スキル『モデラー』で異世界プラモ無双!? プラモデル愛好家の高校生が異世界転移したら、持っていたスキルは戦闘と無関係なものたったひとつでした

大豆茶

文字の大きさ
102 / 120
【三章】技術大国プラセリア

51.回復手段

しおりを挟む
「――ッッッ!?」

 ドクン、と心臓が跳ね上がる。
 まずい、気付かれたか……?

 ただ巨人がこちら側を向いただけだったが、どうしようもない不安に駆られる。

 そして、そういうときの嫌な予感ってのは大概当たるものだ。

 巨人の腕がゆっくりと、しかし間違いなく俺を目掛けて伸ばされた。

「――まずっ」

 巨人の手が煌めく。ノータイムで放たれた魔力弾は、この距離にもかかわらず真っ直ぐと俺へと飛来する。

 直撃する――そう思った瞬間、ワルキューレが間に割って入った。

「――はあっ!」

 シルヴィアの掛け声とともに、ワルキューレは手に持った盾で魔力弾を

 しかし、その魔力弾は持ち主に返ることなく、巨人の頭上を越えていく。

「大丈夫ですケイタさん。あの程度の攻撃、百発きたってへっちゃらですよ」

「お、おう……」

 百発はさすがに誇張しすぎだとは思うけど……それより、弾を跳ね返した……?
 疑問に思いワルキューレの持つ盾を見ると、俺の見知っているものとは違うものだった。
 
「それは……まさか?」

「はい、アイギスです。……と、言っても私じゃその力を全て引き出すことはできませんが、それでも優秀な盾です」

 ワルキューレの持つ円形の盾、アイギス。シルヴィアの家の家宝であり、過去の大戦で活躍したという曰く付きだ。
 白銀煌めくその盾は、見るものを惹き付けるようなどこか神秘的な印象がある。
 盾の中央には大きなひし形をした紺碧の宝玉が埋め込まれており、それを囲むようにして三つの淡い緑色の宝玉が散りばめられている。
 
 一見して普通の盾ではないことが伺える。自分のことに集中しすぎて、ワルキューレの装備が違うことにまったく気が付かなかった。

「シルバライザーへの攻撃は私が防ぎます。ケイタさんは魔轟砲に集中しててください」

「わかった、頼りにしてるよ」

 力を引き出せていないと言っていたが、それでも優秀な性能の盾であるのは間違いなく、とても頼もしく思う。

 だがあの巨人の攻撃があれしきで終わるなどとは思えない。
 そう考えていると、案の定、巨人はこちらへとターゲット変更したようだった。攻撃を跳ね返されたことに苛立ちを覚えたのだろうか。

 一歩、また一歩と大地を揺らしながら接近してくる。
 俺が魔轟砲を構えているのは視認できているはずだが、射線から外れるのでもなく、真っ直ぐと歩みを進めている。

 たとえ撃たれても防ぎきる自信があるのか、それともチャージ率が足りていないことを察しているのか、あるいは両者か。理由はわからないけど、俺たちにとってその驕りは都合がいい。

 しかし位置がバレてしまった以上、躊躇っている余裕も時間もない。限界突破を使うしか方法は残されていないのだ。

「くそっ、せめて魔力を回復する手段があれば……!」

 怪我ならポーションを使えばなんとかなるんだけどな……。

 ――――ん?
 ポーション……?

「ああああああっ!?」

 そうだそうだそうだっ!
 手に入れていたじゃないか、【初心者魔力ポーション】!
 
 あまりに使わなすぎて忘れていた。カティアにポーションを使ったときにも目に入っていたはずなのに、迂闊すぎる……!

「――ああいや、後悔は後回しだ! どのぐらいの効果があるかはわからないけど、たしか十個あったはずだから、もしかしたら全回復できるかもしれない」

 俺は慌ててスマホのアイテムボックス機能を使い、魔力ポーションをひとつ取り出し、一気に飲み干した。

 すると、いままであった倦怠感と軽い頭痛がすっと抜けていく心地よい感覚があった。
 
 ……よし、魔力が回復している。
 頭痛などの原因は魔力が枯渇しかけていたためだ。それが消えたので、間違いなく魔力が回復しているのが体感できる。

「これならっ、限界突破!!」

 俺はすかさず限界突破を発動させる。
 そして全魔力を魔轟砲へと注入。すると、みるみるうちに魔力が充填されていく。

「三十……四十……よっし! これなら――――つっ!」

 物凄い勢いでチャージ率が伸び、いよいよ五十に差し掛かろうとしていたその時、頭に鋭い痛みが走る。

「くっ、まずい、早くポーションを飲まないと……!」

 不調を感じ、俺は急いで二本目の魔力ポーションを飲み干した。
 そのおかけで痛みは引いたが、思っていたより消耗が激しい。
 少しでも体調に違和感が出たらすぐに魔力ポーションを摂れるように、片手は常に空けておくとしよう。

 あとは、あの巨人が来るまでにどれだけチャージができるかだ――。



 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

処理中です...