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第20話 三竦み
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「ったく! 何でこいつ等と一緒に行動しなきゃなんねぇんだ」
「龍美君! これは今後の為に重要な事なんだ! それにここからは何があるかわからないんだからもう少し緊張感を持ってくれ!」
「うるせぇな優等生!! 一々俺に指図するな!」
「お前等もう少し仲良くしろ!!」
口論する二人に対して、滝本先生は怒りを隠さずにそう言う。
俺は今大光寺と龍美、そして滝本先生の三人と行動を共にしている。
好川が滝本先生に話を通したところ、いくら何でも朝倉一人で行かせる訳にはいかないという事になりこの面子が揃った。
俺以外の面子に関してはまぁ納得できる人選ではある。
逆に俺がこの中に居るのが異常ではあるのだが、そこは俺が発起人だという事にして無理矢理好川と滝本先生でねじ込んだらしい。
と言うのも、サブプランを実行する為には果物や植物に詳しい人間を探さなければならない。
そうすれば必然的に俺達が何をしようとしているか勘づく人間が現れてしまう。
そうなった時に面倒になりそうな人間に対して先に事情を話、理解を得るという事になったらしいのだ。
結局誰に対して話したのかは教えてもらえなかったが、結果英雄と勇者と教師を一人ずつつけられたという訳だ。
その上、好川からはある難しい注文をされている。
出来るだけ本気を出すな。
勿論出来るだけであり余裕が無ければ本気で戦うのは構わないが、手の内はなるべく隠してほしいという事らしい。
この先の何を見据えているのかは知らないが、英雄と勇者にはまだ手の内を知られたくないとの事らしい。
好川自身もこれがどれ程難しい注文なのかは理解しているようで、これに意識がそがれて怪我するぐらいなら忘れてくれても構わないと、申し訳なさそうに言われた。
色々と考えているんだろうが、もう少し俺にも考えている事を話してくれてもいいと思うんだよな。
それを言えば、なんやかんやとはぐらかされそうだから言わないけどさ。
「この二人は……」
滝本先生はため息まじりにそうもらす。
大光寺と龍美の間にはかなり険悪な雰囲気を感じる。
未知の探索、言わば冒険だ。
興奮しているとかならまだわかるが、喧嘩してるってどうなんだと思ってしまう。
まぁ二人らしいと言えばらしいし、いつも通りと言えばいつも通りだ。
これはもしかしたら緊張していないとプラスに考えるべきことなのかもしれない。
「そう言えば、朝倉は得物を持っていないみたいだがよかったのか?」
「はい。自分は素手で大丈夫ですので」
「そうか」
滝本先生は俺の言葉に訝しむような表情を浮かべる。
まぁ普通そうだろうな。
武器なしで素手で戦うと言われれば不審に思う。
素手で戦う職業が無い訳では無いだろうが、手を守るグローブ等すらつけずに戦う奴はそうそう居ないだろう。
俺も出来る事なら武器を持ちたいが、まだ力を完全に制御できず物理的に破壊してしまうので持てないのだ。
まぁこれはこれで手札を隠していると考える事が出来るから構わないんだけどな。
にしても人気だな、剣。
三人とも持っている武器が剣で被るとは……
正確には大光寺だけ剣と小さな盾を持っているが、それでも剣を持っている事には変わりないだろう。
滝本先生の戦闘スタイルは多少想像できるが、大光寺と龍美に関しては全くの未知だからな。
俺はここで多少なりとも二人の戦い方を見ておくべきだろうな。
それにしても変だな。
学校の校門から真っ直ぐ森を進み続けてかなりの時間が経っているはずだ。
なのにこれまで一体もゴブリンに遭遇していない。
いつもなら既にゴブリンの集団と少なくても数回は遭遇している。
龍美から少しだけ圧を感じるような気がするが、これが関係しているのか?
どちらにしても気を抜かない方が良いだろうな。
そんな事を思っていると不意に[気配感知]に物凄い速度でこちらに向かってくる強力な気配がひっかかる。
それと同時に全員の足がほぼ同時に止まり、即座に戦闘態勢に入っていた。
どうやら全員気配を探るスキルは持っているみたいだな。
俺はそう思いながら、気配を感じた方に視線をやる。
「クソが……近くにデカすぎる気配があるせいで気付くのに遅れた……」
龍美が苛立ちを一切隠そうとはせず、小さくそうつぶやく。
デカすぎる気配?
まさかとは思うがそれって俺の事じゃないだろうな?
[気配感知]では自身の気配は感知できない。
だから自分の気配がどういった物なのかという事はわからないのだ。
俺からすれば三人の気配はそれ程大きく感じない。
つまりは俺って事になってしまう訳だが……
今後は自身の気配を抑える方法を考えるべきか。
「お前等! 来るぞ!!」
「わかってる!! 一々叫ぶな!!」
不味い!!
俺はそう感じると同時に右隣に立っていた滝本先生を軽く突き飛ばし、左側に立っていた二人を抱え、左側へと大きく飛び移動する。
直後俺達が元々居た地面や後ろの木々が抉られ、肌寒い風が吹き抜ける。
「一体なにしやが……」
「朝倉君、急に何を……」
俺が移動させた二人は口々にそう言って、元居た場所を確認して言葉に詰まる。
やはり二人はあの攻撃に気づけていなかった。
いや、滝本先生も驚いた表情を浮かべている事からわかっていなかったな。
俺もギリギリのところで魔力を感じ反応しただけだから、あまり人の事は言えないが。
魔力を感じたという事はつまり魔法という事……
魔法を使う奴は初めてだな。
そう思いながら魔法が飛んできた方向に視線をやると、そこには体長が6メートルはあり、額に青い半透明の角が生えた白銀の狼のような生き物が居た。
なんだあの生き物は!
初めて見たぞ!!
しかも見た目はほぼ狼みたいだが、絶対に狼じゃないと断言できる。
大きさもそうだが、まずもって狼に角は生えていない!
しかもコイツからは、ゴブリンとは比べものにならないプレッシャーを感じる。
それによく見れば、その狼のような生き物の周りからは白い冷気のようなものが出ており、更には周囲を透明な氷の塊のようなものが不規則に周回しているのが確認できる。
恐らく先程の攻撃はあの氷の塊によるものだろう。
だが勝てるか?
この三人を守りながら……
「ウォォォォォォォォン」
俺がそう考えていると、狼のような生き物が突如として天に向かって大きな鳴き声を上げる。
そのあまりにも大きな声に、俺は咄嗟に両手で耳をふさぐ。
クッソ!!
急に何だってんだ!
……待てよ。
これってまさか遠吠えなんじゃ……
不味い!!
仲間を呼ばれる!
「みなさ!!」
俺はまるで俺の言葉を遮るかのように飛んできた氷の矢を体を捻ってかわす。
そんな繊細な事も出来るのかよ!
そう思いながら再び角の生えた狼の方に視線をやれば、狼と目が合う。
コイツ……明らかに俺を標的に定めやがった。
目と目が合った瞬間、直観的に俺はそう感じとる。
変に三人を狙われるよりは俺を集中的に狙ってくれた方がいなしやすいが、コイツの仲間がくれば話が変わってくる。
仲間が来る前に決着を付けれるか?
いや、それは流石に無理だ。
例え本気で戦ったとしても秒で倒せるような相手じゃない。
しかも既に[気配感知]で無数の気配がこっちに来ているのを感じとっている。
それだけ近くまで来てしまっているという事。
感知できた気配は約40個。
コイツと全く同じ奴が40体もくれば、俺達は確実に死ぬ。
だがだからと言ってもう引き返す事は出来ない。
ここで校舎のある場所まで引き返せば、コイツ等を学校内に引き入れるも同然になる。
そうなれば最悪全滅もあり得る。
それだけは出来ない。
ここで俺達が抑える以外に選択肢など既にないのだ。
俺がそう覚悟を決めた直後、近づいていた気配が俺達を完全に包囲する。
包囲してきた存在は最初に現れた個体とほぼ同じ見た目の狼で、唸り声を上げながら俺達を得物を見るかのような目で睨みつける。
最初の狼との唯一の違いであり、救いと思われる要因は大きさだ。
最初に現れた狼よりも後に現れた狼の方が一回りから二回りほど小さい。
そして後に現れた狼からは、まるで大きさに比例するかのようにそれ程プレッシャーを感じない。
これならもしかしたらやれるか?
「龍美君! これは今後の為に重要な事なんだ! それにここからは何があるかわからないんだからもう少し緊張感を持ってくれ!」
「うるせぇな優等生!! 一々俺に指図するな!」
「お前等もう少し仲良くしろ!!」
口論する二人に対して、滝本先生は怒りを隠さずにそう言う。
俺は今大光寺と龍美、そして滝本先生の三人と行動を共にしている。
好川が滝本先生に話を通したところ、いくら何でも朝倉一人で行かせる訳にはいかないという事になりこの面子が揃った。
俺以外の面子に関してはまぁ納得できる人選ではある。
逆に俺がこの中に居るのが異常ではあるのだが、そこは俺が発起人だという事にして無理矢理好川と滝本先生でねじ込んだらしい。
と言うのも、サブプランを実行する為には果物や植物に詳しい人間を探さなければならない。
そうすれば必然的に俺達が何をしようとしているか勘づく人間が現れてしまう。
そうなった時に面倒になりそうな人間に対して先に事情を話、理解を得るという事になったらしいのだ。
結局誰に対して話したのかは教えてもらえなかったが、結果英雄と勇者と教師を一人ずつつけられたという訳だ。
その上、好川からはある難しい注文をされている。
出来るだけ本気を出すな。
勿論出来るだけであり余裕が無ければ本気で戦うのは構わないが、手の内はなるべく隠してほしいという事らしい。
この先の何を見据えているのかは知らないが、英雄と勇者にはまだ手の内を知られたくないとの事らしい。
好川自身もこれがどれ程難しい注文なのかは理解しているようで、これに意識がそがれて怪我するぐらいなら忘れてくれても構わないと、申し訳なさそうに言われた。
色々と考えているんだろうが、もう少し俺にも考えている事を話してくれてもいいと思うんだよな。
それを言えば、なんやかんやとはぐらかされそうだから言わないけどさ。
「この二人は……」
滝本先生はため息まじりにそうもらす。
大光寺と龍美の間にはかなり険悪な雰囲気を感じる。
未知の探索、言わば冒険だ。
興奮しているとかならまだわかるが、喧嘩してるってどうなんだと思ってしまう。
まぁ二人らしいと言えばらしいし、いつも通りと言えばいつも通りだ。
これはもしかしたら緊張していないとプラスに考えるべきことなのかもしれない。
「そう言えば、朝倉は得物を持っていないみたいだがよかったのか?」
「はい。自分は素手で大丈夫ですので」
「そうか」
滝本先生は俺の言葉に訝しむような表情を浮かべる。
まぁ普通そうだろうな。
武器なしで素手で戦うと言われれば不審に思う。
素手で戦う職業が無い訳では無いだろうが、手を守るグローブ等すらつけずに戦う奴はそうそう居ないだろう。
俺も出来る事なら武器を持ちたいが、まだ力を完全に制御できず物理的に破壊してしまうので持てないのだ。
まぁこれはこれで手札を隠していると考える事が出来るから構わないんだけどな。
にしても人気だな、剣。
三人とも持っている武器が剣で被るとは……
正確には大光寺だけ剣と小さな盾を持っているが、それでも剣を持っている事には変わりないだろう。
滝本先生の戦闘スタイルは多少想像できるが、大光寺と龍美に関しては全くの未知だからな。
俺はここで多少なりとも二人の戦い方を見ておくべきだろうな。
それにしても変だな。
学校の校門から真っ直ぐ森を進み続けてかなりの時間が経っているはずだ。
なのにこれまで一体もゴブリンに遭遇していない。
いつもなら既にゴブリンの集団と少なくても数回は遭遇している。
龍美から少しだけ圧を感じるような気がするが、これが関係しているのか?
どちらにしても気を抜かない方が良いだろうな。
そんな事を思っていると不意に[気配感知]に物凄い速度でこちらに向かってくる強力な気配がひっかかる。
それと同時に全員の足がほぼ同時に止まり、即座に戦闘態勢に入っていた。
どうやら全員気配を探るスキルは持っているみたいだな。
俺はそう思いながら、気配を感じた方に視線をやる。
「クソが……近くにデカすぎる気配があるせいで気付くのに遅れた……」
龍美が苛立ちを一切隠そうとはせず、小さくそうつぶやく。
デカすぎる気配?
まさかとは思うがそれって俺の事じゃないだろうな?
[気配感知]では自身の気配は感知できない。
だから自分の気配がどういった物なのかという事はわからないのだ。
俺からすれば三人の気配はそれ程大きく感じない。
つまりは俺って事になってしまう訳だが……
今後は自身の気配を抑える方法を考えるべきか。
「お前等! 来るぞ!!」
「わかってる!! 一々叫ぶな!!」
不味い!!
俺はそう感じると同時に右隣に立っていた滝本先生を軽く突き飛ばし、左側に立っていた二人を抱え、左側へと大きく飛び移動する。
直後俺達が元々居た地面や後ろの木々が抉られ、肌寒い風が吹き抜ける。
「一体なにしやが……」
「朝倉君、急に何を……」
俺が移動させた二人は口々にそう言って、元居た場所を確認して言葉に詰まる。
やはり二人はあの攻撃に気づけていなかった。
いや、滝本先生も驚いた表情を浮かべている事からわかっていなかったな。
俺もギリギリのところで魔力を感じ反応しただけだから、あまり人の事は言えないが。
魔力を感じたという事はつまり魔法という事……
魔法を使う奴は初めてだな。
そう思いながら魔法が飛んできた方向に視線をやると、そこには体長が6メートルはあり、額に青い半透明の角が生えた白銀の狼のような生き物が居た。
なんだあの生き物は!
初めて見たぞ!!
しかも見た目はほぼ狼みたいだが、絶対に狼じゃないと断言できる。
大きさもそうだが、まずもって狼に角は生えていない!
しかもコイツからは、ゴブリンとは比べものにならないプレッシャーを感じる。
それによく見れば、その狼のような生き物の周りからは白い冷気のようなものが出ており、更には周囲を透明な氷の塊のようなものが不規則に周回しているのが確認できる。
恐らく先程の攻撃はあの氷の塊によるものだろう。
だが勝てるか?
この三人を守りながら……
「ウォォォォォォォォン」
俺がそう考えていると、狼のような生き物が突如として天に向かって大きな鳴き声を上げる。
そのあまりにも大きな声に、俺は咄嗟に両手で耳をふさぐ。
クッソ!!
急に何だってんだ!
……待てよ。
これってまさか遠吠えなんじゃ……
不味い!!
仲間を呼ばれる!
「みなさ!!」
俺はまるで俺の言葉を遮るかのように飛んできた氷の矢を体を捻ってかわす。
そんな繊細な事も出来るのかよ!
そう思いながら再び角の生えた狼の方に視線をやれば、狼と目が合う。
コイツ……明らかに俺を標的に定めやがった。
目と目が合った瞬間、直観的に俺はそう感じとる。
変に三人を狙われるよりは俺を集中的に狙ってくれた方がいなしやすいが、コイツの仲間がくれば話が変わってくる。
仲間が来る前に決着を付けれるか?
いや、それは流石に無理だ。
例え本気で戦ったとしても秒で倒せるような相手じゃない。
しかも既に[気配感知]で無数の気配がこっちに来ているのを感じとっている。
それだけ近くまで来てしまっているという事。
感知できた気配は約40個。
コイツと全く同じ奴が40体もくれば、俺達は確実に死ぬ。
だがだからと言ってもう引き返す事は出来ない。
ここで校舎のある場所まで引き返せば、コイツ等を学校内に引き入れるも同然になる。
そうなれば最悪全滅もあり得る。
それだけは出来ない。
ここで俺達が抑える以外に選択肢など既にないのだ。
俺がそう覚悟を決めた直後、近づいていた気配が俺達を完全に包囲する。
包囲してきた存在は最初に現れた個体とほぼ同じ見た目の狼で、唸り声を上げながら俺達を得物を見るかのような目で睨みつける。
最初の狼との唯一の違いであり、救いと思われる要因は大きさだ。
最初に現れた狼よりも後に現れた狼の方が一回りから二回りほど小さい。
そして後に現れた狼からは、まるで大きさに比例するかのようにそれ程プレッシャーを感じない。
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