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【二章】爆・炎・王・女

20.突然の来訪者

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 王女様との決闘から二ヶ月が過ぎた。

 魔力を失ったことによる体調不良も次の日には全快しており、後遺症らしきものもない。健康そのものだ。

「んぁ~……くっそ暇だな……」

 しかし健康なのはいいのだがやることがない。プラモデル制作をしたいところだけど、あれ以来王女様からの音沙汰もない。

 街で買い物とか、闘技場へ観戦に行くとか、外へ出れば色々暇潰しの方法はあるんだけど、あまり人の多い場所には行けない理由があった。

 以前街に出たらその辺の人たちに囲まれて、身動きがとれなくなってしまったのだ。どうも俺は世間では時の人として扱われているらしい。

 好意的な人が多くて、あの決闘を称賛してくる人がほとんどだったからまだ良かったんだけど……言いたいことを言われてもみくちゃにされて、気付いたら日が暮れてたんだよね。

 だからほとぼりが冷めるまでは、今のようにヴァイシルト家の館で暇を持て余している。仕事もせずにぐーたらとしてるだけだ。

 平穏を求めてはいるものの、だからと言ってこんな窮屈な生活をしたいわけじゃないんだよなあ。自由に街くらい歩きたいものだ。
 
「――あーあ、なんか面白いことでも起きないもんかなぁ」

 あれ、前にもそんなこと言ったような気がするな。
 そんでそのあとろくでもないイベントが発生したような……。

 その時、誰かが走ってくる足音が俺の耳に届いた。

「ケイタさんケイタさん! 大変ですっ!」

 そうそう、こんなふうにシルヴィアが慌ててやって来て……ん? デジャヴュ?

「ど、どうしたんだシルヴィア。そんなに慌てちゃって」

 珍しく取り乱した様子のシルヴィアが、俺の部屋までやって来た。なんとなくだが、悪い予感がする。
 
「大変なんですっ! はぁ……はぁ……」

 よほど急いでいたのだろう、シルヴィアは息を切らし、ほんのりと額に汗をかいていた。

「まずは落ち着いて。はい、深呼吸~」

 俺が深呼吸を促すと、シルヴィアはゆっくりと息を吸い、静かに息を吐いた。
 その一度きりの深呼吸で乱れた呼吸は正常へと戻り、落ち着きを取り戻したシルヴィアがゆっくりと話し始める。

「……すみませんケイタさん、至急客間へ来ていただけますか? フラムローゼ様がお見えになられてます」

「王女様が? ああ……決闘の報酬の件かな。わざわざ足を運んでくれるとは、律儀なもんだね」

 まあお偉いさんが訪問しようものなら緊張して慌ててしまうもわかる。でも視察目的とかではないと思うし、そこまであたふたとしなくてもいいんじゃないか?

「そう……ですね。報酬の件なのは間違いないと思います」

「ん……? もしかして大所帯で来たとか?」

 奮発して報酬を大量に持ってきてくれたのだろうか。……いや、だとしたらもう少し騒がしくなってもおかしくないな。

 うーむ、わからん。

「いえ、そういうわけではないのですが……とにかく、来ていただければわかると思います」

「わかった、すぐ行くよ」

 百聞は一見に如かずと言うしな。なんにせよ俺のためにわざわざ来てくれたのだ、顔を合わせないわけにはいかないな。

 俺は手早く身支度を済ませ、シルヴィアと一緒に客間へと向うのだった。
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