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第4話
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時が流れるのは早いものだ。気がつけば、私がこの辺境の館に移り住んでから半年が過ぎていた。四季の移り変わりを、窓越しに眺めながら過ごす日々。春の花々が咲き誇り、夏の緑が深まり、そして今は秋の色づきが始まっている。
今日も私は、いつものように朝を迎えた。窓を開けると、爽やかな秋風が頬をなでる。木々の葉が少しずつ色づき始め、美しい景色を作り出している。しかし、その美しさを誰かと共有できないことに、胸が痛む。
「今日も一日が始まるわ」
そうつぶやきながら、私は日課の読書を始めた。本は私の唯一の友だ。物語の中では、私は自由に旅をし、人々と交流することができる。現実では叶わない夢を、本の中で追い求めるのだ。
しかし今日は、なかなか物語に集中できない。エドワードの顔が何度も脳裏に浮かび、彼の言葉が耳に響く。
「必ず、あなたを救います」
あれから半年。彼からの連絡は一切ない。父上が定期的に送ってくれる使者も、エドワードについては何も知らないと言う。彼は本当に呪いを解く方法を探しているのだろうか。それとも、もう私のことを忘れてしまったのだろうか。
そんな思いにふけっていると、突然、外から物音が聞こえた。私は驚いて窓際に駆け寄った。ここには誰も来ないはずだ。
木々の間から、一人の人影が見えた。私の心臓が高鳴る。まさか⋯⋯エドワード?
しかし、近づいてくる姿を見て、私は少し落胆した。それは父上が送ってくれる定期的な使者だった。
「クラリス様、お元気でしょうか」
使者は館の前で立ち止まり、私に向かって声をかけた。
「はい、元気です。ご心配なく」
私は窓から顔を出して答えた。使者は荷物を地面に置き、一歩下がった。
「今回は、特別なお知らせがございます」
使者の言葉に、私の心が躍った。
「エドワード様からの手紙です」
私は息を呑んだ。エドワードから⋯⋯手紙? 半年ぶりの連絡だ。
「そこに置いておいてください。あなたが去ったら、取りに行きます」
使者は言われた通りに手紙を置き、深々と頭を下げてから去っていった。
私は使者の姿が見えなくなるまで待ち、それから急いで外に出た。手紙を手に取る。確かにエドワードからだ。震える手で封を開け、中身を読み始めた。
「親愛なるクラリス様へ
お元気でしょうか。半年もの間、連絡できずに申し訳ありません。しかし、その間ずっとあなたのことを想い、呪いを解く方法を探し求めてきました。
そして、ついに手がかりを掴みました。"真実の愛の力"が呪いを解くことができるという記述を見つけたのです。
クラリス様、私はあなたを愛しています。そして、この愛こそが呪いを解く鍵になると信じています。どうか、私に会わせてください。一緒に、この呪いを解く方法を見つけましょう。
返事をお待ちしています。
エドワードより」
手紙を読み終えた私は、その場に崩れ落ちそうになった。エドワードは⋯⋯私を愛していると? そして、その愛で呪いを解こうとしている?
喜びと恐れが入り混じる。確かに、エドワードの言葉は希望を与えてくれる。しかし同時に、大きな恐怖も感じる。もし彼が私に近づいて、呪いの犠牲になってしまったら⋯⋯。
私は手紙を胸に抱きしめ、深く考え込んだ。どうすべきか。会うべきか。それとも、断るべきか。
館に戻り、窓辺に座って外の景色を眺めた。秋の風が木々を揺らし、色づいた葉が舞い落ちる。その光景が、私の心情を表しているようだった。希望と不安が交錯し、心が揺れ動いている。
エドワードの言葉が、何度も頭の中で繰り返される。
「真実の愛の力が最強の呪いさえも解くことができる」
それは本当なのだろうか。そして、エドワードの愛は本物なのだろうか。私のことをほとんど知らないのに、どうして愛せるのだろう。
しかし、半年もの間、私のために解決策を探し続けてくれたという事実。それは、彼の思いの深さを物語っているのかもしれない。
私は深いため息をついた。この決断は、簡単ではない。エドワードに会えば、彼を危険に晒すことになる。しかし、会わなければ、呪いを解く可能性を永遠に失うことになるかもしれない。
夜が更けていく。私は一晩中、考え続けた。朝日が昇り始める頃、ようやく決心がついた。
返事を書こう。エドワードに会う。しかし、条件をつける。彼の身の安全を確保するための条件だ。
筆を取り、丁寧に文字を綴っていく。
「エドワード様へ
お手紙、ありがとうございます。半年もの間、私のために尽力してくださったこと、心より感謝いたします。
あなたの思いに、私は深く感動しました。そして、呪いを解く可能性があるのなら、それに賭けてみたいと思います。
しかし、あなたの安全が何より大切です。ですので、以下の条件を守っていただけますでしょうか。
1. 私たちの間には、常に一定の距離を保つこと。
2. 決して直接触れ合わないこと。
3. もし少しでも体調の変化を感じたら、すぐにその場を離れること。
これらの条件を守っていただけるなら、お会いしたいと思います。
返事をお待ちしています。
クラリスより」
手紙を書き終え、私は深呼吸をした。これで良いのだろうか。エドワードを危険に晒すことにならないだろうか。しかし、もしかしたら⋯⋯この方法で本当に呪いが解けるかもしれない。
その日から、私の心は落ち着かなかった。エドワードからの返事を待つ日々。窓辺に座り、来訪者がいないか常に外を見ていた。
そして、一週間後。再び使者が訪れた。
「クラリス様、エドワード様からの返信です」
私は急いで手紙を受け取った。封を開け、中身を読む。
「親愛なるクラリス様
お返事ありがとうございます。あなたの条件、すべて承知いたしました。私の安全を第一に考えてくださったこと、感謝しています。
一週間後、その館を訪れさせていただきます。どうか、それまでお元気で。
愛を込めて、
エドワードより」
私の心臓が高鳴った。一週間後⋯⋯エドワードが来る。本当に呪いは解けるのだろうか。それとも⋯⋯。
不安と期待が入り混じる中、私は静かに目を閉じた。これが、私たちの運命の分かれ道になるのかもしれない。
その後の一週間は、まるで夢の中にいるようだった。時間の流れが遅く感じられ、同時に早くも感じられた。私は何度も手紙を読み返し、エドワードとの再会に備えた。
今日も私は、いつものように朝を迎えた。窓を開けると、爽やかな秋風が頬をなでる。木々の葉が少しずつ色づき始め、美しい景色を作り出している。しかし、その美しさを誰かと共有できないことに、胸が痛む。
「今日も一日が始まるわ」
そうつぶやきながら、私は日課の読書を始めた。本は私の唯一の友だ。物語の中では、私は自由に旅をし、人々と交流することができる。現実では叶わない夢を、本の中で追い求めるのだ。
しかし今日は、なかなか物語に集中できない。エドワードの顔が何度も脳裏に浮かび、彼の言葉が耳に響く。
「必ず、あなたを救います」
あれから半年。彼からの連絡は一切ない。父上が定期的に送ってくれる使者も、エドワードについては何も知らないと言う。彼は本当に呪いを解く方法を探しているのだろうか。それとも、もう私のことを忘れてしまったのだろうか。
そんな思いにふけっていると、突然、外から物音が聞こえた。私は驚いて窓際に駆け寄った。ここには誰も来ないはずだ。
木々の間から、一人の人影が見えた。私の心臓が高鳴る。まさか⋯⋯エドワード?
しかし、近づいてくる姿を見て、私は少し落胆した。それは父上が送ってくれる定期的な使者だった。
「クラリス様、お元気でしょうか」
使者は館の前で立ち止まり、私に向かって声をかけた。
「はい、元気です。ご心配なく」
私は窓から顔を出して答えた。使者は荷物を地面に置き、一歩下がった。
「今回は、特別なお知らせがございます」
使者の言葉に、私の心が躍った。
「エドワード様からの手紙です」
私は息を呑んだ。エドワードから⋯⋯手紙? 半年ぶりの連絡だ。
「そこに置いておいてください。あなたが去ったら、取りに行きます」
使者は言われた通りに手紙を置き、深々と頭を下げてから去っていった。
私は使者の姿が見えなくなるまで待ち、それから急いで外に出た。手紙を手に取る。確かにエドワードからだ。震える手で封を開け、中身を読み始めた。
「親愛なるクラリス様へ
お元気でしょうか。半年もの間、連絡できずに申し訳ありません。しかし、その間ずっとあなたのことを想い、呪いを解く方法を探し求めてきました。
そして、ついに手がかりを掴みました。"真実の愛の力"が呪いを解くことができるという記述を見つけたのです。
クラリス様、私はあなたを愛しています。そして、この愛こそが呪いを解く鍵になると信じています。どうか、私に会わせてください。一緒に、この呪いを解く方法を見つけましょう。
返事をお待ちしています。
エドワードより」
手紙を読み終えた私は、その場に崩れ落ちそうになった。エドワードは⋯⋯私を愛していると? そして、その愛で呪いを解こうとしている?
喜びと恐れが入り混じる。確かに、エドワードの言葉は希望を与えてくれる。しかし同時に、大きな恐怖も感じる。もし彼が私に近づいて、呪いの犠牲になってしまったら⋯⋯。
私は手紙を胸に抱きしめ、深く考え込んだ。どうすべきか。会うべきか。それとも、断るべきか。
館に戻り、窓辺に座って外の景色を眺めた。秋の風が木々を揺らし、色づいた葉が舞い落ちる。その光景が、私の心情を表しているようだった。希望と不安が交錯し、心が揺れ動いている。
エドワードの言葉が、何度も頭の中で繰り返される。
「真実の愛の力が最強の呪いさえも解くことができる」
それは本当なのだろうか。そして、エドワードの愛は本物なのだろうか。私のことをほとんど知らないのに、どうして愛せるのだろう。
しかし、半年もの間、私のために解決策を探し続けてくれたという事実。それは、彼の思いの深さを物語っているのかもしれない。
私は深いため息をついた。この決断は、簡単ではない。エドワードに会えば、彼を危険に晒すことになる。しかし、会わなければ、呪いを解く可能性を永遠に失うことになるかもしれない。
夜が更けていく。私は一晩中、考え続けた。朝日が昇り始める頃、ようやく決心がついた。
返事を書こう。エドワードに会う。しかし、条件をつける。彼の身の安全を確保するための条件だ。
筆を取り、丁寧に文字を綴っていく。
「エドワード様へ
お手紙、ありがとうございます。半年もの間、私のために尽力してくださったこと、心より感謝いたします。
あなたの思いに、私は深く感動しました。そして、呪いを解く可能性があるのなら、それに賭けてみたいと思います。
しかし、あなたの安全が何より大切です。ですので、以下の条件を守っていただけますでしょうか。
1. 私たちの間には、常に一定の距離を保つこと。
2. 決して直接触れ合わないこと。
3. もし少しでも体調の変化を感じたら、すぐにその場を離れること。
これらの条件を守っていただけるなら、お会いしたいと思います。
返事をお待ちしています。
クラリスより」
手紙を書き終え、私は深呼吸をした。これで良いのだろうか。エドワードを危険に晒すことにならないだろうか。しかし、もしかしたら⋯⋯この方法で本当に呪いが解けるかもしれない。
その日から、私の心は落ち着かなかった。エドワードからの返事を待つ日々。窓辺に座り、来訪者がいないか常に外を見ていた。
そして、一週間後。再び使者が訪れた。
「クラリス様、エドワード様からの返信です」
私は急いで手紙を受け取った。封を開け、中身を読む。
「親愛なるクラリス様
お返事ありがとうございます。あなたの条件、すべて承知いたしました。私の安全を第一に考えてくださったこと、感謝しています。
一週間後、その館を訪れさせていただきます。どうか、それまでお元気で。
愛を込めて、
エドワードより」
私の心臓が高鳴った。一週間後⋯⋯エドワードが来る。本当に呪いは解けるのだろうか。それとも⋯⋯。
不安と期待が入り混じる中、私は静かに目を閉じた。これが、私たちの運命の分かれ道になるのかもしれない。
その後の一週間は、まるで夢の中にいるようだった。時間の流れが遅く感じられ、同時に早くも感じられた。私は何度も手紙を読み返し、エドワードとの再会に備えた。
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