ただでリハビリができると思ってお付き合い願えないでしょうか?

てん

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3 斉藤くんはリスクがもっとも低い時期を選んで告白した

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僕は咲田さんに告白をしてみようと決意した。

いつ告白しようか悩んだ僕は、

夏休みに入る直前に告白しようと決めた。

理由は

『告白が成功した場合、人生初の彼女と夏休みを過ごせる。

告白が失敗した場合、夏休みの間にほとぼりがさめる。』

という、またしても情けない理由だった。

そんなわけで夏休みに入る前の最後の心理学の授業が終わったあと、

帰り支度をしている彼女になけなしの勇気を出して声をかけた。

「咲田さん!折り入ってお話があるのですが、

このあとお時間よろしいでしょうか!」

僕は緊張しすぎて言葉使いがおかしくなっていた。

「え!?」

急に声をかけられた咲田さんはビックリして漫画みたいに椅子から飛び上がった。

咲田さんの目は明らかにぐるぐるして混乱しているのがありありとわかったが、

僕は根気強く彼女が落ち着くまで待った。

「な、なんのご用でしょうか?」

彼女はぐるぐるしたままかろうじて、

それだけ口にした。

「ここではなんなので、

できたら表の休憩所までご同行願えないでしょうか?」

僕は緊張してまたしても言葉使いがおかしくなっていた。

ご同行って、

後で考えたら警察が容疑者にかけるような言葉だ。

果たして、咲田さんはうなだれぎみに、

こくりとうなづいた。

まるで僕は犯人を追い詰めた警察官のように、

彼女は追い詰められて連行される犯人のように、

僕らは大学内の所々に配置されている、

ベンチがいくつか置かれているだけの、

休憩所までいくことになった。

もはや二人をまとう空気はこれから告白する男と、

告白される女と言う甘ったるいはずのものではなくなっていた。

僕が告白の場に選んだのは心理学の教室から少し離れた、

あまり人が来ない休憩所だった。

元々心理学の教室は旧校舎にあり、

あまり近くに人気がある場所ではなかった。

周りに人気がないことを確認し、

咲田さんと隣り合ってベンチに座った。

咲田さんと僕との間には15センチ以上あきがあり、

咲田さんは明らかにびくびく怯えており、

目がキョロキョロしていて、

挙動不審だった。

「咲田さん!僕と付き合ってください!」

僕はなんの前触れもなく、

咲田さんの顔も見れずに下を向いたままそれだけ口にした。

僕は彼女に声をかけてからの反応で、

うまくいく可能性はほとんどないような気がしていた。

しかしせっかくなけなしの勇気で、

告白すると決めたのだ。

こうなりゃさっさと告白してふられて、

楽になりたいと、

かなりやけっぱちな告白だった。

『早く、早く楽になりたい…』

自分から告白しておいて、

最早なんのことすらよくわからなくなってきていた。

僕はとにかくとっととふられて、楽になりたい。

そんな気持ちでいっぱいだった。

彼女は僕の告白を聞いた瞬間またしても漫画みたいにビックリして飛び上がった。

そしてそのまま固まってしまった。

早く楽になりたい僕にとっては永遠とも思われる時間だったが、

後で考えたら数分の時間だった。

しばらくして固まりから解放された彼女は勢いよく立ち上がると僕に向かって勢いよく頭を下げた。




「ごめんなさい!!」


それは出会ってから聞いた彼女の声のなかで、

一番大きくてはっきりした声だった。
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