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第一章
巣穴にて
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翌日、一行はゴブリンの巣穴へと向かった。
正確な場所は、ルパルナがいとも簡単に探り出した。前回訪れたときに、おおよその見当をつけていたのだという。
ゴブリンの巣穴は、街道から少し離れた森の中にあった。
すでに辺りは暗く、ゴブリン共が動き出していてもおかしくない頃だった。
「あそこの洞窟が連中の巣か。準備はいいか?ルパルナ」
「いつでもいいよ!」
フランクは逸り気味の二人に一応の注意をした。
「もう連中の活動時間だが・・・いくのか?朝を待ってはどうだろう」
「なぁに?ゴブリン程度に私たちが後れを取るっていうの?登録証見せたでしょ」
「いや、そうなんだけどな・・・。俺はこういう時に大した準備もなく行く連中を見たことなくてさ」
「もーこれだからおっさんは!心配し過ぎ!」
「フランクの言ってることは正しいよ。一応注意しながら行こう」
「えーっぱぱっとおわらせちゃおうよ洞窟って暑くて臭くて嫌いなんだもん」
「まあまあ・・・」
「フランク、あなたは外で荷物番をしてくれ。もしもの時は荷物は捨てて声を掛けながら追って来てくれればいいがどうする?」
「そうしたいのは山々なんだが、夜に一人で巣穴の傍にいるのはゾッとしない。二人の後方についていくよ。こっちに注意しないでどんどん進んで構わない。多分あんたたちをかい潜って俺に攻撃が来ることはほとんど無いだろう。例え来たとしても少しはどっちかが来てくれるまで頑張るさ」
そう言って剣を抜いた。
「よし、では行こうか」
こうして、3人はゴブリンの巣穴へと入っていった。
薄暗い洞窟の中は、潜った直後にもかかわらず湿度が高く生暖かい空気が充満していた。
身をかがめながら歩いていると、少し先にゴブリンの死体があった。
洞窟の入り口にいた奴等だ。どうやらこの辺で遭遇して、ルパルナがサクッと倒したようだ。
フランクは死体に近付き、その傷口を確認した。
傷はどうやら、鋭利な刃物で斬られたような切り口だった。
しかも、綺麗に切断されたのか、全く血が付いていない。
(凄いな・・・)
先へと進むルパルナとラウルの後についていった。
二人は次々に襲い掛かってくるゴブリンを華麗な剣さばきで屠っていった。
戦闘と言うよりも蹂躙という言葉が似つかわしい光景だ。
全く危なげのない戦いっぷりだった。
(この調子なら、俺が何かする必要なんて無いんじゃないか?)
フランクがそんな思いを抱き始めた頃、洞窟の奥からもゴブリンがやって来た。
しかし、その数はかなり少なかった。
どうやら、このゴブリン達は巣穴の奥にいた連中らしい。
そして、奥からやってきたということは・・・ ルパルナはラウルに目配せをした。ラウルは頷き返すと剣を構えたままゆっくりと奥へと進んでいった。
そして、しばらく進むと立ち止まった。どうやら、ここが最奥のようだ。フランクは周囲を見回した。どうやら、この洞窟の一番奥まで来てしまったらしい。
他のゴブリンの姿は見当たらない。ということは奥にいた連中はルパルナとラウルに全てやられてしまったのだろうか。
改めて二人の強さを目の当たりにしたフランクは、感心すると同時に安心感を抱いた。
しかし、それも一瞬のことだった。
(なんだ・・・?)
二人はまだ奥にいる何かを見つめているようだ。
ここから見えるのはルパルナの背中だけであり、その視線の先までは見通せない。
しかし、何かがいる。それもかなりの数の何かが・・・。
フランクは生唾を飲み込んだ。
そして、そーっとルパルナに近付いて後ろから声を掛けようとした時
フランクはその光景を目にして、ようやく自分の置かれている状況を理解した。
(・・・ま・さか!)
ルパルナとラウルが見ていたのは、このゴブリンの大群だったのだ。
そして今、そのゴブリン達が自分達に向かって一斉に襲い掛かってきている。
(そんな・・・まさか!)
フランクは恐怖に顔を引きつらせながら、慌てて剣を抜いて構えた。
「ルパルナ、数が多い!きっとそっちに流れる。フランクを守ってくれ!」
ラウルが叫ぶ。
フランクはその場に尻餅をついた。洞窟の岩肌の冷たさが、今自分の身に起きていることを現実であると自覚させてくれた。
フランクは尻餅をついたまま後ずさった。
しかし、すぐに背中に壁が当たってそれ以上下がれなくなってしまった。
そして、またゴブリン達と目が合った。
ゴブリン達は皆一様に同じ目をしていた。それは、まるで笑っているかのような目だった。
ゴブリン達は、まるでフランクを品定めするかのような目で彼を見ていた。そして、一斉に飛びかかって来た。
(嫌だ!死にたくない!!)
フランクは目を固く閉じ必死に祈った。
目を開ければもっと恐ろしい光景を見ることになるかもしれないのだ。
だから、彼は目を閉じるしかなかった。
それからしばらくして・・・フランクはゆっくりと目を開けた。そこには先ほどと変わらない洞窟の風景があった。
どうやらまだ生きているようだ。
───ほっと胸を撫で下ろした直後だった。
背後に衝撃を感じ、振り返ると岩壁を崩してゴブリン共が姿を現した!
ルパルナも不意を打たれて反応が後れ、驚きと焦りの混じった表情が見えたとき、ふとフランクは気が付いた。自分の胸に深々とゴブリンの剣が突き刺さり、夥しい出血をしていることに・・・。
(あ・・・・俺、死ぬのか・・・・)
激烈な痛みで朦朧とする中、手で胸部を撫で、出血の確認をした。ぬるっとした感触があった。
身体から一気に力が抜けて地面に倒れる。
言葉を発しようにも何も言葉が出ない・・・・。
この時フランクの目に映ったのは、何かを叫んでいるルパルナ、俺を刺し殺したゴブリンの姿、数匹まとめてゴブリンを屠っているラウルの姿だった。まるで写真でも見ているかのような動きのない世界だった。
正確な場所は、ルパルナがいとも簡単に探り出した。前回訪れたときに、おおよその見当をつけていたのだという。
ゴブリンの巣穴は、街道から少し離れた森の中にあった。
すでに辺りは暗く、ゴブリン共が動き出していてもおかしくない頃だった。
「あそこの洞窟が連中の巣か。準備はいいか?ルパルナ」
「いつでもいいよ!」
フランクは逸り気味の二人に一応の注意をした。
「もう連中の活動時間だが・・・いくのか?朝を待ってはどうだろう」
「なぁに?ゴブリン程度に私たちが後れを取るっていうの?登録証見せたでしょ」
「いや、そうなんだけどな・・・。俺はこういう時に大した準備もなく行く連中を見たことなくてさ」
「もーこれだからおっさんは!心配し過ぎ!」
「フランクの言ってることは正しいよ。一応注意しながら行こう」
「えーっぱぱっとおわらせちゃおうよ洞窟って暑くて臭くて嫌いなんだもん」
「まあまあ・・・」
「フランク、あなたは外で荷物番をしてくれ。もしもの時は荷物は捨てて声を掛けながら追って来てくれればいいがどうする?」
「そうしたいのは山々なんだが、夜に一人で巣穴の傍にいるのはゾッとしない。二人の後方についていくよ。こっちに注意しないでどんどん進んで構わない。多分あんたたちをかい潜って俺に攻撃が来ることはほとんど無いだろう。例え来たとしても少しはどっちかが来てくれるまで頑張るさ」
そう言って剣を抜いた。
「よし、では行こうか」
こうして、3人はゴブリンの巣穴へと入っていった。
薄暗い洞窟の中は、潜った直後にもかかわらず湿度が高く生暖かい空気が充満していた。
身をかがめながら歩いていると、少し先にゴブリンの死体があった。
洞窟の入り口にいた奴等だ。どうやらこの辺で遭遇して、ルパルナがサクッと倒したようだ。
フランクは死体に近付き、その傷口を確認した。
傷はどうやら、鋭利な刃物で斬られたような切り口だった。
しかも、綺麗に切断されたのか、全く血が付いていない。
(凄いな・・・)
先へと進むルパルナとラウルの後についていった。
二人は次々に襲い掛かってくるゴブリンを華麗な剣さばきで屠っていった。
戦闘と言うよりも蹂躙という言葉が似つかわしい光景だ。
全く危なげのない戦いっぷりだった。
(この調子なら、俺が何かする必要なんて無いんじゃないか?)
フランクがそんな思いを抱き始めた頃、洞窟の奥からもゴブリンがやって来た。
しかし、その数はかなり少なかった。
どうやら、このゴブリン達は巣穴の奥にいた連中らしい。
そして、奥からやってきたということは・・・ ルパルナはラウルに目配せをした。ラウルは頷き返すと剣を構えたままゆっくりと奥へと進んでいった。
そして、しばらく進むと立ち止まった。どうやら、ここが最奥のようだ。フランクは周囲を見回した。どうやら、この洞窟の一番奥まで来てしまったらしい。
他のゴブリンの姿は見当たらない。ということは奥にいた連中はルパルナとラウルに全てやられてしまったのだろうか。
改めて二人の強さを目の当たりにしたフランクは、感心すると同時に安心感を抱いた。
しかし、それも一瞬のことだった。
(なんだ・・・?)
二人はまだ奥にいる何かを見つめているようだ。
ここから見えるのはルパルナの背中だけであり、その視線の先までは見通せない。
しかし、何かがいる。それもかなりの数の何かが・・・。
フランクは生唾を飲み込んだ。
そして、そーっとルパルナに近付いて後ろから声を掛けようとした時
フランクはその光景を目にして、ようやく自分の置かれている状況を理解した。
(・・・ま・さか!)
ルパルナとラウルが見ていたのは、このゴブリンの大群だったのだ。
そして今、そのゴブリン達が自分達に向かって一斉に襲い掛かってきている。
(そんな・・・まさか!)
フランクは恐怖に顔を引きつらせながら、慌てて剣を抜いて構えた。
「ルパルナ、数が多い!きっとそっちに流れる。フランクを守ってくれ!」
ラウルが叫ぶ。
フランクはその場に尻餅をついた。洞窟の岩肌の冷たさが、今自分の身に起きていることを現実であると自覚させてくれた。
フランクは尻餅をついたまま後ずさった。
しかし、すぐに背中に壁が当たってそれ以上下がれなくなってしまった。
そして、またゴブリン達と目が合った。
ゴブリン達は皆一様に同じ目をしていた。それは、まるで笑っているかのような目だった。
ゴブリン達は、まるでフランクを品定めするかのような目で彼を見ていた。そして、一斉に飛びかかって来た。
(嫌だ!死にたくない!!)
フランクは目を固く閉じ必死に祈った。
目を開ければもっと恐ろしい光景を見ることになるかもしれないのだ。
だから、彼は目を閉じるしかなかった。
それからしばらくして・・・フランクはゆっくりと目を開けた。そこには先ほどと変わらない洞窟の風景があった。
どうやらまだ生きているようだ。
───ほっと胸を撫で下ろした直後だった。
背後に衝撃を感じ、振り返ると岩壁を崩してゴブリン共が姿を現した!
ルパルナも不意を打たれて反応が後れ、驚きと焦りの混じった表情が見えたとき、ふとフランクは気が付いた。自分の胸に深々とゴブリンの剣が突き刺さり、夥しい出血をしていることに・・・。
(あ・・・・俺、死ぬのか・・・・)
激烈な痛みで朦朧とする中、手で胸部を撫で、出血の確認をした。ぬるっとした感触があった。
身体から一気に力が抜けて地面に倒れる。
言葉を発しようにも何も言葉が出ない・・・・。
この時フランクの目に映ったのは、何かを叫んでいるルパルナ、俺を刺し殺したゴブリンの姿、数匹まとめてゴブリンを屠っているラウルの姿だった。まるで写真でも見ているかのような動きのない世界だった。
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