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第一章
転生者フランク
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当時、大陸は動乱の只中にあった。
北のラングリオ王国・南のジェマイエフ王国という昔から仲の悪い両大国が戦争を行っていたのである。それぞれに味方し漁夫の利を得ようとする諸国も混ざり合い、両大国の国境付近は一進一退の戦況のため荒れに荒れていた。
そんな中、国境沿いの村等で細々と生活していた人々は、略奪や破壊などの被害を受け、流民となって流離うことを選ばざるを得ない者も多くいた。
その中に若い夫婦の姿があった。
村を焼け出されてから、攻め込んできているジェマイエフ王国連合軍に見つからないように、道なき道を彷徨って一週間ほどが経っていた。
夫は臨月の妻を労わりながら進んでいたため、二人は共に逃げていた流民の仲間たちからは大幅に遅れていた。
急場なのである。足手まといの赤の他人の臨月の女のために、危険を承知で共に行く者などいなかったのだ。
出会った頃は皆優しく声をかけてくれたものだが、やはり自分の命は惜しいのだろう。
この日も二人きりで野宿をした。村を追われてからは満足な食事もできてはいなかったため、常に二人は空腹だったが、夫は自分の食事の大半を身重の妻に分け与えながら旅を続けていた。
自分は元々貧しい生まれだから「この程度の空腹は何でもない」と、そこらの草を齧りながらお道化る夫に、妻は貧しくても優しいこの男と結ばれた事に心底幸せを感じていた。
早めに寝ようと準備をしていた時だった。
妻が不意に苦しみだした。
夫は戦慄し、慌てて妻を抱きしめる。
そう、新たな命が誕生しようとしていたのだ。
(・・・・・眩しい)
ヨウタはゆっくりと目を開けた。
寝起きの悪いこの男は、無理やり起こされたと思い込み、周りの状況を把握する前に文句の言葉を吐いた。
(ああもう!ゆっくり眠っていたのに何だよ!無理やり起こしやがって!)
だが、すぐに違和感に気が付く。
(ん?あれ?俺、言葉が喋れない・・・叫び声あげてる?いや、泣き声か!)
その時、ヨウタの目の前に薄汚れた男の顔が火に照らされて現れた。
(だ、誰だよオッサン!なんで泣いてるんだ?それに何言ってるかわからん)
だが、状況を把握するのにそれほど時間はかからなかった。
(・・・・あっそうか!生まれ変わったんだ。俺は転生したんだ!)
ヨウタは無事人間に転生できたことに先ずは安堵した。ネズミやゴキブリなどに転生でもしたらどうしようと考えていたからだ。
(ところで、この泣いてるおっさんは俺の親父か?なんだか見窄らしい奴だな。)
明らかに親ガチャはハズレだ。どう見てもこの男は王侯貴族の立場ではない。
だが親父の恰好を見るに、ここは望んでいた異世界に違いない!
男は妻の声に促されると、ヨウタを慎重に妻に渡した。
女は疲れ切っていたが、優しく微笑みながら我が子に何やら声を掛ける。
(この人がお袋か。前のお袋よりは美人だな。いい匂いがする。でもこれは良くても農民といった感じだろうな・・・まあ、暫くは本物の赤ちゃんプレイを楽しむとするか)
後にヨウタは『フランク』という名前を付けてもらう。そして「本物の赤ちゃんプレイ」を存分に堪能する・・・
ことはできなかった。
北のラングリオ王国・南のジェマイエフ王国という昔から仲の悪い両大国が戦争を行っていたのである。それぞれに味方し漁夫の利を得ようとする諸国も混ざり合い、両大国の国境付近は一進一退の戦況のため荒れに荒れていた。
そんな中、国境沿いの村等で細々と生活していた人々は、略奪や破壊などの被害を受け、流民となって流離うことを選ばざるを得ない者も多くいた。
その中に若い夫婦の姿があった。
村を焼け出されてから、攻め込んできているジェマイエフ王国連合軍に見つからないように、道なき道を彷徨って一週間ほどが経っていた。
夫は臨月の妻を労わりながら進んでいたため、二人は共に逃げていた流民の仲間たちからは大幅に遅れていた。
急場なのである。足手まといの赤の他人の臨月の女のために、危険を承知で共に行く者などいなかったのだ。
出会った頃は皆優しく声をかけてくれたものだが、やはり自分の命は惜しいのだろう。
この日も二人きりで野宿をした。村を追われてからは満足な食事もできてはいなかったため、常に二人は空腹だったが、夫は自分の食事の大半を身重の妻に分け与えながら旅を続けていた。
自分は元々貧しい生まれだから「この程度の空腹は何でもない」と、そこらの草を齧りながらお道化る夫に、妻は貧しくても優しいこの男と結ばれた事に心底幸せを感じていた。
早めに寝ようと準備をしていた時だった。
妻が不意に苦しみだした。
夫は戦慄し、慌てて妻を抱きしめる。
そう、新たな命が誕生しようとしていたのだ。
(・・・・・眩しい)
ヨウタはゆっくりと目を開けた。
寝起きの悪いこの男は、無理やり起こされたと思い込み、周りの状況を把握する前に文句の言葉を吐いた。
(ああもう!ゆっくり眠っていたのに何だよ!無理やり起こしやがって!)
だが、すぐに違和感に気が付く。
(ん?あれ?俺、言葉が喋れない・・・叫び声あげてる?いや、泣き声か!)
その時、ヨウタの目の前に薄汚れた男の顔が火に照らされて現れた。
(だ、誰だよオッサン!なんで泣いてるんだ?それに何言ってるかわからん)
だが、状況を把握するのにそれほど時間はかからなかった。
(・・・・あっそうか!生まれ変わったんだ。俺は転生したんだ!)
ヨウタは無事人間に転生できたことに先ずは安堵した。ネズミやゴキブリなどに転生でもしたらどうしようと考えていたからだ。
(ところで、この泣いてるおっさんは俺の親父か?なんだか見窄らしい奴だな。)
明らかに親ガチャはハズレだ。どう見てもこの男は王侯貴族の立場ではない。
だが親父の恰好を見るに、ここは望んでいた異世界に違いない!
男は妻の声に促されると、ヨウタを慎重に妻に渡した。
女は疲れ切っていたが、優しく微笑みながら我が子に何やら声を掛ける。
(この人がお袋か。前のお袋よりは美人だな。いい匂いがする。でもこれは良くても農民といった感じだろうな・・・まあ、暫くは本物の赤ちゃんプレイを楽しむとするか)
後にヨウタは『フランク』という名前を付けてもらう。そして「本物の赤ちゃんプレイ」を存分に堪能する・・・
ことはできなかった。
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