アストラ金貨物語

友永ゆう

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第六章

王との接見

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 ラウルはこの後、アイシャに国王と引き合わせてもらうことになった。

「ただ、この話は陛下とバルマン様と私しか知らないから、お会いするのは玉座の間ではなくてバルマン様の部屋でと言う事になっているわ。そこなら魔法結界で誰も近づけなくなるし」

「陛下か・・・武術がお好きなのだよな」

「そうね。毎年この時期にやってる武闘大会は、その規模と質の噂を聞きつけて世界中から腕自慢が集まるわ。我が国からも何人も参加してる」

「アイシャは出ないのか?」

「お役目を申し付かったから・・・何もなければ出場したのですけれど」

「ラウルは出場しないのですか?」

「俺も今回はやめておくよ」

やがて一行はバルマンが待つという部屋についた。
アイシャが扉をノックして声を掛ける。

「バルマン様、アイシャです。ラウル・アルベルドとその仲間を連れてまいりました」

すると、薄い膜が張られるような感覚が辺りを包んだ。おそらくこれが結界なのだろう。

「入りなさい」
扉の奥からくぐもった老人の声が聞こえてきたので、アイシャを先頭にラウル達は中に入った。

中は広い部屋にも関わらず、書物が積み上がり、他にも雑多な品々が所狭しと置いてあった。そのためか、どことなく薄暗く埃っぽく感じる。そんな部屋の中央には円卓と4脚の椅子があり、二人の人物が座っていた。一人は灰色のローブの白髪で細身の老人。おそらく彼が魔導士バルマン。そしてもう一人は150センチもない小柄の男だった。彼はバルマンより若く、鋭い目をして鷲鼻で口髭を蓄えていた。黒い

「これは陛下、お越しでしたか!遅くなり申し訳ありません!」
アイシャが片足を付け、首を垂れる。それに倣って、慌てて同様にするラウルとナディーリア。
ベルは近くの山積みの本に腰かけている。
「よい。こちらに来て座るがよい」
思ったより若く、やや高い声で王は一行を円卓に迎えた。それぞれが席に着くと、一つ咳払いをして王は話を続けた。
「ジェマイエフ王、ギレイズである。この者は王国専属魔導士にして賢者バルマン。」
バルマン老は紹介してもらったが無反応だった。

「ラウル・アルベルドです。そして仲間の・・・」

「ハリムの里の治療師、ナディーリアです」

「ベルよ!よろしくね」

「ラウル、お前の父も兄も城で勤めてくれておる。何故お前は来てくれんのだ。お前の噂は聞いておる。その腕を国の為に役立ててほしいのだが・・・」

「有難いお言葉ですが、私はまだ修行中の身。陛下のご期待にはまだ応えられません。しかし、国に難事があれば、微力ではありますが必ず駆け付ける覚悟です」

「・・・そうか、残念だ。また振られてしまったか」
王は頭を掻いた。

「陛下、話を進めましょう」
バルマンが口を開いた。

「そうであったな。さて、先にアイシャとバルマンから話は聞いた。両者の話を訊くに、状況はかなり悪いと儂は考える。件のアストラ金貨が宝物庫を漁っても現在1枚しか見つかっておらん上に、アイシャから報告があった魔物が1000年も前より探していたこと・・・もしや魔神復活まで時が無いのではないのか?」

王は鋭くラウルを見つめた。

(この王は本物だ。僅かな話でここまで状況を理解できるとは)

「陛下、既にご存じかどうかわかりませんが、世間に知られている物語の『願いを叶える金貨』。これがアストラ金貨の存在を示しています」

「『願いを叶える金貨』が初めて語られた年代は判っておりません。ただ、数百年以上世界中で語られている物語です」
バルマンが口を挟んだ。

「・・・儂も幼少の頃聞いたことがある・・・。そうであったのか。すると・・・」

「私の予想は陛下と同じです。いつ魔神が復活したとしてもおかしくはありません。その物語の主人公が金貨の力で今まで生きていたとしたら・・・そしてその者から封印解除の方法を聞き、行使できる者がずっと金貨を求めて集め続けていたとしたら」

「・・・ベルと申したな。そなたは金貨の封印を解く方法を知っていると言う事だったが」

「知ってるわよ。教えないけどー」

「我らにとっては、ずっと沈黙してもらえれb有難いことだが・・・」
バルマンが呟く。

「先日、宝物庫を狙って魔物が襲撃してきおった。確実にアストラ金貨を探しての事だろう・・・
聞いていると思うが、儂はこれまでの話を各国の王に伝えているが・・・彼らがどう動くかはわからん。よって儂ができることは、同様に金貨を探し集める事。そして討伐当時の知識と情報を手に入れる事だと考える」

「本来であれば、ここでアストラ金貨の封印を解いて、過去の情報を得ればいいのでしょうが、不確定要素が多すぎて危険ですな」

「うむ・・・。バルマンには過去の情報を調査してもらおうと思う。ラウルはアストラ金貨を探しておるのだろう?ならば引き続き頼む。そして金貨捜索のための部隊を作る、アイシャ、お主をそこの
部隊長とするので、国内を回って捜索してくれ」

「ははっ」

「ねえねえ、ベルはなんで封印解除の方法を教えないの?あなたは魔神の眷属なのでしょ?封印解除した方が嬉しいんじゃないの」

ナディーリアが突然ベルに訊いた。そういえばそんな話を彼女にはしていなかった。

「だって、ソルゼウデルを復活させたら絶対つまらない世界になると思うわ。私はそんなの望んでないし、今現在が気に入ってるの。ラウルもルパルナもアイシャもナディーリアも大好きっ」

「・・・くくく・・はっはっは」
ギレイズ王は不器用に笑った。

「ラウル、ベルを大事にするのだぞ。それが世界を守る事につながるやもしれん」

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