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出会い編
少女とドラゴン
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「俺の住処で何をしている、人間」
ひくひく、と言葉にならない口元をひくつかせる、黒瞳に黒髪の少女。
彼女は口をぽっかりと開けたまま、先ほどの氷のように冷たい声の主を黙って見上げた。
「今ならまだ見逃してやる。さっさと里へ戻るがよい」
その主は、血のように赤い瞳を持つ、巨大な体躯のドラゴンだった。身体の至る所には霜がおり、たくましい四肢は氷で覆われ、真っ白な翼はナイフのように尖っている。
そんな氷雪を具現したようなドラゴンは、まるで虫ケラでも見るかのような瞳で彼女を見下ろした。
「……ま、まじすか……」
その眼力に押され、思わずといった様子で彼女は言葉を漏らす。
ドラゴンなんて初めて見たやべぇ、とぶつぶつ呟きながらも、逃げるそぶりなど全く見せずに、彼女はドラゴンを見上げた。
「あ、あのー…ひとつお伺いしたいんですが」
「………なんだ」
「私を助けてくれたのはドラゴンさんですか?」
…実はこの少女、つい先ほど死にかけて居たのだった。
というのも、彼女は知らぬ間にこの死境プリュードへと迷い込んでおり、あわや凍死寸前だった。だが、死を覚悟して意識を失ったあとに、この場所で目を覚ますに至ったのだ。
おそらく誰かが、この場所に運んでくれたと、そういうことなのだろう。
「知らぬ。早くこの場から出て行け!!」
だが、どうやらこのドラゴンではないようだ。
ドラゴンの声は軽い咆哮にも匹敵する。びりびりとこの空間を震わせ、少女もまたびりびりと肌を震わせるこの感覚に飛び退いた。
「ヒェ、すごい迫力……あ、あとすいません!もう1つだけお願いしたいことがあるんですけど!」
「なぜ俺が人の願いを聞き入れなければならんのだ」
ドラゴンがここまで威圧しているのに、全く引かない人間の少女。それに段々とドラゴンも苛立ってきた。
本当に喰らうぞ、とばかりに牙を剥くと、少女は慌てたように言葉を続ける。
「帰る場所がないので此処に住まわせてもらえませんか!?」
「俺の話を聞いていたか」
ドラゴンは赤く鋭い瞳で、彼女を睨みつけた。
この状態のドラゴンに物怖じせず話せている辺り、この少女は只者ではなさそうである。
ひくひく、と言葉にならない口元をひくつかせる、黒瞳に黒髪の少女。
彼女は口をぽっかりと開けたまま、先ほどの氷のように冷たい声の主を黙って見上げた。
「今ならまだ見逃してやる。さっさと里へ戻るがよい」
その主は、血のように赤い瞳を持つ、巨大な体躯のドラゴンだった。身体の至る所には霜がおり、たくましい四肢は氷で覆われ、真っ白な翼はナイフのように尖っている。
そんな氷雪を具現したようなドラゴンは、まるで虫ケラでも見るかのような瞳で彼女を見下ろした。
「……ま、まじすか……」
その眼力に押され、思わずといった様子で彼女は言葉を漏らす。
ドラゴンなんて初めて見たやべぇ、とぶつぶつ呟きながらも、逃げるそぶりなど全く見せずに、彼女はドラゴンを見上げた。
「あ、あのー…ひとつお伺いしたいんですが」
「………なんだ」
「私を助けてくれたのはドラゴンさんですか?」
…実はこの少女、つい先ほど死にかけて居たのだった。
というのも、彼女は知らぬ間にこの死境プリュードへと迷い込んでおり、あわや凍死寸前だった。だが、死を覚悟して意識を失ったあとに、この場所で目を覚ますに至ったのだ。
おそらく誰かが、この場所に運んでくれたと、そういうことなのだろう。
「知らぬ。早くこの場から出て行け!!」
だが、どうやらこのドラゴンではないようだ。
ドラゴンの声は軽い咆哮にも匹敵する。びりびりとこの空間を震わせ、少女もまたびりびりと肌を震わせるこの感覚に飛び退いた。
「ヒェ、すごい迫力……あ、あとすいません!もう1つだけお願いしたいことがあるんですけど!」
「なぜ俺が人の願いを聞き入れなければならんのだ」
ドラゴンがここまで威圧しているのに、全く引かない人間の少女。それに段々とドラゴンも苛立ってきた。
本当に喰らうぞ、とばかりに牙を剥くと、少女は慌てたように言葉を続ける。
「帰る場所がないので此処に住まわせてもらえませんか!?」
「俺の話を聞いていたか」
ドラゴンは赤く鋭い瞳で、彼女を睨みつけた。
この状態のドラゴンに物怖じせず話せている辺り、この少女は只者ではなさそうである。
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