらく間を開けたあと、レオナルドはゆっくりと頭を起こす。
「さて、レオナルド・リーフェルニア辺境伯よ。此度は新たな鉱山資源の獲得並びに良質な物品の生産に成功したようだな。土地の開拓に尽力したこと、誉めて遣わす」
「はっ! ありがたき幸せにございます」
呼び出されどんな事を言われるのかと身構えていたレオナルドであったが、案外好意的な話にひとまず安堵した。
しかし、宰相と思わしき人物が会話に割って入り、レオナルドにとって衝撃的な宣告をする。
「ウオッホン! それにあたりリーフェルニア領にはこの書状にある物を帝都へ毎月納めてもらう」
レオナルドは書状を渡され、すぐさまに目を通す。
「――なっ!」
その書状に記されたものは、法外とも言える条件での徴収内容だった。
金銭はもちろんのこと、薬や武具、食料品など現在交易のため輸出している分と同等の量を要求されている。
もちろん他の領地からも一定の金額を徴収してはいるが、リーフェルニア領に課された条件はとても素直に飲み込めるようなものではなかった。
「こ、これでは領民の生活がままなりませぬ! お考え直しください!」
「フン、何を言っている! 今は魔族との戦争中だぞ! 国のために貢献するのは当然であろう? 派兵できるだけの兵力を持たない貴殿らの事情を鑑みての条件だ。感謝したまえ」
上に跳び跳ねた口髭を弄りながら、その男はレオナルドの意見を頭ごなしに却下する。
書状の内容にも不満はあるが、それ以上にその理不尽な物言いから容姿まで、気に食わない男だとレオナルドは感じた。
以前にレオナルドか帝都に滞在していた際には見かけない顔だったので、おそらくここ数年で今の座に就いたのだろうが、よくこんな男を重職に置いているものだと少々憂いてしまう。
しかし、彼の言うことにも一理あり、戦時中における特例として同様なことを行ってきた前例がある。
少なくとも今行われている戦いが終息するまで、レオナルド程度の権力しか持たない貴族には拒否権などない。
「ぐっ……」
何の支援もなく辺境へ追いやった過去など、忘れてしまっているのか。
冒険者あがりの貴族に与えられた任務など、数撃てば当たると思っていた内の一つだったのか。
どんな条件だろうと甘んじて受け入れるしかない、そんな自分が情けなくて、レオナルドはぎりりと歯を噛み締める。
その時、背後の扉が勢いよく開かれ、何者かが謁見の間へと入室してきた。
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